作成日
:2018.11.16
2022.05.20 13:40
ソーシャルトレーディング・プロバイダーのeToro(UK)Ltd.(本社:24th floor, One Canada Square Canary Wharf E14 5AB London, United Kingdom
)【以下、eToroと称す】のCEOであるYoni Assia氏が、2019年に独自のステーブルコインを発行する計画であることを発表した。この度の公表は、11月13、14日の2日間の日程で開催されたヨーロッパ金融業界最大のBtoBコンファレンスであるLondon Summit 2018にて行われており、詳細なスケジュールは未だ明らかにされていない。
ステーブルコインは、実世界の法定通貨もしくは他の資産と、通常1対1の割合で価値を裏付けされた仮想通貨である。つまり、1ステーブルコインが1米ドルもしくは1ユーロに換算されることになるわけだ。金や不動産といった通貨以外の資産を用いる場合には、事前に定められた基準でステーブルコインとの交換レートが固定されることになる。取引所におけるステーブルコインの発行に関しては、仮想通貨特有の激しい値動きを解消し、安全に保有できるデジタル資産としての役割が期待されており、2018年後半を通して大きなトレンドを形成していると言えよう。
そのような環境ではあるものの、以前最も人気を集めた世界初のステーブルコインであるテザー(Tether)は、監査法人による監査が行われず、テザーの価値の裏付けとなる米ドル資産による準備金の実態に対する疑念が高まっていたことから、ここ2年ほど仮想通貨コミュニティより激しい非難を受けている。加えて1か月前の2018年10月にテザー(USDT)が急落したことから、ステーブルコインとしての信用不安までに発展していた。
人気に陰りの見え始めたテザーの一方で、TrueUSDやPaxos Standard、またはCentreが開発したUSD Coinなど数多くのステーブルコインが登場している。更に、多くの仮想通貨取引所も独自のステーブルコインを発行し始めており、米大手取引所CoinbaseとCircleが共同で開発したUSD Coinをリリースし、直近ではウィンクルボス兄弟が設立したGemini Trust がジェミニドル(Gemini Dollar)を発行するなど、ステーブルコイン取引の人気は以前として根強いものがある。
この度、独自ステーブルコインの発行を発表したeToroは、この1年間、精力的に仮想通貨に関連する業務を行ってきた。これまでの数か月に亘る活動を振り返ると、2018年5月にeToroは仮想通貨CFD取引を現物取引へと完全移行し、顧客に実用的なサービスを提供することで、長期的な利益を見据えた顧客ファーストの経営戦略を打ち出している。加えて8月には、eToroが7つの英国サッカープレミアリーグのスポンサーシップを締結したことは、大きな話題を呼んだ。eToroの仮想通貨分野は好調で、同社の好調な業績のけん引役となっていることから、今後明かされる独自ステーブルコインの詳細にも注目が集まりそうだ。
release date 2018.11.16
世界最大級のソーシャルトレーディングプラットフォームを運営するeToroは、ここ最近仮想通貨分野に力を入れており、同社のプラットフォームでは、ビットコイン(Bitcoin)などの仮想通貨取引はもちろんのこと、プロトレーダーの投資方法をコピーすることができる「CopyFund」など仮想通貨投資家向けの機能を組み込んでいる。多様なサービスを提供するeToroのプラットフォームは人気を集め、2018年7月時点で2億5,000万人以上のユーザーに利用されている。また先日、eToroが仮想通貨ウォレットサービスを開始したことも発表され、同社の仮想通貨業界参入の勢いは加速している。なお、ウォレットサービスでは今後、新たな仮想通貨やトークンの追加、仮想通貨同士の交換、フィアット(法定通貨)の入金、店舗での支払い機能などのさらに多くの機能を追加していく予定だという。まだ日本ではこのウォレットサービスを利用することができないが、世界中に多くのユーザーを抱えているeToroが、ウォレットをリリースしたことは仮想通貨業界にとってニュースとなった。価格が大きく変動する仮想通貨が実用的に利用されることは難しいとされているが、価値が保証されたステーブルコインの登場により、一般的な利用手段としての仮想通貨に光が差してきた。多くの取引所でステーブルコイン発行の発表が相次いでいるが、すでに大規模なユーザーを抱えるeToroの独自ステーブルコインの発行で、仮想通貨業界がどう反応していくのか注目していきたいところだ。
作成日
:2018.11.16
最終更新
:2022.05.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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