作成日
:2019.01.22
2022.01.27 15:31
韓国の金融市場監督当局である公正取引委員会(Fair Trade Commission)【以下、FTCと称す】が、韓国企業5社とのFXデリバティブ取引契約を獲得すべく、情報を不正に共有及びビッド(買値)を不公正に操作したとして、グローバル展開を図るメガバンク4行に対し罰金を科した、と韓国の英字紙Korea Timesが報じた。
この度罰金を課せられたのは、JPモルガンチェースとHSBC、ドイツ銀行、そしてスタンダードチャータード銀行の4行である。罰金の金額に関しては、JPモルガンチェースが最も大きく2億5,100万ウォン(223,000ドル)、次いでHSBCが2億2,500万ウォン(200,500ドル)、ドイツ銀行とスタンダードチャータード銀行が、それぞれ2億1,200万ウォン(188,000ドル)、500万ウォン(4,500ドル)となり、4行総額で6億9,300万ウォン(約616,000ドル)に上る罰金を科せられた格好だ。
これらの4行は、2010年3月から2012年2月までの間に、韓国企業5社とのFXデリバティブ取引で計7回に亘り不正を働いた模様である。4行は、一般的に利用されるメッセージ交換ソフトを相互に利用して、取引契約の管理や買値などの情報を共有していたと見られている。なおFTCでは、4行と取引を行った韓国企業5社については、社名を明らかとしていない。また、この度の4行への罰則を公表することで、マーケットオーダー(成行注文)による効率的な市場を取り戻すと共に、市場参加者が公正な競争環境の下でFXデリバティブ取引を行うことを期待していることに加え、再び不正行為に手を染めれば、更なる厳罰を科すと警告を発してもいる。
なお、韓国の金融市場監督当局として監督・検査機能を有する金融監督院(Financial Supervisory Services, FSS)は、投資銀行複数行が絡むFXデリバティブ取引の価格操作に関する一連の案件を調査しており、この流れの中でFTCはメガバンク4行が引き起こしたカルテル(価格などに関し不正に協定を結ぶこと)として知られる不正行為に対し、捜査のメスを入れたものと見られている。
なお、FTCがFXの相場操縦を行った企業に対し罰金を科したのは今回が初めてではない。2011年から2014年の間に行われた通貨先物取引の価格操作に関して、2018年にドイツ銀行とBNPパリバに対し、それぞれ7,100万ウォン(63,000ドル)、1億500ウォン(93,000ドル)の罰金が科せられている。また2019年1月初頭には、香港当局がJPモルガンチェースに対し、2年以上に亘りアンチマネーロンダリング(AML)法を遵守してこなかったとして1,250万香港ドル(160万ドル)の罰金を科している。他、香港当局はワラント取引禁止通知を一部のブローカーに対し発令してもいる。
各国当局の規制が強化される中、デリバティブ取引を筆頭に、金融商品の仕組みが複雑になれば、より一層投資家保護に配慮する必要があり、信頼性・透明性の高い企業経営を行っていく上では、徹底したコンプライアンスの遵守は避けては通れない道と言えよう。
release date 2019.01.22
今回、米国最大の資産を要する巨大金融グループJPモルガンチェースなど大手金融機関4社が、為替操作や秘密情報の共有などの不正行為に加え、カルテルを使った不正操作など、不公平に買値を操作したことで摘発された。しかし、このような摘発は珍しいことではなく、不正行為が発覚するたび、金融機関は多額の罰金や和解金の支払いなどの処分を科されている。企業のイメージにも大きなダメージを受けることになるが、不正行為はなくなる気配がない。というのも、為替操作を行うことで、巨額な資金が金融機関に入るだけでなく、関わったものがインセンティブを得られる体制が要因とされる。また、不正行為に対して企業幹部の責任が特に問われないことも問題のようだ。これまでに世界の大手金融機関が不正行為をめぐる罰金や賠償金として支払った総額は数千億ドルに上るとされるが、罰金以外の厳しい制裁で取り締まらない限り、再び同様の事件が発生するだろう。投資家保護のためにも、止まない不正行為へのグローバルな対策が求められる。
作成日
:2019.01.22
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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