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ESMA、既存の金融法での仮想通貨規制を検討へ

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update 2021.08.31 15:22
ESMA、既存の金融法での仮想通貨規制を検討へ

update 2021.08.31 15:22

SMSGが仮想通貨の取り扱いに関する見解を発表

欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は、技術的なアドバイスを送る立場にある証券市場利害関係者グループ(The Securities and Markets Stakeholders Group)【以下、SMSGと称す】から、仮想通貨も既存の金融法の中で規制すべきだとの助言を受けていることが明らかになった。SMSGの見解によると、発行企業を事業者、投資家を消費者とみなすことから、ほとんどの仮想通貨は、不公正取引法指令(The Unfair Commercial Practices Directive (UCPD 2005/29/EC))の対象になると言う。SMSGは、既存の枠組みとして2018年1月に施行された第2次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive 2) 【以下、MiFIDⅡと称す】の適用を提案している。

10月19日に提出された36ページにも及ぶレポートの中では、SMSGはトークンを3つのカテゴリーに分類した上で、目的に沿った法的措置が必要だとの見方を示している。[1]まず、一つ目のカテゴリーに入る決済などに利用されるペイメントトークンだが、MiFIDⅡの適用する金融商品の対象外となっていることから、SMSGはESMAに対し、欧州委員会(European Commision)へ規制変更に向けての協議を行うよう促している。また、2つめのカテゴリーに入るユーティリティトークンも、現在はMiFIDⅡ対象外であるが、譲渡可能なトークンは投資行為での利用に当たるため、既存の金融法の下で管理されるべきだという。最後に、8つのサブカテゴリーに分類される多様な資産トークンが3つ目のカテゴリーに挙げられており、このトークンも、配当があり譲渡可能となれば、証券と同様な扱いとなり、規制の適応範囲内にある。

仮想通貨は、市場の不安定さを招く要因になる恐れがあるものの、金融分野にイノベーションをもたらす可能性もあることは認識されているところだが、G10に助言する立場にある金融安定委員会(Financial Stability Board)は、市場不安のリスクはすぐそこまで迫っていることに言及している。レポートの中でも、ICOの多くが失敗していることやペイメントトークンのトランザクションでは電力消費が急激に上昇していることなど、懸念が挙げられている。

EUに加盟する国々は、各々独自に仮想通貨への対応を行なっており、マルタやジブラルタルは仮想通貨のビジネスを大いに歓迎する一方、英国は慎重に業界を見定めており、フィンランドにおいては断固反対の姿勢を示しているようだ。これに対して、SMSGは、ESMAに各国規制当局に向けたガイドラインを制定し、市場の基礎を固めるべきだと提言している。2017年12月にESMAは、加盟国の企業にユーザー情報を特定することを義務付けており、18ヶ月以内に匿名取引を禁止することを決定した。しかしながら、この法律は、2018年6月の第5次マネーロンダリング指令(Directive (EU) 2018/843)で匿名取引を完全に禁止するものではなく、金融情報機関が民間企業から個人情報を得ることで権力の拡大につながることが指摘されている他、今年7月には、欧州議会の経済金融問題委員会(European Parliament's Committee on Economic and Monetary Affairs)が、仮想通貨は銀行の脅威となり得ないと発言している。

今年1月にはESMAが加盟国地域を対象とした金融法、MiFIDⅡの更新を制定し、外国為替取引事業者に厳しい制裁を加えている。危険度の高い信用取引を制限するためのものだというが、その影響で顧客がライセンスを有していないオフショア取引所に移動していることが、事業者の不満となっているようだ。

今後仮想通貨を取り巻く環境はどのような展開を迎えるか注目していきたい。

release date 2018.10.24

出典元:

ニュースコメント

仮想通貨分野でリードする欧州市場でESMAの手腕が問われる

今月初めにESMAが欧州市場でのICO規制について、今年中を目途に検討していることが報道されており、本格的な法整備に乗り出していることがわかる。ESMAの議長であるSteven Maijoor氏も、ICOは本質的には金融商品の特性を持つため既存の金融法で規制すべきだと発言し、SMSGの見解にほぼ一致しているかのように思われる。しかしながら、株取引や外国為替取引と同水準の厳しい規制を仮想通貨市場に課すことはあまり得策ではないのかもしれない。ICOには、ブロックチェーンのテクノロジー開発という重要な側面があり、欧州市場にはそれに適した土壌が育ちつつある。事実、今まで実施された主要ICO100件の内、先日大手銀行デューカスコピーがICOを行ったスイスのほかに、エストニア、イギリス、フランス、ドイツなどの企業が行なっており、欧州はアメリカに次いで仮想通貨に最も取り組んでいる地域となっている。投資家保護の視点が強くなりがちだが、イノベーションを加速する責任も同時に担うESMAには慎重な舵取りが求められるだろう。


Date

作成日

2018.10.24

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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