Select Language

アラブ諸国でFX市場拡大が加速

アラブ諸国でFX市場拡大が加速

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.07.08 10:57
アラブ諸国でFX市場拡大が加速

update 2022.07.08 10:57

資源依存から脱却を模索

アラブ諸国、特に湾岸協力理事会(Cooperation Council for the Arab States of the Gulf)【以下、GCCと称す】を構成する国々では、過去10年以上に亘りFX市場の発展と市場参加者の増加が加速している模様だ。

GCCはイラクを除くバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UEA(アラブ首長国連邦)というペルシャ湾岸の全てのアラブ諸国で構成され、中東地域の政治や経済を始めとするあらゆる分野における参加国間の調整・統合・連携を図る機関である。また、GCC諸国はいずれも豊富な石油資源に恵まれているが、FX取引の規制アプローチや市場の成熟度は各国で異なるのが現状だ。GCC諸国では、一般的にFXは投資資産としての認識が広まっておらず、依然株式や債券となった伝統的資産に投資している状況であり、オプションや先物取引といったデリバティブ市場も発展の初期段階と言えよう。

しかしながら、GCC諸国は石油資源に依存した経済構造からの脱却を図る転換期にあり、そのような環境下においてFX取引が活発に行われ始めているのだ。物価変動を考慮した購買力平価(Purchage Power Parity)調整済みの一人当たりGDPという側面において、GCC諸国の中ではカタールが最も高い水準を誇る。他方でGCCの盟主であるサウジアラビアとUAEは、一人当たりGDPではカタールに見劣りするものの、GCC諸国の中でも最も成熟したFX市場を形成している。そして現在も安定的に成長する両国のFX市場を見ることで、中東地域のFX市場が今後如何なる発展を遂げるかを垣間見ることができるかもしれない。

中東地域におけるFX業界の歴史を紐解くと、1990年代にカタールにてFX取引が開始され、規制の整備は遅々としたペースであったものの、2008年のグローバル危機を発端に、中東地域の金融監督当局が規制の厳格化と未認可ブローカーの取締りに乗り出している。中でもUAEでは、中央銀行とドバイ国際金融センター(Dubai International Financial Centre, DIFC)が主導する形で厳格な国際標準の規制が適用されたことにより、UAEのFX市場は欧州と同水準にまで成熟するに至っている。こうした中、UAEの経済の中心地であるドバイは、規制が整備されたグローバルFX市場のハブとして急成長を遂げており、近年はドバイ首長家の庇護の下、ADSS(本社:8th floor, CI Tower Corniche Road, PO Box 93894 Abu Dhabi, United Arab Emirates[1])などの大手FXブローカーがドバイの地で確固たる地位を構築している。また、HotForexがUAEに新オフィスを開設したり、FXCMがドバイ金商品取引所と覚書を締結している他、Saxo BankやRoboforex、Avatradeといった欧州系ブローカーがドバイに支店や駐在事務所を設け、市場開拓を目論んでいる状況だ。国際標準の厳格な規制が整備されると共に、競争力のある市場環境が整っていることなどを総合的に勘案すると、ドバイが非常に成熟したFX市場を構築していることが伺い知れよう。

また、ヨルダンを拠点とする海外FX・CFDブローカーであるEquitiのブローカレッジセールス部門グローバルヘッドを務めるMohammad Isbeer氏によれば、UAEやサウジアラビアのみならず、クウェートのFX市場も成熟化しており、クウェート国民のFX取引需要は強いとのことだ。加えて、オマーンは大きな開拓余地があるものの、FX関連の規制整備が行き届いておらず、多くのブローカーが市場への進出に二の足を踏んでいるようだ。一方でIsbeer氏は、GCC各国の当局が、FX市場の理解を深め、規制を整備することの重要性を認識させるべく、既存の規制策の修正も行っており、GCCのFX市場が次の発展段階へと順調に成長を遂げているともコメントしている。

一方、中東地域のFXトレーディングにおいては、ユーロ/米ドルやポンド/米ドル、米ドル/円、ポンド/円の通貨ペア取引が積極的に行われている模様であり、その他にもFXのスポット取引(直物取引)や金、石油といったコモディティ取引も人気が高いようだ。また、同地域では投資前の学習や教育にも積極的で、FX市場についてより理解を深めようとする市場参加者が増加しているという。

他方でアラブ諸国のFX市場が拡大する中、GCC各国においてブローカーが中東地域の顧客に対し如何なるサービスを提供するか的確且つ包括的な理解を進めている段階であり、ブローカーが当局よりスムーズに認可を受け事業を軌道に乗せることは試練を伴うことが予想される。UAEはGCC諸国の中でも最も効率的な規制プロセスを構築しているが、それでもドバイ金融サービス機構(Dubai Financial Services Authority, DFSA)へライセンス申請を行うブローカーは取得までに6か月から1年ほど要するようだ。

