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FCA、内部告発者保護施策を再検討

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update 2022.01.27 17:01
FCA、内部告発者保護施策を再検討

update 2022.01.27 17:01

徹底した内部告発者保護を模索

英国の金融監督当局である英国金融行動監視機構(The Financail Conduct Authority)【以下、FCAと称す】が、内部告発者保護施策を徹底的に見直す意向であると、英国の有力経済紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が報じた。

FCAでは、内部告発者に関する情報の機密性を十分に確保すべく、これまで実施してきた施策の改善を図ると共に、内部告発者からの情報に基づく調査業務の作業効率を高めることも含め、内部告発に関する監督及び政策執行チーム間の情報共有プロセスを再点検する模様だ。FCAは、内部告発者保護施策を全面的に見直し、新たな詳細プランを2019年後半に公表する見通しであると、フィナンシャル・タイムズは伝えている。

FCAは2018年に、匿名性確保が必要とされる内部告発者事案への対応の際、多くの不手際が生じ、痛烈な批判を浴びていた。例えば、2013年の調査期間中に、内部告発を行ったロイヤルバンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of Scotland)の社員の個人情報を公開する失態を演じ、FCAがその後公式に謝罪を行う事態となっていた。加えて、金融当局への苦情対応に当たる機関であるFinancial Regulators Complaints Commissionerにおいても、FCAは内部告発者の匿名性を確保するための適切な対応がとられていないとしている。そのため、FCAにとって内部告発者に関する一連のプロセス及び施策を徹底的に見直すことは、緊喫の課題であったと言えよう。

またFCAは2018年12月に、英国で事業を行う多くの銀行が内部告発に対し罰則を科さず、内部告発者問題は改善されている一方、いくつかの銀行においては、不正行為に立ち向かう人々を保護する十分な体制を再構築する必要があると公表している。これらのことを踏まえると、英国金融業界全体で内部告発者を保護する施策は、更なる改善の余地があることが伺える。

反トラスト(カルテルなど独占禁止関連事案)や内部告発の分野で多くの実績を誇る法律事務所Constantine Cannonの国際内部告発者事案の責任者を務めるMary Inman氏は、FCAによる内部告発者への措置の見直しは、自身のキャリアを傷つけるリスクを負いながらも内部告発行為を行う者を勇気づけるとコメントしている。ただし、FCAは内部告発者を保護すべく更なる措置を講じる必要もあると見ている。

なお、米国の金融監督当局である米国証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、FCAと比較して、より厳格な内部告発者保護制度を設けている。[1]加えて、2018年9月、SECは内部告発者に報奨金400万ドルを支給し、大きな話題となっている。SECは、英国にはない内部告発者報奨金プログラムを採用することで、内部告発者が継続的に価値ある情報を提供し、不正を撲滅する調査活動に大きく貢献する仕組みを構築している模様だ。

昨今、SECの例にあるように世界の金融当局や大手企業が、不正行為などの情報提供に多額の報奨金を支給するケースが増えているが、不正行為や詐欺、ハッキングなどが横行している仮想通貨業界においても報奨金制度を設けている取引所が増えているようだ。世界最大手の仮想通貨取引所バイナンスが報奨金を用意していることを明らかにしている他、韓国の大手仮想通貨取引所Upbitも褒賞金制度を開始している。

FCAにおいても、この度内部告発者保護施策を徹底的に見直し、内部告発者を適切に、且つ十分に保護する体制を構築することが期待されていよう。

release date 2019.1.2

出典元:

ニュースコメント

諸外国から遅れをとる日本の内部告発者保護制度

企業内の不正は内部通報がきっかけで発覚することが多い。日本における内部告発者の保護制度は、欧米などの諸外国に比べるとかなり遅れているといえるだろう。日本では、内部告発を行う事により、告発者の社内での立場がなくなる、また不当な人事異動等の大きなリスクを負うことになり、なかなか告発に踏み切れないのが現状である。2006年より日本で施行されている「公益通報者保護法」は、形式的には内部告発を認めているものの、内部告発をした労働者を保護する仕組みがないことが未だ最大の問題となっている。しかしながら昨年11月、仏自動車大手ルノー(Renault)の最高経営責任者(CEO)で日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)氏の逮捕が内部告発によるものだったことが連日報道され、大きな話題となったことで、内部告発について多くの国民の関心が寄せられるようになったのではないだろうか。まだまだ日本では機能しているとは言えない「公益通報者保護法」であるが、今後、日本の法制度が見直され、内部告発をした労働者を保護する仕組みが整うことを期待したい。


Date

作成日

2019.01.02

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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