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世界的な規制の欠如が課題となる仮想通貨業界

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update 2021.08.31 15:30
世界的な規制の欠如が課題となる仮想通貨業界

update 2021.08.31 15:30

セキュリティや投資家保護の観点から必要性が高まる

仮想通貨業界では世界的に標準化された規制が設けられていない状態の中で、現在、仮想通貨関連企業は登録する国の法律に準拠しながら運営を続けており、このことが業界全体の課題として認識され始めている。

米国をはじめとする先進国と比べると、セーシェルやセント・マーチンなどオフショア地域の規制は緩く、政府の関与がほとんどない環境で企業は新しい製品やサービスを自由にリリースできる状況にあるという。世界には日本のように関連事業者のライセンス制度を導入するなど、仮想通貨の規制と開発促進を両立している国もあるが、このような例は極めて少数派だと言える。それに5億3,000万ドル相当の仮想通貨が流出したコインチェックのハッキング事件や最近のビットポイントのハッキング被害を考慮すると、他国と比べて高い安全性を誇る日本市場でさえも、決して十分な対策が取られているとは言い難いだろう。

仮想通貨関連企業であるKoinup(コインアップ)の創設者兼アナリストを務めるKoji Higashi氏は、仮想通貨市場への金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)の対応に関して次のようにコメントしている。

ビットポイントの取引量は国内で7番目の規模に過ぎず、そのシェアも6月時点で2.5%程度です。今回の事件はコインチェックやZaifと比較するとマイナーなものであり、これをきっかけに規制が強化される可能性は低いと言えるでしょう。それに金融庁の規制は、取引所の安全性を保証するものではありません。国内で2件のハッキング被害が発生した後、これ以上の被害を避けるために金融庁が規制強化に動いたことは確かですが、彼らはセキュリティーの専門家ではなく、私が理解する限りでは、KYC(顧客確認)やAML(マネーロンダリング防止)の徹底に重きを置いています。

Koji Higashi, Founder of Koinup - Cointelegraphより引用

2018年に金融庁が各取引所に業務改善命令を出していなければ、更に被害が拡大していた可能性はあるものの、Higashi氏は取引所がKYCやAMLに注力していることがサイバーセキュリティへの対応を遅らせていると指摘した。一方これに対して、仮想通貨取引所であるChangeNOW(本社:Amsterdam, Kraanspoor 50, 1033 SE, Netherlands[1])のCCO(Chief Communication Officer)を務めるPauline Shangett氏は、執行機関の迅速な対応が重要だとの考えを示している。Shangett氏によると、現在は監視システムを導入する取引所の捜査能力の方が優れており、実際にChangeNOWが盗難された仮想通貨の洗浄行為を検出し、当局へ報告を行ったケースもあるが、政府機関の関与は市場を統制する上で必須になるという。

更にShangett氏は、取引所を取り巻く現在の協力体制について以下のように語っている。

主要な取引所やコミュニティの協力もあり、情報が広く共有されるようになりました。我社のスタッフは様々な団体の仮想通貨取引やハッキングに関与したアドレスリスト、その他の関連情報を常に監視し、マネーロンダリングなどの違法行為を未然に防いでいます。仮想通貨のイオス(EOS)やリップル(Ripple)のコミュニティでも同じような活動が行われており、我社も有志からアドレスのブラックリストを受け取るなど、連携を図ることで効率的に対応できる体制を構築しているのです。

Pauline Shangett, COO of ChangeNOW - Finance Magnatesより引用

最近、ハッキング被害に見舞われたビットポイントは、影響を受けたユーザーに対して、親会社のリミックスポイントが同等の仮想通貨を払い戻すことを約束した。このような対応は法律で義務化されているわけではないが、取引所の中には保険に加入するものや積立ファンドを運用するものも存在し、加えて資金管理の責任を負わない分散型取引所なども台頭してきている状況だ。株式市場では取引所の代わりにカストディ企業などの第三者が資金管理を行っているが、合理性を求めるのであれば、仮想通貨業界もこのような管理方式の実現を可能にする道を探るべきだと言えるだろう。

release date 2019.07.22

出典元:

ニュースコメント

日本市場では大手企業が補填の原資を提供

米国の仮想通貨市場では、拡大するハッキングの脅威に対し、大手取引所であるコインベースが老舗保険会社のAonと協力して保険子会社の設立を模索するなど、新しい動きが生まれていることが報じられている。一方、度重なるハッキング事件の発生に悩まされる日本でも、金融庁および自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を中心に、対策の強化が検討されているようだ。ITの導入で遅れをとる国内の一般企業と同様にサイバーセキュリティに関しては、改善点が多数存在することが考えられるが、保証などの要項は他国と比較しても企業側が十分な対応を行っていると言えるだろう。例えば、2018年のコインチェックのハッキング事件では大手金融会社のマネックスグループが、同じくZaifのハッキング事件ではフィスコグループが後ろ盾となり、速やかに顧客への返金が実施された経緯がある。しかしながら、このような対応はあくまでも自主的な取り組みのため、仮想通貨市場の拡大に備えてこれを明文化する必要があるといえよう。今後、当局が本格的な市場環境の整備に乗り出すことに期待したい。


Date

作成日

2019.07.22

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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