作成日
:2021.08.09
2021.08.10 10:44
米商品先物取引委員会(CFTC)は8月6日、3日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが増加
円は対ドルで5万5,190枚の売り越し(ネットショート)であった。ネットポジションは先週比で4,744枚の増加となる。尚、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは21週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス7.8%、売り建玉(円ショート)はマイナス7.9%となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 32,975 | 30,409 | -7.8% |
---|---|---|---|
ショート | 92,909 | 85,599 | -7.9% |
ネット | -59,934 | -55,190 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
32,975 | 30,409 | -7.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
92,909 | 85,599 | -7.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-59,934 | -55,190 | - |
2日に発表された米7月ISM製造業景況感指数が市場予想を下回ったことによる米長期金利の低下や、複数の米連邦準備理事会(FRB)理事による慎重な発言を受けた金融緩和策の長期化観測を受け、週初はドル売り圧力が高まった。また、4日に公表された米7月ADP雇用統計が市場予想を大幅に下回るネガティブサプライズとなったこともドル売りを誘い、週央にかけてドル円は約2ヶ月半ぶりの安値水準となる108円72銭まで下落した。しかしながら、その後は米7月ISM非製造業景況感指数が良好な結果であったことに加え、FRBのクラリダ副議長を始めとする複数の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによるタカ派的発言を受け、ドルは買い戻される展開になった。また、6日には米7月雇用統計が市場予想を上回る力強い結果となったことにより米10年債利回りが急伸した他、米株が堅調に推移したことなどを手掛かりに、ドル円は一時7月27日以来の高値水準となる110円36銭まで上昇して取引を終えた。
ユーロ、ネットポジションが小幅減少
ユーロは対ドルで3万8,007枚の買い越し(ネットロング)となった。ネットポジションは先週比で119枚の減少となる。IMMポジション集計後の6日に米雇用統計の発表を控えていることもあり、欧米の金融政策スタンス格差に伴うユーロのネットポジション縮小の動きは限定的なものであった。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス1.6%、売り建玉(ショート)はマイナス1.9%となった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 202,245 | 199,067 | -1.6% |
---|---|---|---|
ショート | 164,119 | 161,060 | -1.9% |
ネット | 38,126 | 38,007 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
202,245 | 199,067 | -1.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
164,119 | 161,060 | -1.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
38,126 | 38,007 | - |
ユーロ圏7月製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値が市場予想を上回った他、軟調な米経済指標を受けてドル売り圧力が高まったことなどにより、週央にかけて、ユーロドルは週間高値となる1.1901ドルまで買われる展開となった。しかしながら、その後は複数のFOMCメンバーによるタカ派的発言に加え、米雇用統計が良好な結果となり、米早期テーパリング観測の再燃に伴うユーロ売り・ドル買いが進んだ。週末6日に、ユーロドルは一時7月23日以来の安値水準となる1.1754ドルまで急落して取引を終えた。
ポンド、ネットポジションが大幅増加
ポンドは対ドルで86枚の売り越し(ネットショート)となった。ネットポジションは先週比で5,598枚の大幅増加となる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がプラス4.7%、売り建玉(ショート)はマイナス7.8%となった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 41,194 | 43,119 | 4.7% |
---|---|---|---|
ショート | 46,878 | 43,205 | -7.8% |
ネット | -5,684 | -86 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
41,194 | 43,119 | 4.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
46,878 | 43,205 | -7.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-5,684 | -86 | - |
欧州株式が良好な展開となった他、英7月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)の改定値が速報値から上方修正されたことなどを手掛かりに、ポンド買い優勢の展開となった。また、英イングランド(中央銀行)が5日、大規模金融緩和策の縮小する際の新たな指針を公表したことを受け、テーパリングが改めて意識されたこともポンド買いに繋がった模様だ。週央にかけて、ポンドドルは週間高値となる1.3957ドルまで上昇した。しかしながら、週末6日に良好な米雇用統計と米10年債利回りの上昇を受け、ポンド売り・ドル買いが優勢となり、一時7月28日以来の安値水準となる1.3860ドルまで下落して取引を終えた。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となった。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 57,415 | 57,742 | 0.6% |
---|---|---|---|---|
ショート | 96,762 | 99,025 | 2.3% | |
ネット | -39,347 | -41,283 | - | |
CHF | ロング | 18,262 | 16,522 | -9.5% |
ショート | 9,773 | 8,979 | -8.1% | |
ネット | 8,489 | 7,543 | - | |
CAD | ロング | 47,048 | 46,064 | -2.1% |
ショート | 41,674 | 38,604 | -7.4% | |
ネット | 5,374 | 7,460 | - | |
NZD | ロング | 19,505 | 16,959 | -13.1% |
ショート | 18,084 | 17,284 | -4.4% | |
ネット | 1,421 | -325 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
57,415 | 57,742 | 0.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
96,762 | 99,025 | 2.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-39,347 | -41,283 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
18,262 | 16,522 | -9.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
9,773 | 8,979 | -8.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
8,489 | 7,543 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
47,048 | 46,064 | -2.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
41,674 | 38,604 | -7.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
5,374 | 7,460 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
19,505 | 16,959 | -13.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
18,084 | 17,284 | -4.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
1,421 | -325 | - |
release date 2021.08.09
米7月雇用統計は、非農業部門の就業者数と失業率が共に事前の市場予想を上回り、米FRBによるテーパリング開始に向けて雇用環境の改善が進んでいることが示される結果となった。米経済の順調な回復を受け、米10年債利回りは1.3%台まで上昇しており、ドルが幅広く買われている。他方で、2021年のFOMCで投票権を持つメンバーは、ハト派が大多数を占めていると見られていたが、直近では常任メンバー及び各地区連銀総裁の発言は、タカ派とハト派が混在している状況だ。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックからの景気回復という、これまでにない経済・金融環境の中で、政策対応に柔軟性を持たせているように見える。パウエル議長は7月のFOMC後、今後複数の会合で経済情勢の進捗を議論すると言及していた。今回の強い雇用統計を受け、米国と欧州・日本との金融政策スタンスの格差が改めて意識される中、まずは8月26日から28日に開催されるジャクソンホール会議で如何なる発言をするか注目したい。
作成日
:2021.08.09
最終更新
:2021.08.10
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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