作成日
:2019.01.03
2022.01.27 16:59
インドの証券市場監督当局であるインド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India)【以下、SEBIと称す】は、全てのデリバティブ取引に関して、現行の差金決済から現物決済へと移行する決定を下した。ボラティリティの抑制と貸借取引プロセスの再構築を図る狙いがある模様だ。
なお、差金決済(cash settlement)とは、決済時に反対売買を行い、損益のみを受払する決済手法のことである。一方の現物決済(physical settlement)は、買い方の場合、買い建てた株式を現物で引き取り(現引)、売り方は現金を受け取る(現渡)決済手法である。
SEBIでは、この度の決済スキームの移行を3段階に分け、2019年10月までに完了させる見通しである。まず、各上場企業における市場規模の日次平均を算出し、市場規模を降順に並べ替えを行う。そして、小規模企業50銘柄に関しては2019年4月までに、そして次の50銘柄を7月までに、残りの50銘柄を10月までに現物決済へと移行を図る計画だ。加えて、新たに提供されるエクイティ・デリバティブ商品に関しては、その全てを即座に現物決済へと切り替える必要があるとしている。
尚、SEBIは2018年4月に、デリバティブ取引の現物決済を義務付ける計画を公表していたものの、その際には具体的なタイムスケジュールを明らかとしていなかった。そこで、この度のSEBIの発表を受け、各上場企業やブローカー、投資家などの市場関係者が、現物決済スキームの導入に向け、適宜スムーズな対応を図れるようになることが期待されよう。
この度のSEBIの政策変更の決定により、インドにおける2大主要証券取引所の内の1つであるインド国立証券取引所(The National Stock Exchange)【以下、NSEと称す】が大きな影響を受けることが予想される。NSEのデリバティブ市場には200銘柄が上場し、先物・オプション取引の99%を占めているが、SEBIは、証券貸借取引(Securities Lending and Borrowing)【以下、SLBと称す】プログラムの下、既にNSEに上場する46銘柄を現物決済に移行しているとのことだ。
機関投資家の間では、この度の当局による決済スキームの変更をポジティブに見る向きもあれば、短期的な影響を懸念する声もある。SEBIによる決済スキームの移行を受け、IIFL Securities LtdのCEOであるArindam Chanda氏および、Essel Finance AMCのViral Berawala氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
私は、この度の当局による決定だけでは、現物決済を用いたより健全な証券市場を形成していけるか否か依然結論は出ていないと見ています。現在までのところ、現物決済する銘柄数が限られていることに加え、必ず全ての株式が現物決済を採用するか否か、市場参加者は確信を持てていないこともあり、現物決済は積極的には行われていません。ただし、今後に関しては、当局が策定した移行プランの下、現物決済が義務付けられ、SLBプログラムを確実に遂行していくのであれば、インドの証券市場が発展すると共に、市場参加者も大きく増加することが期待できるでしょう。
Arindam Chanda, CEO of IIFL Securities Ltd, - livemintより引用
株式の現物決済は、証券市場が発展するために良いアイデアだと思われますが、キャッシュマーケット(現物市場、時価で取引される市場)の取引量が減少するため、恐らく流動性問題が浮上してくることが予想されます。そのため、先物市場の売買注文量を増やすと共に、先物・オプション市場で取引できる銘柄数を増加させることで、流動性の枯渇懸念に対応する必要があると考えます。これは、新たな決済スキームへ適応するための短期的な課題と言えるでしょう。その懸念が払しょくされた後は、現物決済のために事前に多くのポジションを構築することで流動性が高まると予想され、株式先物・オプション取引特有の取引最終日近くに生じるボラティリティの高まりを抑制することも可能になると考えます。
Viral Berawala, Essel Finance AMC, - NDTV PROFITより引用
SEBIが現物決済スキームへの移行を確実に行うことで、市場からの信頼も増し、インド証券市場の発展及びデリバティブ取引の拡大が期待されよう。
release date 2019.1.3
デリバティブ商品の代表的なものとして、先物取引・オプション取引・スワップ取引などがあるが、デリバティブ商品は、レバレッジをきかせて取引をする手法が多いため、リスクが高い金融商品だと言われている。デリバティブの元となっている原資産を実際に受け取る、また引き渡すなどして取引を終わらせるやり方を現物決済といい、それに対して、原資産のやり取りは行わずに、差損益を金銭でやり取りして終わらせるやり方を差金決済という。差金決済は、決済時に現物資産の受渡しをせずに、売却金額と買付金額との差額の授受により決済するため、同一資金で何度でも取引が可能である。差金決済は実に資金効率がいいため、短期売買を繰り返して利益をあげるトレーダーにとっては大きなメリットであるといえるであろう。ただ、レバレッジを利用するということは、ハイリスク・ハイリターンの投資となるため、勝つ時の利益は膨大にはなるが、負ける時の損失が大きくなるため、注意が必要である。
作成日
:2019.01.03
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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