GCCのいくつかの国々においては、FX市場は依然発展の初期段階ではあるものの、その成長速度は加速している状況である。規制が統一的に整備されると共に流動性が向上することで、経済が発展を遂げているGCC諸国が、FX市場の進展に大きく寄与することが予想されよう。

release date 2019.03.15

出典元:

ニュースコメント

新興市場として期待の高まるGCC諸国

これまでの中東GCC諸国の経済成長を支えてきたのは、豊富な石油・天然ガス収入に加え、大量の安価な外国人労働者である。しかし、GCC諸国は過去10年間で、リーマン・ショックおよびドバイ・ショックという世界的な金融危機や2014年以降の原油価格低迷の影響を受けている。更に、サウジアラビア皇太子の交代、カタールに対する国交断絶問題、トランプ政権による中東政策の不透明感など多くのリスクがみられる。だが、アラブ首長国連邦(UAE)は政治・経済共に比較的安定しており、GCC諸国の中で最も経済発展と国際化が進んでいるといえる。中でも、かつて中東の貿易の中心であったドバイ(アラブ首長国連邦)は、石油依存経済からの脱却に成功し、貿易・金融・観光の3つを大きな柱として飛躍的な経済発展を遂げている。こうした中東地域(バーレーンなどアラブ諸国)の動きから経済成長が期待される新興国への投資が注目を集め、FX市場の拡大が加速していると考えられる。中東GCC諸国はこれからの事業展開を積極的に推進するべき魅力的な市場としてとらえることができるだろう。


Date

作成日

2019.03.15

Update

最終更新

2022.07.08

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

FXGTでの出金拒否報告が増加中、これまでとは違う危険な兆候とは?

FXGTの出金拒否の報告・原因のほか、ユーザーの流出状況などをまとめました。SNS上ではここ数ヶ月の間に出金拒否に関する投稿が増加しており、ユーザーの間では「自分も出金拒否されるのでは」「FXGTがつぶれるのでは」といった不安が広がっています。
update2025.02.14 19:30

コインチェックからBybitに送金してみた!送金手数料や反映時間についても解説

コインチェック(Coincheck)からBybitに仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験やSNSでの口コミなども交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.11.29 19:00

仮想通貨KAITOの将来性は?AI活用のWeb3情報プラットフォームKaito AIの特徴や評判を解説

仮想通貨KAITOは、Web3の情報アクセスを変革する次世代プラットフォーム「Kaito AI」のネイティブトークンです。当記事では、仮想通貨KAITOの概要や将来性、Kaito AIが提供するYapsの仕組み、SNSでの評判などを解説します。
update2025.02.19 19:00

GMOコインからBybitに送金してみた!送金手数料や最低送金額なども解説

Myforex編集部では、GMOコインからBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.12.24 19:30

仮想通貨SOSOの将来性は?AI活用の投資分析プラットフォームSoSoValueがトークン発行

仮想通貨SOSOは、中央集権型金融の効率性と分散型金融の透明性を組み合わせた投資分析プラットフォーム「SoSoValue」のガバナンストークンです。当記事では、仮想通貨SOSOの将来性やSNSでの評判、SoSoValueの特徴などを解説します。
update2025.01.24 19:30

Bybitからbitbankに送金してみた!送金手数料やトラベルルールについて解説

Myforex編集部では、Bybit(バイビット)からbitbank(ビットバンク)に仮想通貨(暗号資産)を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験をもとに、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.12.27 19:00

Bybitからビットフライヤーに送金してみた!送金手数料や反映時間は?

Myforex編集部では、実際にBybitからビットフライヤー(bitFlyer)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、送金手順のほか、送金手数料やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2025.02.19 19:30

MacのMT4/MT5はダウンロードしても使えない?文字化けや起動しない時の対策方法や最終手段を紹介!

Mac版のMT4やMT5は不具合が良く発生するため、自分の使い方が悪いのか不安を感じている人もいるのではないでしょうか。本記事では、Mac版のMT4・MT5のトラブルや解決方法を解説します。
update2024.12.04 20:30

VPSではMT4・EAは何個起動できる?複数稼働は可能なのか?

スペック別のEAの起動数の目安のほか、VPSの負担を軽くする方法を説明します。同時に起動するEAの数が多すぎると、MT4が動かなくなる可能性があるので注意が必要です。VPSを使っているならば、MT4やEAをいくつ起動できるかを把握しておくことが大切です。
update2025.01.23 19:00

【全て無料】MT4/MT5を日本時間にできるインディケータのおすすめが決定!

MT4/MT5に表示されている時間は、インディケータを使えば簡単に日本時間へ変えられます。MT4/MT5を日本時間表示にしておくと、各市場のトレンドを把握しやすくなったり、経済指標の発表時間に合わせた取引がしやすくなったりと、何かと便利です。
update2024.12.04 20:00
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル