作成日
:2019.01.22
2021.08.31 15:27
オランダ金融市場庁(The Netherlands Authority for the Financial Markets)【以下、AMFと称す】とオランダ中央銀行(De Nederlandsche Bank)【以下、DNBと称す】が、国内で営業する仮想通貨関連サービス業者を対象とした登録制のライセンス制度導入を提案していることが、オランダ放送協会(Nederlandse Omroep Stichting)の報道により明らかになった。
今回のライセンス制度に関する提案は、オランダ政府の財務大臣であるPete Hoekstra氏がAMFとDNBに仮想通貨市場の規制化を求めたことに端を発しており、同氏は準備ができればすぐにでもこの制度の施行に動く構えだ。このライセンス制度は、仮想通貨取引所やウォレットサービスに対して、ユーザーの取引情報を記録および保管、加えて犯罪利用の可能性がある疑わしい動きを当局に報告するよう義務付けることを目的としている。また、報告によって、取引が調査の対象となった場合、当局は、関連する情報をこれらの事業者から参照することが可能となる見通しだ。ライセンスを取得するためには、まず、DNBが課すテスト期間に当局の監査を受ける必要があり、データ収集やその管理の観点でシステムが基準に達していることを示さなければならない。現在のところ、30程度の企業や団体がライセンスの取得に動いているという。
AMFとDNBによると、他国と同様にオランダ国内でも仮想通貨取引の人気が低下しているため、仮想通貨に関する危険度の高い投機や詐欺への対策が後回しになっているという。しかしながら、対照的に犯罪利用の可能性がある仮想通貨の疑わしい取引件数は増加傾向にあり、オランダのFinancial Intelligence Unitの調べによると、これまで年間300件程度だったのが、今ではおよそ年間5,000件まで急増していることがわかっている。このことから、オランダでのライセンス制度導入は、仮想通貨を利用したマネーロンダリングやテロリスト資金供与などの犯罪を排除する働きが求められるといえる。
ライセンス制度の導入で市場の安全性が向上することが予測されるが、決していいことばかりではない。ブロックチェーンテクノロジーの浸透を進める非営利団体、Bitcoin Nederland Foundationの書記であるRichard Kohl氏は、ライセンス制度の導入が、金融業界に参入する仮想通貨関連のスタートアップ企業に対して不利益をもたらす可能性があることを指摘している。事務的な書類や跳ね上がるコストなどが要因となり、自由な風土をもつオランダ国内市場のイノベーションを阻害すると、Kohl氏は警笛を鳴らしている。
このオランダ政府の動きは、世界の流れを汲んだもので、他国でも似たような事象が発生している。例えば、アフリカでは、南アフリカ準備銀行(South African Reserve Bank, SARB)が、既存の規制フレームワーク改正を助けることを目的に、オランダ同様の仮想通貨関連サービスのライセンス制度導入を提案している。加えて、デンマーク政府の税務機関は、国内3つの取引所からトレーダーの名前や住所、税務に関わる情報などを収集して、脱税への対策を強化しているようだ。
release date 2019.01.22
世界で検討され始めているライセンス制度は、日本ではいち早く取り入れられており、金融庁は仮想通貨関連業者を登録して、安全性の高い市場環境作りに大きく貢献している。その他、アジアでは、最近、タイがこのライセンス制度を導入しており、先日、仮想通貨取引所を中心とする4つの企業が国内での営業を許可されたことが伝えられた。少なくとも日本の仮想通貨市場は世界一先進的な市場だと評価されるほどに当局の管理が進んだが、この規制フレームワークが最適解なのかはまた別の議論だ。特にオランダは、これまで、自由貿易や新興企業の発展を支援することで経済成長を遂げてきたため、規制による締め付けがどのように作用するかに関しては慎重にならざるを得ない。対策として、特定の企業を規制の対象外として該当技術の実証を可能とするサンドボックス制度を設けるなど、積極的な成長を促す方法も検討されるべきだろう。なお先日、日本では、仮想通貨の新たな決済システムを開発した株式会社Grypto Garageがフィンテック関連事業としては初となるサンドボックス制度の認可を受けている。これからの仮想通貨関連事業は規制と同時に成長を促す策の検討が求められるだろう。
作成日
:2019.01.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
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