作成日
:2019.08.08
2022.05.20 17:41
デンマークに拠点を置く投資銀行であるSaxo Bank Group(本社:Philip Heymans Alle 15 2900 Hellerup Denmark
)【以下、サクソバンクと称す】は、オランダを拠点とするオンラインブローカーであるBinckBank(本社:Barbara Strozzilaan 310 1083 HN Amsterdam The Netherlands )の全発行済み株式の95.14%を保有したことにより買収を完了したことを明らかにした。BinckBankは、速やかにユーロネクスト・アムステルダムから上場廃止されるとのことだ。両行は既にインフラ統合作業を開始すると共に、トレーディング業界において競争力の強化を図るべく、新たな商品・サービスをリリースする計画であるという。また、顧客の投資行動の変化に対応するために、テクノロジー関連の大規模な技術投資を実行するとのことだ。サクソバンクは、今回の買収は合理的なものであり、両行が共通の地理的な領域や商品ラインナップ、顧客基盤を有していることから、ビジネス効率を向上させることができるとコメントしている。そして、両行の顧客及びパートナーに関しては、ビジネス規模の拡大に伴うサービスの向上や、トレーディング業界が抱える課題の解消に向けたソリューションの提供といったメリットが見込まれている。なお、サクソバンクによる株式買い取りに応じなかったBinckBankの株主は、サクソバンクが株式の受け入れ期限として定める2019年8月14日までであれば、株式売却が可能である模様だ。
買収手続きの完了に際し、サクソバンクのCEO兼創業者であるKim Fournais氏とBinckBankのCEOを務めるVincent Germyns氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
新たな規制への対応を強いられているトレーディング業界は大きな転換期にあり、利益率が縮小する一方で、デジタルな顧客エクスペリエンスの提供やマルチアセットクラスの取引機能が求められてくると見ております。また、今回の買収は両行のみならず、お客様、従業員、株主、社会の全てにウィンウィンな関係性をもたらすと共に、両行が力を合わせることで、先進的なマルチアセットクラスの投資関連ソリューションを提供するグローバルリーダーになれると考えております。
Kim Fournais, CEO and founder of Saxo Bank - SaxoBankより引用
トレーディング業界で有力なプレーヤーであるサクソバンクが有する投資関連テクノロジーとサービス機能を活用することにより、我々は商品ラインナップの拡充と、より使い勝手の良い取引プラットフォームの提供が可能になります。
Vincent Germyns, CEO of BinckBank - BinckBankより引用
サクソバンクは2018年12月に初めてBinckBankに対し買収提案を行い、その当時の株価に35%のプレミアムを乗せた1株当たり6.35ユーロで株式を買い取る意向を示していた。なお、8月7日終値時点でBinckBank株式は6.36ユーロとなっている。サクソバンクによる買収案に関しては、事業規模の拡大とビジネスリスク管理の効率化に繋がることから、BinckBankの取締役会も満場一致で賛成しており、2019年7月下旬にサクソバンクはBinckBankの買収認可を取得し、同行の株式買い取り手続きに入っていた。
サクソバンクとBinckBankには、買収をきっかけとして、商品ラインナップの拡充やテクノロジー投資を実行するといった顧客の利便性向上に繋がる明確なプランがあり、今後、両行のシナジーを発揮した付加価値の高いソリューションを提供することで、更なる業績拡大が期待できそうだ。
release date 2019.08.08
規制環境が目まぐるしく変化する中、ブローカーの中にはレグテックなどを活用した効率的な規制対応を図ったり、グローバルベースで事業再編を遂行する企業も出てきており、現在は新たな金融サービス体制を構築するための移行期にあると考えられる。そのような環境下において、金融業界ではプレゼンスの拡大や事業基盤の強化などを目的とした企業のM&A事案が増加している状況だ。2019年7月にはLMAX GlobalがCB Capital Businessを買収したほか、INTLがFillmore Advisorsを買収している。また、米国最大のFXブローカーであるForex.comを運営するGAINには自社に対する買収観測が浮上しており、まさに業界の勢力図を塗り替えるような動きが起こるかもしれない。サクソバンクによるBinckBankの買収は金融機関同士によるものであるが、今後、金融機関とフィンテック企業、もしくはレグテック企業との合併が実現し、顧客の取引環境が飛躍的に改善するような画期的なソリューションが提供されることを期待したい。
作成日
:2019.08.08
最終更新
:2022.05.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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