作成日
:2018.10.08
2021.08.31 15:22
Bitstamp Ltd(本社:5 New Street Square, London, EC4A 3TW, United Kingdom
)【以下、ビットスタンプと称す】が運営する欧州の大手仮想通貨取引所で、自動取引を執行するボットの暴走が原因となり、今月7日にビットコイン(BTC/EUR)やライトコイン(LTC/EUR)を含む仮想通貨価格が急激に変動していることが確認された。事が起きたのは7日未明、ボットがビットスタンプで、600万ユーロ相当のビットコインを15分足らずの間に一気に売りに出したのをきっかけに、ビットコイン価格は約700ユーロ値を下げ、5,000ユーロ付近まで急落した。その後、5分間ほどでビットコイン価格は反発し、6,600ユーロ付近まで値を戻したが、すぐに5,700ユーロ前後で落ち着きを取り戻している。
今回、最も大きな影響を受けたのはライトコインだった。ビットコインの下落とほぼ同刻に、元々50ユーロ程度で推移していたライトコイン価格は、一時、1.12ユーロまで大暴落するフラッシュクラッシュを観測した。その後、5分程度で元の価格水準まで反発しているが、この短時間で発生した急激な価格変動はSNS上を騒がせ、大口投機筋の価格操作ではないかなど様々な憶測が飛び交った。
その他ビットスタンプの主要通貨では、唯一イーサリアム(ETH/EUR)が、同時刻に上昇からの価格変動となった。イーサリアム(ETH/EUR)は、235ユーロ付近まで押し上げられた後、123ユーロの底値をつけたが、その後一時的に揉み合い相場となり、再び元の水準の195ユーロまで値を戻す値動きとなった。また、リップル(XRP/EUR)は、これらの仮想通貨の中でもいち早く変動が始まり、高値0.65ユーロと現在値0.4ユーロ付近の間で推移している。
ビットスタンプの取引量はここ数ヶ月間減少傾向にあり、1日あたりの出来高も5,000万ユーロを割る流動性の低い市場環境が出来上がっていた。今回の騒動では、そこにボットが大量の注文を短期間で出したことで一種のパニックが発生したと予測されている。ビットスタンプの共同創立者でありCEOのNejc Kodric氏によると、今回の急激な価格変動について、クライアントが運用するボットが暴走したことが原因であるとされているが、今後の再発防止に向けて、同社がどのような手を打つのか注目したいところだ。
release date 2018.10.8
金融機関の参入で複雑さを増す仮想通貨の取引環境フラッシュクラッシュは、一瞬で価格が急激に変動する現象で、米国株式市場などでも稀に観測されている。2010年には、数分間でダウ平均が1,000ドル程度、約10%も価格を下げ、歴史的なフラッシュクラッシュを記録した。その原因は明らかにはなっていないが、金融機関のHFT(高速取引、高頻度取引)やアルゴリズム取引による複雑な投資行動が重なった結果だと分析されている。仮想通貨市場は、ビットコイン先物やビットコインETF、その他のデリバティブ商品などの開発を推し進めるゴールドマンサックスのイーサリアム連動商品の開発や、モルガン・スタンレーによるビットコインのスワップ取引に向けた動きなどが明らかになっており、その他CBOEなどの米国大手金融機関を中心に参入が相次いでいる。このことから、仮想通貨市場も、株式市場と同様に複雑な市場環境に変化しつつあることは想像に難くないところだ。2014年ごろからEU金融商品市場命令:MiFIDを改正し、HFTなどの自動取引を規制している欧州の流れを汲み、米国でも同様の動きが見られるが、仮想通貨市場においても自動取引に対する早急な対策が必要となるであろう。
作成日
:2018.10.08
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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