作成日
:2024.02.09
2024.08.15 19:36
トラストウォレット(Trust Wallet)は、数多くのブロックチェーンと資産(アセット)に対応していることや、その優れた操作性から人気のウォレットです。一方で、トラストウォレットを使った勧誘や詐欺が増えており、複数の手口が存在します。
この記事では、トラストウォレットを使った勧誘や詐欺の手口を紹介します。加えて、被害に遭わないための対策と、詐欺に引っかかってしまったときの対処法も解説していきます。
2024年2月15日、米国のセキュリティ機関であるNIST(アメリカ国立標準技術研究所)が、iOS版Trust Walletが脆弱性を持つ可能性があるとして、調査をしているとの報道がされています。報道によると、この脆弱性により攻撃者はウォレットのシードフレーズを特定し、資金を盗むことができるとしています。
一方、Trust Walletは公式ブログにて、2018年に脆弱性は修正済みであり、ユーザーの資金は安全であると説明しています。また、米国NISTからの調査も受けていないとしています。
現在は様々な情報が錯綜している状況です。もう少し情報が明るみになるまで、Trust Walletの使用を控えたり、ウォレットにある資金を出金しておく方がよいのかもしれません。
トラストウォレット(Trust Wallet)はメタマスク(MetaMask)と同じように、仮想通貨(暗号資産)を保管するための分散型ウォレットです。
2017年にサービスが開始され、2018年には大手仮想通貨取引所のBinance(バイナンス)に買収されました。Binanceの公式ウォレットとして採用され、世界中で7,000万人以上に利用される人気ウォレットの1つです。
トラストウォレットは、ビットコインやイーサリアムなど100を超えるブロックチェーン、数百万の資産(アセット)に対応しています。さらに、仮想通貨の送受信だけでなく、購入・売却やスワップ、ステーキングなど、多様な機能も利用可能です。
トラストウォレットは、秘密鍵をユーザー自身で管理するため、第3者に知られることはありません。そのため、2022年のFTXのように、取引所が破綻しても仮想通貨を失うリスクを最小限に抑えられます。
秘密鍵とはウォレットの所有者が管理する文字列で、仮想通貨の送金の際に必要です。秘密鍵を他人に漏らすと、仮想通貨が不正に流出する可能性があります。
アプリに加えてPCブラウザ版も提供されているため、スマホとパソコンのどちらでも利用できる点も魅力です。
近年、トラストウォレット(Trust Wallet)を使った詐欺が発生しており、公式X(旧Twitter)でも注意を呼びかけています。
公式X(旧Twitter)は2023年2月、トラストウォレットのユーザーが、詐欺によって400万ドル相当のトークンを盗まれたことを公表しました。
1/ This week, an organised crime unit from Rome stole $4M from one of our users.
— Trust Wallet (@TrustWallet) February 8, 2023
It was stated, the thief 'took a picture' of the user's Wallet balance to steal the funds.
We've done investigating into the events and believe this is how it happened...
調査の結果、以下のようなソーシャルエンジニアリング詐欺によるものと判断されています。
ソーシャルエンジニアリングとは、人々の心理的な弱点や油断を利用して、不正アクセスや情報の抜き出しなどを試みる手口です。高度な技術を駆使せずに、肩越しにディスプレイを覗き見たり、電話で言葉巧みにパスワードを聞き出したりといった古典的な手法がとられます。
ローマを拠点とする犯罪組織は、被害者にビジネスを持ちかけ、言葉巧みにマルチシグウォレットからシングルウォレットに仮想通貨を移動させました。また、犯人はNDA(秘密保持契約書)のPDFファイルと個人情報を被害者に提供します。
その後、被害者は犯人と実際に会いました。資金の証拠としてトラストウォレットの画面を見せ、犯人が写真を撮影した数分後に、仮想通貨が奪われたということです。
被害者が受け取ったNDAのPDFファイルに何らかのマルウェアが仕掛けられており、デバイスから情報が流出したものと見られています。
ウォレットから仮想通貨を送金するには、秘密鍵を持つユーザーの署名が必要です。マルチシグウォレットは、複数のユーザーの署名を必要とするウォレットで、その分だけ安全性が高くなります。
