作成日
:2018.10.12
2021.08.31 15:22
英国ロンドンを拠点とするAmana Capital(本社:32 Ludgate Hill, 5THFloor, EC4M 7DR London, United Kindom
)は10月10日、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】による新規制に対応した、革新的なマーケティング戦略であるデルタトレーダープログラムの入賞者を発表した。2018年6月から3か月間にわたり開催されたデルタトレーダープログラムでは、優秀なトレーダーに最大100万ドルに及ぶトレーディング資金が用意されており、Amana Capitalが事前に定めた評価基準を満たした4人の優秀トレーダーが100,000ドルの賞金を獲得した。残念ながら、トレーダーはその賞金を元手にトレードで利益を上げたとしても、その全額を受け取ることはできないが、その内の20%は得られる決まりとなっている。
そこでAmana CapitalのCEOであるAhmad Khatib氏は、以下のようにコメントしている。
ベストな成績を収めたトレーダーが100,000ドル分のトレーディング資金を得られるプログラムでは、我々のお客様にユニークな体験をしていただくだけでなく、プロのトレーダー並みのトレーディングスキルを磨く機会も提供することができます。我々は次回のデルタトレーダーコンペティションを楽しみにするとともに、第1回目のプログラムに参加して下さった皆様に深く感謝をいたします
Ahmad Khatib, CEO at Amana Capital - BusinessIntelligenceより引用
Khatib氏のコメントから、デルタトレーダープログラムは今回1回限りではないことが伺える。Amana Capitalからは未だ次回開催の発表はないが、次期に行われる見込みである。
なお、8月初めに発行されたESMAの新規制に伴い、ブローカー各社は新たに革新的なマーケティング戦略を打ち出す必要性に迫られている。ESMAは、過去に多くのブローカーが顧客を惹きつけるために一攫千金を狙うようなインセンティブを与えることを禁止するとともに、ブローカーに対しCFD取引のリスクを適切に謳うよう求めている。そのような環境下、Amana Capitalは、ライバルブローカーに一歩先んじてマーケティング戦略を実践したようだ。
Amana Capitalが採り入れたデルタトレーダースキームは、ESMAの新規制に適切に対応した賢明なマーケティング戦略といえよう。その理由の一つ目として、Amana Capitalが打ち出す安全で低リスク志向のトレードは、ESMAは規制することができず、傍観するしかないことが上げられる。そして第2に、トレーダーが競争的な環境と多額の報酬を獲得するチャンスは、Amana Capitalでトレードをする大きな動機付けとなっており、非常に効果的なマーケティングの実践といえる。これはESMAが規制する、顧客の感情を揺さぶるマーケティング戦略と同じような効果を持つが、Amana Capitalのデルタトレーダースキームではリスク管理を適切に行うことも促しているため、ESMAの規制に対し巧みに対応していることが伺える。ESMAはブローカーに対し、リスクを度外視して利益を簡単に得られるイメージを抱かせるなど、投資家心理をくすぐる広告を禁止したが、デルタトレーダープログラムのような先進的なマーケティング戦略スキームが、今後も次々に出てくることが期待される。
release date 2018.10.12
ESMAが8月に施行した新規制では、ハイレバレッジ規制のほか、ボーナスやリベートを含むインセンティブの提供が禁止となった。これらは口座の開設を検討する顧客にとって重要な点であり、欧州のブローカーにとっても顧客獲得の上で大きな問題となっている。こうした状況の中、既存顧客の維持や新規顧客を取り込むため、各ブローカーのESMA新規制後の顧客獲得競争は激化しており、さまざまなマーケティングが行われている。具体的には、FxProがYouTubeでマーケティング戦略を開始したほか、多くのブローカーがサッカーなどのスポーツ関連のチームとのスポンサーシップ契約により、ブランド力向上を目指しているようだ。そしてこの度、Amana Capitalが打ち出したマーケティング戦略は、投資家保護を目的に制定されたESMAの新規制を巧みに利用していることが伺える。ブローカーは今後、投資家に十分な情報を提供するとともに、魅力あるサービスやマーケティングで顧客を引き付け、生き残りをかけていくのであろう。
作成日
:2018.10.12
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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