作成日
:2019.04.05
2022.01.27 14:50
投資家とブローカー間の紛争解決に特化した自主規制機関であるFinancial Commission【以下、FinaComと称す】は4月5日、ソーシャルトレーディング手法の一種であるPAMM(Percentage Allocation Management Module)を提供するブローカー向けの新たな認証スキームを導入したことを発表した。
多くのオフショアブローカーが積極的にサービス提供するPAMMは、経験豊富なファンドマネージャーがユーザーから委託された資金を運用する投資手法だ。ファンドマネージャーは運用で利益を上げた場合手数料を受け取る一方で、ユーザーは委託する投資金額に応じた配分の利益を得ることができる仕組みを採用している。投資経験の浅いユーザーにとっては、刻々と移り変わる経済情勢や投資環境を逐次モニタリングし、自分自身で運用を手掛ける必要がなくなるという特徴を持つ。
一方でPAMMは投資実績の改ざんや取引の透明性が低いといったリスクを抱えていることに加え、一部のオフショアブローカーが投資詐欺に悪用するケースも見受けられているのも事実だ。FinaComは、ブローカーがどのようなスキームを構築してPAMMを提供しているのか的確な理解を望む個人投資家の要望を受け、この度PAMMの仕組みを調査する運びとなった模様である。
更にFinaComは、PAMMの取引システムでは如何にして運用資金がユーザーに分配されているか、またどのような形で運用パフォーマンスが報告されているのか確認する見込みである。加えてPAMMのセキュリティ面や本人確認(Know Your Customer, KYC)プロセス、ファンドマネージャーの運用パフォーマンスを評価するレーティングシステムなどの調査も行う見通しだ。そして一連の調査を終えた上で、FinaComはブローカーが提供するPAMMシステムに問題がないと判断した際には、ブローカーに1年間有効な認定証を発行する予定である。FinaComがPAMM認証スキームを導入することで、個人投資家がPAMMシステムに抱く懸念を和らげると共に、違法ブローカーか否かを判断する手助けになると見込まれている。
なお足元では、PAMMの機能を更に高めたトレーディング手法であるSpotwareのコピートレードプラットフォームcTrader Copyの利用拡大が進んでいる他、BrokereeがMetaTrader5向けのコピートレードツールをリリースするなど、PAMMやコピートレードなどのソーシャルトレーディングはトレーダーやブローカーの間で人気が急速に高まっているようだ。そのため今回FinaComが導入する認証スキームによって、投資詐欺を防止し個人投資家保護に大きく寄与することが期待されよう。
release date 2019.04.05
ソーシャルトレードは、昨今高い人気を誇る取引手法であるが、ソーシャルトレードと一言にいっても様々な種類がある。今回、認証スキームが導入されたPAMMは、ユーザーが委託した資金をファンドマネージャーが運用を行う手法で、投資金額に基づき自動的に分配される集約型ファンドが採用されている。また、MAM(Multi Account Manager)とは、運用者に資金を預けることなく、発注のみを運用者に委託する手法だ。昨年発表された、大手海外FXブローカーの利益発生口座の割合に関するデータによると、利益発生口座の割合が多い上位5社には、eToroやDarwinex等のソーシャルトレードを提供するブローカーが入っており、顧客にとって有益である手法との裏付けになるといえよう。好業績なトレーダーの取引を、そのまま自分の口座に反映することが出来ることが何よりもの利点であるが、いくらプロトレーダーとはいっても、今後も利益を出し続けられる保証はない。想定外の損失を被る可能性もあるため、フォローするトレーダーの決定は慎重に行う必要があるだろう。業界においてソーシャルトレードは、まだ新手法の分類に入るため、明確な制度が確立されていないことが投資家の不安要因ともなっている。今回のような自主規制機関の対策が、投資家が安心して有益なソーシャルトレードをできる環境の構築に繋がると期待したい。
作成日
:2019.04.05
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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