作成日
:2019.04.04
2022.07.08 10:18
メイプルシロップの名産地として知られるカナダは、10の州と3つの準州から構成され、それぞれの地方ごとに独自のFX関連の規制環境を構築するユニークで興味深いFX市場を形成している。そのため、不統一な規制策がカナダにおけるFX市場の発展の足かせとなっており、国全体で法規制を統一することが喫緊の課題となっている模様だ。
世界銀行が公表した2017年のGDPデータによれば、カナダは世界で10番目の経済規模を誇る。州及び準州レベルに落とし込むと、カナダの首都オタワが属するオンタリオ州が群を抜いた経済規模であり、それに続くのがヨーロッパの風情と国際色溢れる暮らしが混在したケベック州と素晴らしい絶景を満喫できるアルバータ州である。
米国の大手海外FXブローカーであるOANDA Corporation(本社:133 West 41st Street New York NY 10036
)【以下、OANDAと称す】の北米地区マネージングディレクター兼法人開発部門ヘッドを務めるMohsin Siddiqui氏によれば、カナダのFX市場は非常に安定性があり成熟した特色を持つという。また適度な競争環境を保ち、6、7社の有力ブローカーが競合関係にあるとのことだ。具体的にはOANDA、CMC Markets、イントロデューシング・ブローカーであるFriedberg Directを通じてサービスを提供するFXCM、Forex.comを運営するGAIN Capital、そしてディスカウントブローカー(投資情報の提供を行わず、通常の手数料よりも割安で顧客注文のみ受け付けるブローカー)であるTD Ameritrade、Interactive Brokersなどが挙げられる。 なお、多くのFXブローカーが一般的にCFD商品を提供しているものの、過去数年間に亘り商品ラインナップの拡充を図るよりも、投資家による投資戦略立案や顧客サービスの向上に役立つツールの開発に注力してきた模様である。
そしてカナダの金融監督体制を俯瞰すると、カナダの主要な金融監督当局としてカナダ証券管理局(Canadian Securities Administrators, CSA)が証券市場を管掌するほか、リテールFX市場の規制を行う自主規制機関であるカナダ投資業規制機構(Investment Industry Regulatory Organization of Canada)【以下、IIROCと称す】も2008年に設立されている。更にカナダ特有の金融規制システムとして州レベルにおいても金融監督当局が独自の規制策を講じていることから、カナダで事業を営むブローカー各社は2重の法規制を遵守しなければならない状況である。
州レベルの金融監督当局としては、オンタリオ州証券委員会(Ontario Securities Commission, OSC)がトロント地域を管轄し、ブリティッシュ・コロンビア州証券委員会がブリティッシュ・コロンビアと周辺地域を、そして金融市場庁(Autorité des Marchés Financiers , AMF)がケベック州及びモントリオールをそれぞれ監督する規制枠組みを敷いている。このように国と地方が調和を採ることなく不統一な規制策を導入していることが、成熟したカナダFX市場の更なる成長を阻害する大きな要因となっている模様だ。
近年はIIROCと地方の監督当局が協働し、規制策の統制を図っているものの、未だ改善の余地が残されているようである。IIROCの2018年アニュアルレポート内において、IIROCの会長を務めるM Marianne Harris氏の発言によれば、カナダの国全体で個人投資家を保護すべく一貫した規制策を導入するには、未だ多くの課題を取り除く必要があるという。
そしてSiddiqui氏は、仮にIIROCの規制指針を基にカナダの国全体で統制の取れた規制策が整備されれば、市場参加者にとって大きなメリットとなり、州によっては取引するブローカーの選択肢も増すであろうとコメントしている。またSiddiqui氏は、IIROCが過去10年間以上に亘り、投資家の利益を守るべく多大な貢献をしてきたことから、全国レベルで整合性の取れた規制策が導入されれば歓迎されるものの、規制統一に向けた具体的な道筋がすぐに示されるか不透明でもあるとの認識も示している。
加えてカナダの投資家動向に目を移すと、カナダは英国連邦の一角を占めるが、英国やオーストラリアの投資家層とは異なり、一般的により保守的な投資アプローチを試みるようだ。Siddiqui氏は、カナダの投資家が保守的な投資姿勢を保つ大きな要因として、IIROCによる過去5年間以上に亘る厳格なレバレッジ制限の影響を受け、リスク管理に重きを置いた投資スタイルを徹底しているからだと見ている。一方でカナダの投資家が金融市場でトレーディング活動を行う確固たる投資マインドを形成してもいると指摘している。
またカナダの投資家は、G10(Group of Ten、米国や日本など先進10か国)にも含まれる自国通貨のカナダドルのFX取引を選好しているようである。中でも一般的にカナダドルが多くの影響を受ける米ドル/カナダドルの通貨ペア取引が最も人気があり、ユーロ/米ドルとポンド/米ドルがそれに続く。なおカナダのFX規制環境とは異なり、カナダの投資家行動という面においては、州や準州レベルを含め国全体でほぼ同様の投資行動をとる模様だ。
世界のFX市場を見渡すと、アラブ諸国でFX市場拡大が加速しており、中でも早くから国際標準の規制を整備したUAE・ドバイは、グローバルFX市場のハブとして急成長を遂げている。カナダのFX市場も、より一層の発展を目指す上で、まずは統制の取れた規制枠組みの構築が先決といえるかもしれない。
release date 2019.04.04
カナダは、石油や天然ガスなどの天然資源を保有する資源国であることから、カナダドルは資源価格などに影響を受けやすい性質を持っている。そのため、原油価格や、原油と密接な関係にある中東の情勢なども、カナダドルのレートに影響を与えていると言われている。米ドルやユーロ、円などのいわゆるメジャーな通貨と比較すると、カナダドルの取引量は多いとはいえないものの、カナダの投資家の間ではカナダドルの通貨ペアは人気のようだ。また、カナダ市場は、世界中に影響を与える市場である隣国、アメリカのニューヨーク市場とも関連性があることで知られており、アメリカの経済動向にも大きく左右される傾向がある。一方で、カナダは近年拡大している大麻関連市場に多大な影響を与えており、昨年10月にカナダにおいて嗜好品としての大麻販売が合法化されたことは、大麻ETFの需要増加に繋り、その需要に応えるべく大麻関連の商品を取り扱うブローカーも増加し、これまでにMarkets.comが大麻関連ブレンドCFDの提供を開始している他、Libertexも大麻株式CFDの取り扱いを開始している。今後、整合された規制が確立され市場を発展させることができるのか、引き続き動向に注目していきたい。
作成日
:2019.04.04
最終更新
:2022.07.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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