作成日
:2019.06.07
2021.08.31 15:26
欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】は、金融の安定性や金融政策、市場構造、支払いなどに対する仮想通貨の影響をまとめた最新の報告書を公開した。
報告書によると、現在、仮想通貨はおよそ1,900種類が存在し、2013年4月時点の7種類と比較すると、仮想通貨市場全体が大幅に飛躍していることがわかる。今後の仮想通貨市場では、時価総額で最大を誇るビットコイン(Bitcoin)が人気や利用面で市場全体を牽引することが予想されており、それにイーサリアム(Ethereum)、リップル(Ripple)およびビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)などの主要な仮想通貨が続くという。
また、報告書の中でECBは、仮想通貨を「デジタル形式で記録されると同時に、暗号化技術で実現する新しい資産であり、いかなる事業体の金銭的な権利や負債に基づくものではない」と定義している。結論としてECBは、仮想通貨市場の発展やその影響力に関して、現時点では既存の金融市場に大きな影響をもたらすことはないとの考えを示したものの、不測の事態に備えるために仮想通貨市場を継続的に監視する必要があるとの見解を示している。
一方、ECBは、ステーブルコインに強い関心を示しており、本来の通貨に近しい存在だと評価しているようだ。ボラティリティの大きさを克服できずにいるビットコインなどの仮想通貨に比べ、ステーブルコインはより現実的な仕組みだと言えるが、ECBは、中央銀行などの特定の機関が後ろ盾に存在しないことが課題だと指摘した。
release date 2019.06.07
欧州連合加盟国の経済を司る重要な機関であるECBは、現在、総裁交代のタイミングに差し掛かっていることから、世界的に大きな注目を集めている。現職のECB総裁であるマリオ・ドラギ氏は、今年10月に任期満了となるため、近々、次期総裁候補の絞り込みが行われる予定だという。今の所、6月後半に控えるEU首脳会議でその候補が決定される見通しだが、万が一、候補者が1人に絞れない場合は、7月はじめ頃または10月半ばまでそれが先延ばしになる可能性がある。欧州連合加盟国内での政治的な要因や経済状況など、総裁候補の決定には複雑な要因が絡み合っているものの、現時点ではフランス銀行(フランスの中央銀行)の総裁であるフランソア・ビルロドガロー氏が有力視されているようだ。これまでECBは、どちらかというと仮想通貨市場に対して否定的なスタンスを示してきたが、今回の総裁交代でどのような変化が生まれるのか、今後の展開にも注目していきたい。
作成日
:2019.06.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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