作成日
:2019.03.06
2021.08.31 15:27
ステーブルコインのTrueUSD【以下、TUSDと称す】を手掛けるTrustTokenは、会計コンサルティング会社のArmanino LLP【以下、Armaninoと称す】とパートナーシップを締結し、TUSDの運用状況をリアルタイムに示すダッシュボード機能の実装を目指していることを明らかにした。
発表によると、Armaninoが開発を進めるダッシュボード機能では、TUSDの流通量や準備金がリアルタイムで確認できるようになるという。この実現に向け、Armaninoは、TUSDの担保となる米ドル資産を保有する口座情報をシステムに取り込み、同時にイーサリアム(Ethereum)のプラットフォーム上で発行されるTUSDを監視するノードを運用する構えだ。通常、このような情報は、数ヶ月に及ぶ監査を経て初めて公開されるが、ダッシュボード機能が完成すれば、そのプロセスはわずか数分で済んでしまう。なお、このダッシュボード機能のローンチは、4月に予定されており、Armaninoのウェブサイトからアクセスが可能となる。
TrustTokenでエンジニアリング&プロダクト部門の責任者を務めるRafael Cosman氏は、この画期的なソリューションについて以下のようにコメントしている。
このソリューションは、ステーブルコインだけでなく、全てのトークン化された資産を管理するための新たな基準となるでしょう。トレーダーは、世界有数の会計事務所によって提供されるリアルタイムの管理ソリューションを介して、トークンの有価性の担保をいつでも確認できます。
Rafael Cosman, Head of Engineer&Product at TrustToken - TrustTokenより引用
これまで、ステーブルコインでは、信頼性の問題が表面化してきており、特に世界で最も多く流通する米ドルとのペグ通貨であるテザー(Tether)は、公正な監査を行わないことから、テザーは不安定通貨と揶揄されたり、一時、米ドルとの等価性を失う事態に陥っていた。しかしながら、状況は徐々に好転しつつあり、昨年12月には、一部メディアが、資産管理の正当性を認める報道があったことで、テザーは、本来のステーブルコインとしての機能を取り戻しているようだ。同じく年末、別のステーブルコインであるStableUSDを開発するStabllyも、システムの透明性を高めるために、TUSDと同様の管理ソリューションの提供に取り組み始め、スクローサービスを提供するPrime Trustと協業して、APIを通してリアルタイムの情報を確認できる機能を実現している。
今回の発表に併せて、TrustTokenは、TUSDをワンクリックで償還するサービスを導入したことを伝えている。このサービスでは、ウォレットから「個人償還アドレス」にTUSDを送金するだけで、同等の米ドルが自動的に銀行口座に振り込まれるため、ユーザーにとっては、より手軽な換金手段となっている。TrustTolenは、TUSDの最低利用額(購入および償還)を1,000ドルまで低減することを宣言しており、更なる利用拡大を狙っているようだ。
release date 2019.03.06
今では、米ドルと連動する主要なステーブルコインだけでも、前述のテザー、StableUSD、TUSDとは別に、ジェミニドル(Gemini Dollar)、Paxos、USDCoinなどが存在している。これらに合わせて、GMOの日本円に連動した仮想通貨GJY、EURS、Grand Shores Westなど、他法定通貨のペグ通貨も開発されており、仮想通貨市場全体では現在20以上のステーブルコインプロジェクトが乱立していることになる。低迷する仮想通貨市場の恩恵を受けて、昨年からステーブルコインの取引高が増加したことが、その競争の激化に拍車をかけているようだが、中には、厳しい環境に耐えられず開発を諦めるものも出てきているという。例えば昨年末、ICO(イニシャルコインオファリング)により1億ドル以上の資金調達に成功したBasisは、ステーブルコインとして有力視されていたが、規制当局の締め付けの強さなどを理由に開発から撤退している。これからは、TUSDやStableUSDのような自動化されたソリューションの開発が主戦場となるかもしれないが、この分野での開発には今後も注目していきたい。
作成日
:2019.03.06
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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