作成日
:2019.08.13
2024.08.19 02:11
キプロスの金融監督当局であるキプロス証券取引委員会(Cyprus Securities and Exchange Commission)【以下、CySECと称す】は8月12日、同委員会職員になりすまし個人投資家から資金を奪い取ろうとする詐欺に関する警告文を発令した。
詐欺師は個人投資家に対し、CySECの代表として、手数料を受け取ることで被害に遭ったトレーダーの資金を取り戻す手助けをする旨の内容が記載された電子メールを送りつけているという。また、個人投資家の電話番号や銀行口座などの個人情報を違法に取得しようと試みているようだ。CySECでは、個人投資家に一方的にメッセージを送りつけることも、如何なる個人データや金融情報などを求めることもないと忠告を発している。
今回の事例では、電話番号を伝えてしまった被害者には詐欺師から資金を取り戻すための手数料を強引に要求する電話がかかってくる模様だ。これは、詐欺被害者の資金回収を専門に取り扱うことを名目とした、詐欺師が用いる最新の事例となる。通常は、当局から許認可を受けていないブローカーと取引を行った被害者に対し法外な手数料を受け取る代わりに失った資金を取り戻すというものであるが、CySEC職員を謳う今回の詐欺のケースに詳しい情報筋によると、詐欺師は同委員会より罰金や警告を受けた許認可ブローカーと取引を行った投資家をターゲットとしているようだ。
なお、グローバルに金融詐欺が多発していることを背景に、m-FINANCEがData Zooと提携したり、Dynamic WorksがShufti Proと提携するなど、各ブローカーは詐欺対策やKYCプロセス体制の再構築を急いでいる。当局が警告を発するだけでなく、ブローカーも徹底的な詐欺対策を講じることで、投資家にとってより安心安全な取引環境が整備されることを期待したい。
release date 2019.08.13
今回の詐欺関連の警告文の発令に先立ち、2018年11月末にCySECは詐欺行為に再度の警告文を発したほか、詐欺が多発する仮想通貨の規制を強化する方針であり、金融犯罪に断固として立ち向かう姿勢を示している。現在、キプロスのみならず世界的に金融詐欺が広がっており、2018年に英国の投資家が投資詐欺で約2億ポンド喪失したことを受けて、2019年7月下旬にFCAがビットコイン関連のなりすましメールに注意を呼び掛けている状況だ。被害者の弱った心につけ込む投資詐欺は今後もなくなることはないと予想され、今回のCySECの事例のように、警告を受けた許認可ブローカーを利用するなど、詐欺の手口は巧妙化している。まずは投資家自らが継続的に金融リテラシーを向上させると共に、自己責任で行った投資で失った資金が戻ってくることはないくらいの気持ちを保つことが、投資詐欺から自らの身を守る至ってシンプルな方法といえるであろう。そして、ブローカーも万全の詐欺対策を講じることで投資詐欺を未然に食い止め、当局の必要以上に厳格な規制策の適用によって、市場の停滞に繋がることだけは避けたいところだ。
作成日
:2019.08.13
最終更新
:2024.08.19
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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