紹介した詐欺事例のほかにも、国民生活センターやYahoo!知恵袋などには、仮想通貨の勧誘や詐欺に関するさまざまな相談が寄せられています。
被害に至るまでの手口は多岐にわたりますが、ここではトラストウォレットを使った勧誘や詐欺でよく見られる、以下3つを紹介します。
仮想通貨コミュニティではトラストウォレットを使うロマンス投資詐欺の発生が報告されており、国民生活センターやYahoo!知恵袋などにも、類似の相談が寄せられています。
ロマンス詐欺とは、好意や恋愛感情に漬け込んで金銭を騙し取る詐欺の手口です。
ロマンス詐欺で金銭を要求してくる口実はさまざまで、その中でも投資や仮想通貨(暗号資産)を口実にしたものは「ロマンス投資詐欺」と呼ばれます。
ロマンス投資詐欺では、SNSやマッチングアプリを使って巧みに近づき、「2人のために投資をしよう」「ビジネスパートナーとして仮想通貨の取引所に入金してほしい」といった言葉で金銭を要求します。
偽サイトへ誘導されたり、入金後に音信不通になったりして、資金を騙し取られてしまいます。
ロマンス投資詐欺は年々増えており、国民生活センターには詐欺に関する相談が多く寄せられています。
画像引用:国民生活センター
とくに2019年度から2021年度にかけては、相談件数が大きく増加しました。
トラストウォレットも例外ではなく、ロマンス投資詐欺に遭うユーザーが一定数存在します。
たとえば、マッチングアプリで出会った相手からトラストウォレットの利用を勧誘され、送金はしなかったものの、健康保険証など身分証明書のコピーを渡してしまった人がいるようです。この場合、そのときは被害に遭わなくても、ほかの詐欺グループに情報が回されて悪用される可能性もあります。
また、マッチングアプリで出会った相手から偽のURLを送られ、本物のURLだと信じて数十万円を送金してしまった人もいます。
X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで知り合った人から、DMが送られてきて、やり取りするうちに詐欺に遭うケースもあります。
たとえば、SNSで知り合った人からトラストウォレットの利用を勧誘され、送金してしまった人がいます。その後、自分の資産を確かめようとサイトにアクセスしたところ、突然つながらなくなり、出金できなくなったとのことです。
また、保証金を求められた事例もありました。被害者はトラストウォレットで500ドルを送金し、その後出金を依頼したところ、「安全認証のために同額の保証金を入金しなければならない」といった内容を伝えられたとのことです。
このように追加で支払いを求められる事例は珍しくありません。保証金を求められる事例のほかにも、最初に預け入れた資産が運用によって増えたように見せかけ、増資を勧誘してくるケースもあります。
フィッシング詐欺とは、銀行や大手通販サイトなどの実在する企業に見せかけたEメールやSMSを送り、IDやパスワード、個人情報などを盗み出す詐欺です。
「緊急」「至急」といった文言でユーザーを急かし、本物のサイトによく似たフィッシングサイトに誘導してログイン情報や個人情報を入力させます。その後、盗み取った情報を使って本物のサイトにアクセスし、不正な取引を行います。
トラストウォレットを使ったケースでは、「あなたの仮想通貨は危険に晒されています」「トラストウォレットのクイック本人確認」といった内容のメールが送られてきて、偽サイトへ誘導する事例がありました。
こうしたメールに引っかかり秘密鍵を入力してしまうと、ウォレット内の資産を盗まれる可能性が高まります。
詐欺に遭わないための対策として、次のようなことが挙げられます。
それぞれの内容を解説します。
詐欺に遭わないための基本的な対策として、身元がはっきりしない相手からの勧誘を断ることが挙げられます。
具体的には、マッチングアプリやSNSで知り合ったばかりの相手や、オンライン上でしばらくやり取りしているものの直接会ったことのない相手からの勧誘は、断りましょう。冷静に考えれば、よく知らない人が本当においしい投資話を教えてくれる訳がありません。そうした相手からの勧誘はすべて詐欺だと疑ってかかることが大切です。
少額であっても入金しないことは、詐欺による2次被害を防ぐために大切です。
興味本位でごく少額だけ入金した場合、そのときは入金した分しか被害はないかもしれません。しかし、入金時に提供した個人情報がほかの詐欺に悪用される可能性があります。
また「試しに少額からスタートしましょう」と勧誘してくるケースにも注意が必要です。「大きな利益が出たので増資したほうが良い」などの誘い文句で追加入金させられ、結局連絡がつかなくなってしまうこともあります。
