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イーサリアム価格下落によりICO資金の現金化が誘発か

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update 2021.08.31 15:22
イーサリアム価格下落によりICO資金の現金化が誘発か

update 2021.08.31 15:22

ICOの多くはイーサリアムの売却により利益を得た模様

イーサリアム(ETH/USD)の価格は、ここ7ヶ月で1,400ドルから200ドル以下まで下降しているが、HDR Global Trading Limitedが運営する仮想通貨取引所であるBitMEXの調査によると、この価格下落が、ICO(イニシャルコインオファリング)により調達した資金の現金化需要を高めている可能性が明らかとなった。

幅広いプロジェクトのICO利用に需要を支えられてきたイーサリアムだが、ビットコインのように高い価値水準を今後維持できるかは不透明であり、市場がリスク回避の方向へ傾いていると考えられ、投資に慎重にならざるを得ない状況にある。この一連の流れは、倒産しそうな銀行から顧客が資金を引き出そうとする行動心理に類似しており、大量のイーサリアムを抱えるICO主催者が、価値が下がり続けているイーサリアムの現金化を急ぎ、更なる売り圧力を生むきっかけとなっているという。

イーサリアムを利用したICOは、昨年だけで大型の資金調達となったイオス(EOS)を含め、222件も実施されている。BitMexの調査では、それらのICOプロジェクトは、合計1,518万イーサリアムの資金を調達することに成功しており、その内の1,133万通貨が売却され、残りは385万イーサリアムであることが報告されている。イオスはICOによって調達したイーサリアムを全て手放しているため、未売却の385万イーサリアムは、未だ他221プロジェクトのICO主催者の手中にある計算になる。また、調査の中で、主要なプロジェクトのICOによる収益性も調べられており、古いICOほどイーサリアム資産の保有により大きな利益を上げている傾向がわかった。反対に、2017年後半から今年にかけて実施されたICOは、収益が減少しており、資産価値の下落が売り急ぎを誘発する状況にあったことが見て取れる。イオス以外のICO全体では、調達したイーサリアムの売却によって7億2,700万ドルの利益が上げられおり、加えて9,300万ドルの含み益を抱えている状態だという。

イーサリアムを利用したICOは、プロジェクトによっては大きな利益を上げてきたが、全てのプロジェクトが成功したわけではない。イーサリアム価格はピーク時と比べて85%も減少しており、その間に実施されたプロジェクトの中には、トークンセール時よりも低いイーサリアム価格での現金化に迫られたものも存在する。また、イーサリアム価格の低下によって、相対的に累計3,400万ドルもの富を失ったという見方もある。

一方で、未だ売却されていない385万イーサリアムは、発行上限数の1億200万通貨と比べると少額で、市場に大きな影響を与える危険性は低いといえる。大きな視点で見れば、少なくともこれまでの様なパニックセールが起きる可能性は否定され、今後、市場が再び自信を取り戻す兆候が見えるのかもしれない。

release date 2018.10.2

ニュースコメント

新たなるブロックチェーンの戦い

イーサリアムは分散型アプリケーション(Dapps)で政府などの中央機関が存在しない、スマートコントラクトを実装しているプラットフォームである。イーサリアムはセキュリティが高いという優れた部分が支持を集め、イーサリアムのブロックチェーンを利用したゲームが発売されるなど、ブロックチェーンの王者とまで言われていた。しかし、昨今はイオス、ネオ(NEO)、リスク(LISK)など、続々と分散型アプリケーションを利用した仮想通貨が誕生している。競争が激化している状態の中、8月にイーサリアムは遅延障害を起こしており、送金失敗などの機会損失に繋がることが問題視されている。また、イーサリアムの送金手数料が高騰したことも、下落原因の一つと考えられている。なお、以前より、乱立するICOがイーサリアムが売られる原因であることが指摘されており、9月も弱気な仮想通貨市場のなかでイーサリアムが急落していた。かつては最強説が唱えられたイーサリアムであるが、今後、ブロックチェーンの競合はどのように展開されていくのか、新たなる王者が出現するのか、注目すべきところは多数ある。


Date

作成日

2018.10.02

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

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