作成日
:2019.06.07
2021.08.31 15:26
機関投資家を対象とした取引所外注文マッチングを行うクロッシング・システム(いわゆるダークプール)サービスを提供するフィンテック企業Liquidnet(本社:620 8th Avenue, 20th Floor New York, NY 10018
)【以下、リクイドネットと称す】が、投資分析分野の自動化ソリューションを提供するPrattle(本社:20 South Sarah Street St. Louis, MO 63108 )を買収したことが明らかとなった。リクイドネットは今回の買収をきっかけに、2014年に設立されたPrattleが有する独自の自然言語処理(Natural Language Processing)【以下、NLPと称す】と機械学習(Machine Learning)【以下、MLと称す】システムにアクセスすることが可能になる。両システムを活用することで、15行に亘る中央銀行が公表するデータや、約3,000社にのぼる上場企業の業績及びプレスリリースといったコーポレート・コミュニケーション関連情報を基に、市場センチメントや市場に与えるインパクトを測定することができ、アセットマネージャーにとっては相場動向の予測に役立てることが可能になるという。なお、リクイドネットによる買収後も、Prattleの創業者であるEvan Schnidman氏とBill Macmillan氏は、引き続き同社の事業運営を監督し、リクイドネットの社長であるBrian Coroy氏に直接事業報告を行う見通しである。
今回の買収に関し、Brian Conroy氏とEvan Schnidman氏はそれぞれ以下のようにコメントしている。
アセットマネージャーにとって、資本市場において生み出される膨大な数の無秩序なデータから効果的な投資アイデアを見つける際、PrattleのNLPやMLシステムは非常に有効なツールになるでしょう。今回Prattleを買収し、確信度の高い投資アイデアの創出に役立つデータを提供することで、お客様が素早く且つ効率的に投資を実行し、より良いパフォーマンスを上げることに寄与するという我が社の目標の達成に向け前進したと考えております。
Brian Conroy, President of Liquidnet - Liquidnetより引用
我々が独自開発したNLPとデータサイエンステクノロジーはリクイドネットが誇るAI(Artificial Intelligence、人工知能)を活用した分析プラットフォーム機能を完全に補完すると考えております。リクイドネットが構築するグローバル投資ネットワークビジネスに参画できることを喜ばしく思っており、我が社の機能と融合したソリューションを開発すべく協働していくことを楽しみにしております。
Evan Schnidman, CEO of Prattle - Liquidnetより引用
なおリクイドネットはPrattleの買収に先立ち、アセットマネージャー向けのマーケットプレイスを提供するRSRCHXchangeと、分析プラットフォームを提供するOTAS Technologiesも買収し、積極的に事業拡大を図っている状況である。そして今回、リクイドネットは市場動向予測に定評のあるPrattleを買収し、AIを活用した投資分析プラットフォーム機能を高めることで、更なる顧客利用の拡大が期待できそうだ。
release date 2019.06.07
米国ニューヨークに本社を置くリクイドネットは、機関投資家向けに「ダークプール」と呼ばれるECN(電子取引ネットワーク)を運営する大手フィンテック企業だ。2001年にサービスを開始して以降、同社はロンドン、トロント、東京、香港、シドニーにオフィスを構え、930社以上にも及ぶ全世界トップクラスの資産運用会社を顧客に抱えている。また、着実に規模の拡大を図っており、世界的な電子取引市場であるリクイドネットの機関投資家コミュニティの株式総資産運用額は15兆ドル以上にのぼる。一方、Prattleは独自のアルゴリズムを用いたBIツールで各国中央銀行の発表を分析して市場動向に関する予測データをリアルタイムで配信するサービスを行っている米国のスタートアップ企業である。同社のサービス統合の実現により、リクイドネットのECNサービスは強化され顧客満足度の向上が期待できる他、世界最大規模の大手フィンテック企業の一員としての地位を確立することができるだろう。差別化の推進に本腰を入れるリクイドネットの今後の動向に注目したい。
作成日
:2019.06.07
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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