送られてきたURLを安易にクリックしないことも、対策の1つです。
メールに書かれているURLをそのままクリックするのではなく、自分で公式サイトを検索するよう心がけることで、詐欺に遭うリスクが低くなるでしょう。
よく使うサイトをブックマークしておき、毎回そこからアクセスすることも、詐欺を避けるためには効果的です。
日本人を狙いインターネット経由で勧誘して資金を奪う、海外の詐欺グループの存在が明らかになっています。こうしたグループからの勧誘メールは多くの場合、日本語が不自然です。
機械翻訳したような文章や、見慣れない漢字、大量の誤字脱字などがある場合には、詐欺メールとみて無視しましょう。
それでは、万が一詐欺に遭ってしまったときは、どのように対処すればよいのでしょうか。
主な対処法として、次の4つが挙げられます。
トラストウォレット(Trust Wallet)を使った詐欺では、お金を入金したあとに出金しようとすると、手数料や保証料など追加の入金を求められることがあります。お金を取り戻したいという不安な気持ちから、入金を考えてしまう人もいますが、追加入金の要求には応じないようにしましょう。
追加で支払ったお金が戻ってくることはなく、被害は広がるばかりです。被害を最小限に抑えるために、はっきりと断りましょう。
相手に送金してしまった後でも、振込先の金融機関に相談すれば、救済措置が施される可能性があります。振り込め詐欺救済法に基づく届出ができるかもしれません。上手くいけば、犯人の口座から資金を取り戻せます。
そのためには、被害に遭ったことがわかったらすぐに金融機関に相談することが大切です。犯人が口座からお金を引き出してしまうと、救済措置を受けられません。
振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺などの被害者を救済するための法律です。犯罪利用された口座から被害者への払い戻しの手続きなどを定めています。
犯人とのメッセージ履歴や、犯人から送られてきたURLなど、詐欺の証拠をできる限り記録することも大切です。
詳しい情報を残しておくことで、次に紹介する対処法「公的機関に相談する」をスムーズに進められる可能性があります。
自分ではどのように対処すべきかわからない場合や、冷静な判断が難しいと感じたときは、以下のような公的機関に相談する方法があります。
それぞれの機関の特徴を見ていきましょう。
詐欺に遭ってしまったときは、誰もがアクセスしやすい相談窓口として開設された「消費者ホットライン」に相談すると、解決のための糸口が見つけられるかもしれません。
消費者ホットラインの電話番号は「188」で、電話をかけると最寄りの消費生活相談窓口につながります。
消費生活センターなどでは、自分の身に起こった問題を直接解決してくれるわけではありません。しかし、専門の相談員が、具体的な対処法や取るべき行動についてアドバイスをしてくれます。
もう1つの相談先として挙げられるのが、国民生活センターです。
国民生活センターは、国や全国の消費生活センターなどと連携しており、最寄りの消費生活センターなどにつながらなかった消費者からの相談を受けつけています。
「消費者ホットライン」に電話がつながらない場合、国民生活センターの電話番号がアナウンスされます。焦らず、国民生活センターに連絡してみましょう。
最寄りの警察署に出向き、直接相談する方法もあります。
また、困ったときの相談窓口として、警察相談専用の電話番号「#9110」が用意されています。「#9110」番に電話をかけると、全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。
こうした公的機関に相談するときに、自分でまとめておいた詐欺記録を提示すると、よりスムーズな対処につながります。
トラストウォレット(Trust Wallet)は、優れた操作性などで人気のウォレットです。しかし、それを悪用して仮想通貨(暗号資産)などの資産を騙し取ろうとする詐欺も多く発生しています。
もし勧誘や詐欺に引っかかって入金してしまうと、取り戻すことは容易ではありません。手口や対策法を知り、被害に遭わないよう自分の身を守ることが大切です。
よく知らない相手から投資などの勧誘を受けた時点で詐欺を疑い、毅然と断りましょう。
作成日
:2024.02.09
最終更新
:2024.08.15
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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