作成日
:2018.10.05
2022.06.07 12:50
米国最大のFXブローカーでForex.comを運営するGain Capital Holdings Inc(本社:135 US Highway 202/206, Suite 11 Bedminster, NJ 07921 USA
)【以下、GAINと称す】は、2018年9月期の業績を報告した。報告書によれば、2018年9月期の外国為替取引量は前年同月比26.2%減の1,496億ドルと大幅な減少となり、前月比で見ても14.3%減と2か月連続の減少となった。8月期の取引量も前年同月比26.5%減、前月比4.2%減であったことから、まさに低迷が続いているといえよう。また、1日当たりの平均取引量(ADV)は、前年同月比21.9%減の75億ドル、前月比でも1.3%減と軟調な結果となった。
GAINの9月期の取引高に関しては、通常、8月期の季節的要因からくる取引高の落ち込みから回復する傾向があるため、前月比で見て減少することは一般的な事象ではない。取引高の低迷には、やはり欧州の規制当局である欧州証券市場監督局ESMAの新規制の影響が出ているようだ。GAINはForex.comと主に英国市場をカバー領域とするCiti Indexという2つのコーポレートブランドを運営しているが、レバレッジ制限が課せられた8月初頭から3か月間の稼働顧客数を追っていくと、8月期には2.1%減、続いて9月期には13%減となっており、取引高が表すボリュームだけでなく稼働顧客という全体のパイ自体も縮小傾向にあることが分かる。
一方で、明るい兆しとして先物取引の増加がOTC取引の低迷を補っているようだ。先物取引は前年同月比16%増の554,687枚となった。ただし、前月比でみるとこちらも3.7%減となっている。また、先物取引の稼働口座数は7,550と、前月比で横ばい、前年同月比で6.3%減と外国為替取引に比べ幾分安定している模様だ。
GAINは1999年に設立され、世界180カ国を股にかけ、リテール・機関投資家併せ14万人以上の顧客にFXをはじめ12,500超の金融商品を提供している。本拠地である米国ニュージャージーや英国ロンドン、東京など世界各国にオフィスを張り巡らせ、米国商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission, CFTC)や日本の金融庁などの規制監督のもと、法令を遵守し透明性の高い経営を行っている。ニューヨーク証券取引所(ニューヨーク証券取引所ティッカー:GCAP)にも上場する、まさに米国FX業界の巨人といえよう。
release date 2018.10.5
ESMAによる規制を受け、業界ではESMAが提案する低レバレッジの取引ではより多くの資金が必要となるため、資金を失うリスクを逆に増加させるのではないかという見方や、必要証拠金を用意できないトレーダーが規制の緩いオフショアブローカーへ乗り換える可能性が指摘されていた。当初GAINはESMAの新規制に反対する意向を表明していた。その後新規制が適用される運びとなったが、EU圏内に拠点を持つ海外FXブローカーの多くが、EU圏外のオフショア国に拠点を移転するなどの動きを見せている。別名でタックスヘイブンと呼ばれるオフショア国(バハマ、バヌアツ、セーシェル、ベリーズ、ケイマンなど)は、金融に関する規制が緩く法人税率が低いため、FX業者は利益を残しやすく新規制適用前のような質の高いサービス提供が引き続き可能となる。2011年に金融庁によって日本の国内FX業者の最大レバレッジが25倍に引き下げられた際、規制の影響を受けない海外FXブローカーの人気の高まったが、このまま進めば、オフショア国に拠点を持つFXブローカーに人気が移行する可能性も考えられる。グローバルな事業展開を理由に、規制変更による全体的な業績への影響は非常に少ないであろうとの見解を示していたGAINも、実際には苦戦を強いられている状況だ。同時期に好調な業績をあげたブローカーもある中、GAINがどのように巻き返しを図っていくのか今後の動向を見守りたい。
作成日
:2018.10.05
最終更新
:2022.06.07
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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