作成日
:2019.06.07
2021.08.31 15:26
54か国で構成されるアフリカ大陸は、41種類の通貨を持つ多様性に富む経済圏を形成している。FX市場に関しては、国によって異なる成長段階を歩んでおり、規制面に課題を残しているものの、ブローカー各社は市場が拡大し、欧州を始め規制が強化される他の地域と比較して規制も緩いアフリカ大陸を新たなターゲット市場に定め、市場開拓を進めている状況だ。
アフリカ大陸はグローバル金融市場で活発に取引されない様々な通貨を有すると共に流動性が低い市場環境下において、先進的なテクノロジーを活用したFXオンライン取引プラットフォームを活用することで、流動性を高めると共に競争力のあるプライシングを提供することができるようになった。英国・サットンを拠点とする金融サービスプロバイダーCrown Agents Bankのグローバルマーケッツ部門ヘッドを務め、世界銀行理事会メンバーでもあるDavid Bee氏によると、革新的なコンプライアンス関連ソリューションや新たなテクノロジーを活用したFX取引システムを導入したことに加え、業界に精通した専門家の活躍により、為替市場の低流動性というデメリットを補い、アフリカ大陸中のローカルカレンシー(地域通貨)に素早く且つ効率的にアクセスできるようになったとのことだ。
アフリカ大陸において、ナイジェリアと南アフリカは経済規模のみならずFX市場規模という面でも2大有力市場である。複数の歴史と伝統ある産業を営んでいることも共通項として挙げられよう。中でも南アフリカは、リベラルな政治思想と地理的条件、大規模経済市場との強固な繋がりなどを背景に、ブローカーにとって最も人気の高い市場だ。そしてFXブローカーにとって最も魅力的な要因として、同国の金融監督当局である金融業界行為監督機構(Financial Sector Conduct Authority)【以下、FSCAと称す】の存在が挙げられる。 FSCAは南アフリカ政府内の独立した機関として、銀行を除く全ての金融機関を規制・監督する役割を担っており、FXブローカーにとっては、同国に進出し投資家から信頼を獲得する際に手助けとなる存在でもある。また、欧州証券市場監督局(European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】や英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】と比較して緩い規制策を敷いているため、ブローカー経営の視点から見ても低い運営コストにより、結果として収益拡大を期待できる魅力的な市場特性を有している。
セーシェルを拠点とする海外FX・CFDブローカーTickmill Ltdのアフリカ地域担当マネージャーであるChristoforos Panayiotou氏は、アフリカ地域は少額取引を行うトレーダーから高額取引を手掛ける投資家に至るまで多岐に亘る顧客層の獲得を図るFXブローカーにとって最も高い可能性を秘めた市場になり得るとコメントしている。また、アフリカ地域の金融市場の中でもFXは最も人気の高い市場になりつつあり、BIS(国際決済銀行)によると、例えば南アフリカのリテールFX市場は2013年の140億ドルから2016年には210億ドルへ拡大し、向こう数年間は高い成長率が見込まれているとのことだ。
このように良好な市場環境を鑑み、実際にThinkMarketsが南アフリカでサービス提供を開始した他、CFI(本社:Emirates Financial Towers. North Tower Office 701. Dubai- United Arab Emirates )もモーリシャスに新オフィス、CFIモーリシャスを開設するなど、多くのブローカーがアフリカ大陸を新たな市場開拓先と定め積極的に事業展開を図っている。
更にESMAが2018年にFXやCFD、仮想通貨等を取引する際に新たなレバレッジ制限を課したことで、ブローカーがオフショア市場へシフトを進め、規制が緩い欧州域外にて継続的にハイレバレッジサービスの提供を試みている状況だ。欧州域内の規制強化を受け、新オフショア市場としてマレーシアのラブアン島が浮上してきていることに加え、経済が拡大し規制の緩いアフリカ大陸もブローカーにとって魅力的な市場になっている。Panayiotou氏によると、ESMAの新規制が導入されたことで、多くのブローカーが新規制の影響を受けない地域でのビジネス展開を模索しているという。また、アフリカ地域は人口やFX取引への関心の高さ、FX取引を通じて金融面の自由を得たいという希望に満ちており、中でも南アフリカはブローカーにとって特に魅力的な市場として映っているとコメントしている。
アフリカ大陸のFX取引動向に関しては、他の地域と大きな違いはないようだ。一般的にアフリカのトレーダーは主要通貨であるユーロ/米ドルの取引が最も人気があり、株式やWTI、金属なども活発に取引されている金融商品である。また南アフリカやナイジェリアが市場占有率という面では抜きんでているものの、ケニアやガーナ、タンザニアといった国々でも取引需要が高まっているようだ。Panayiotou氏によると、南アフリカとナイジェリアのFX市場が依然アフリカ大陸の中で最も可能性を秘めた市場であるとの認識を示しつつ、ナミビアやボツワナ、レソト、ウガンダ、カメルーン、ルワンダ、ザンビアなどもFX取引への関心が高まっており有望市場に位置づけられるとのことである。またアフリカ大陸におけるFX市場の最大の強みは、1国平均で5,500万人の人口規模を誇り、特に若者の間でFX取引需要や関心が高まっていることだという。
一方でアフリカ地域の主な弱点として、有力な規制当局が存在しないことが挙げられる。唯一南アフリカが比較的機能している当局を有しているものの、FCAほど効果的ではない。FX業界を厳格に規制する監督当局の欠如が、詐欺の横行や投資教育水準の低下、そしてトレーディングリスクを的確に把握できていないことに繋がっていると見られている。しかしながら、アフリカ大陸のFX市場は大小さまざまな国々で取引需要が拡大していることに加え、多くのブローカーがウェビナーやセミナーを通じ、無料のFX教材を提供し顧客の投資知識の向上を図っている。またブローカー各社はブランド認知度向上のためにマーケティング活動を積極化させている他、インターネットの普及と相まってFX取引への関心が高まっている状況だ。今後健全な市場の形成に向け各国で確固たる規制枠組みが構築され、ブローカーもより進出しやすい環境が整備されることで、需要高まるアフリカ大陸のFX市場が一層活性化することが予想される。
release date 2019.06.07
世界的なブローカーへの規制強化が進んだ結果、その動きはオフショア市場にも見られるようになっており、最近ではこれまで数多くのブローカーが拠点を開設してきたバヌアツのオフショア市場としての魅力が低下するなど、オフショアブローカーの今後の行方は決して明るいとは言えない状況となっている。しかしながら、ESMAの規制を受けないスイスにトレーダーが押し寄せるなど、トレーダーのより自由な取引環境を求める声に対して、ブローカーもビジネスチャンスを見出そうと新たなオフショア拠点の新設に注力しているようだ。今回取り上げられたアフリカでは、これから経済成長が見込まれていることや、金融規制に関する法整備が先進国と比較して緩やかであることから、既出のThinkMarketsやCFIの他にも、Grand Capitalがボツワナに新オフィスを開設している他、Equiti GroupもケニアでFXPesaを立ち上げるなど、大手ブローカーが現地子会社を設立する動きが活発化しており、新たなオフショア拠点として期待されている。ブローカー各社がアフリカの地でどのようなサービス展開を行っていくのか今後に注目していきたい。
作成日
:2019.06.07
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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