作成日
:2019.02.15
2021.08.31 15:27
アイデンティティ管理(ユーザーIDやパスワード等の情報を一元管理)システムの提供を行うPersonaは2月15日、ブロックチェーン技術を基にしたネットワークプロトコルを活用する KYC(Know Your Customer、顧客確認)認証システムのベータ版
をリリースしたことを発表した。PersonaのKYC認証プラットフォームは、KYCプロセスの簡素化と安全性を高めると共に、権限のない者からの不正アクセスによるユーザー情報の保護を図る狙いがあり、この度PersonaがリリースしたKYC認証システムのベータ版では、膨大な認証リクエストが届いた際のシステム耐性や処理能力などをテストする見通しだ。
KYC認証システムのベータ版のリリースに際し、Personaの共同創業者であるȘtefan Neagu氏は以下のようにコメントしている。
およそ1年ほどかけて、安全性・信頼性の高いネットワークプロトコルを活用したKYC認証システムのベータ版のリリースに漕ぎ着けました。我々は、個人情報を安全に取り扱うと共に、法人のお客様のオンボーディング(新規ユーザーをサービスに適用させるプロセス)を合理化させることに貢献できることを誇りに思っております。また、我が社のブロックチェーン技術を活用し、サードパーティが独自のdApps(ダップス、分散型アプリケーション)の開発を手掛けるサポートを続けていく考えであります。
Ștefan Neagu, Co-Founder of Persona - Cryptoninjasより引用
KYC認証システムの利用を望むユーザーは、まずKYC認証プラットフォームの口座開設を行い、KYC認証システム上に公証登録をすべく、本人確認書類のコピーを提出して認証を受ける必要があるという。なお、複数のトラストポイント(電子的認証手続きの際に置かれる基点)において、クレジットカード番号やジムの会員番号など異なる本人確認書類が求められる模様だ。一度KYC認証プラットフォームに個人情報を登録し認証を受けた後は、如何なるウェブサイトにおいても、個人情報を保護した状態で容易に登録手続きを行うことができるとのことである。仮に、ユーザーがKYC認証システム上の情報を使ってウェブサイトに登録する場合、第三者からはトラストスコア(パスワードを設定する代わりに、コンピューターと個人が直接通信して本人であることを証明する方法)のみ閲覧でき、本人確認書類にはアクセスできない仕組みだという。
FX、仮想通貨といった分野では、サイバー犯罪や投資詐欺などが多発している。そのため、安全性・信頼性の高い認証システムへの潜在需要は高いと考えられる。PersonaのKYC認証システムのベータ版のシステム耐性、処理能力などに問題なく、その有効性が改めて示されれば、多くのユーザーからの利用拡大が予想されよう。
release date 2019.02.15
昨今、KYCはマネーロンダリングなどの不正利用を防ぐため厳格化が進められており、国際的に規制が強化されている。それに伴い顧客の個人情報を扱う機関の事務処理が増大しているが、近年、強固で簡素化した識別プロセスが可能なブロックチェーン技術を活用するプロジェクトが続々と進められている。分散型台帳技術とも呼ばれ、仮想通貨や金融システムでの利用イメージが強いブロックチェーン技術だが、正しい記録を複数に分散して暗号化しているため、変更や改ざん、ハッキングなどが容易ではなく、安全な個人情報の管理を実現することができる。健全な市場形成においてKYCは重要な役割を果たしており、金融機関のみならず医療機関などでもKYCプロセスが設けられていることが多い。また、将来的には、KYC済み個人情報を各金融機関が共有して顧客口座開設のオンボーディング業務を統合する可能性もあり、共通利用できるインフラを整備する技術を活用したサービスの拡大と普及に期待が高まることだろう。なお、ビットウォレットはKYC強化に向けワールドチェックを導入しており、バイナンスがKYCソフトウェアを強化するなど、コンプライアンスや不正利用防止対策を強化する動きがみられている。
作成日
:2019.02.15
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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