作成日
:2021.07.05
2021.07.05 16:01
米商品先物取引委員会(CFTC)は7月2日、6月29日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが約30%急減
円は対ドルで6万9,895枚の売り越し(ネットショート)であった。ネットポジションは先週比で16,033枚の大幅な減少となる。6月16日に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がテーパリング議論の開始を宣言して以降、投機筋によるショートポジションの積み増しが鮮明となっている。尚、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは16週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス19.7%、売り建玉(円ショート)はプラス10.6%となった。円ロングが大幅に減少する一方、ショートが増加したことから、ネットポジションは急減した。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 34,118 | 27,380 | -19.7% |
---|---|---|---|
ショート | 87,980 | 97,275 | 10.6% |
ネット | -53,862 | -69,895 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
34,118 | 27,380 | -19.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
87,980 | 97,275 | 10.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-53,862 | -69,895 | - |
6月28日の週初は、先週末金曜日に発表された米5月個人消費支出(PCEコア・デフレーター)が市場予想を下回ったことによるインフレ懸念の後退や、米10年債利回りの低下などを受け、ドル売りが優勢の展開となった。週央にかけて、ドル円は週間安値となる110円42銭まで下落する場面が見られた。しかしながら、その後は総じて良好な米経済指標や月末・四半期末特有のドル買いに加え、複数の米当局者によるタカ派的発言を手掛かりに、週末にかけて、ドル円は約1年3か月ぶりの高値水準となる111円66銭まで値を伸ばした。但し、市場が注視していた米6月雇用統計を受けて早期金融引き締め観測が後退した他、米3連休を前にしたポジション調整も重なり、ドル円は111円ちょうど近辺まで売られて取引を終えた。
ユーロ、ネットポジションは減少
ユーロは対ドルで8万7,146枚の買い越し(ネットロング)となった。ネットポジションは先週比で1,911枚の減少となる。欧州と米国で金融政策スタンスに格差が生じ始める中、ユーロを積極的に買い進む状況とはなっていない模様だ。尚、2020年8月に20万枚超あったネットロングポジションは、足元では半分以下まで取り崩しが進んでいる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス0.6%、売り建玉(ショート)はプラス2.6%となった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 207,863 | 209,058 | 0.6% |
---|---|---|---|
ショート | 118,806 | 121,912 | 2.6% |
ネット | 89,057 | 87,146 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
207,863 | 209,058 | 0.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
118,806 | 121,912 | 2.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
89,057 | 87,146 | - |
6月28日の週のユーロは、売りに押される展開となった。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が現行の大規模金融緩和策を2022年3月まで維持する方針を示すなど、複数の欧州当局者により、欧州経済の先行きを悲観する発言が繰り返されたことがユーロ売りに繋がった。また、月末のロンドンフィキシングに絡むドル買い圧力が高まった他、欧州で新型コロナウイルス(COVID-19)のデルタ株感染拡大への懸念が広がっていることなどが嫌気された。週末にかけて、ユーロドルは約3か月ぶりの安値水準となる1.1807ドルまで下落する場面が見らえた。
ポンド、ネットポジションが減少
ポンドは対ドルで1万7,723枚の買い越し(ネットロング)となった。ネットポジションは先週比で204枚の減少となる。6月23日と24日に開催された英中銀の金融政策委員会(MPC)で、早期の金融緩和縮小に対する慎重な立場が確認されたことを受け、ユーロと同様にポンドも積極的に買いを入れづらい状況になっている。但し、2020年12月初旬にネットロングに転じて以来、ポンドの買い越しは30週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がプラス0.3%、売り建玉(ショート)はプラス1.1%となった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 51,445 | 51,596 | 0.3% |
---|---|---|---|
ショート | 33,518 | 33,873 | 1.1% |
ネット | 17,927 | 17,723 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
51,445 | 51,596 | 0.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
33,518 | 33,873 | 1.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,927 | 17,723 | - |
6月28日の週のポンドは、ユーロ同様に売りに押される展開となった。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁が7月1日、インフレ上昇は一時的であり、過剰反応すべきでないと発言したこともポンド売りを誘った。また、英国では新型コロナウイルスの感染が再拡大し、景気回復が遅れるとの懸念が強まっていることがポンドの重しとなっている。7月2日の週末にかけて、ポンドドルは約2か月半ぶりの安値水準となる1.3731ドルまで下落した。もっとも、米雇用統計後に早期の金融緩和縮小観測が和らいだことを受け、1.3832ドルまで値を戻して取引を終えた。
カナダドル以外でネットポジションが減少
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、カナダドルを除き、ネットポジションが減少した。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 56,133 | 48,824 | -13.0% |
---|---|---|---|---|
ショート | 73,708 | 66,624 | -9.6% | |
ネット | -17,575 | -17,800 | - | |
CHF | ロング | 20,980 | 18,941 | -9.7% |
ショート | 7,428 | 7,876 | 6.0% | |
ネット | 13,552 | 11,065 | - | |
CAD | ロング | 69,074 | 68,301 | -1.1% |
ショート | 25,849 | 22,500 | -13.0% | |
ネット | 43,225 | 45,801 | - | |
NZD | ロング | 19,171 | 19,914 | 3.9% |
ショート | 15,885 | 16,790 | 5.7% | |
ネット | 3,286 | 3,124 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
56,133 | 48,824 | -13.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
73,708 | 66,624 | -9.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-17,575 | -17,800 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
20,980 | 18,941 | -9.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
7,428 | 7,876 | 6.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
13,552 | 11,065 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
69,074 | 68,301 | -1.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
25,849 | 22,500 | -13.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
43,225 | 45,801 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
19,171 | 19,914 | 3.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
15,885 | 16,790 | 5.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
3,286 | 3,124 | - |
release date 2021.07.05
7月2日に発表された米6月雇用統計は、FRBによるテーパリング議論を加速させるほど強い結果にならなかった。非農業部門雇用者数は85万人増加したものの、失業率が前月から悪化している。依然として約670万人の雇用不足が生じており、仮に6月のペースで雇用者数が増加したとしても、新型コロナウイルス危機以前の水準まで8か月を要することになる。また、7月1日に発表された米失業保険統計で6月19日終了週の失業保険継続受給者が増加した他、米6月ISM製造業景況感指数の雇用指数は7か月ぶりに縮小圏に転じており、労働市場の供給制約が解消されていない状況だ。もっとも、労働市場の回復を鈍らせる要因として批判が挙がっていた失業給付の特別加算の打ち切りが進むと共に、学校が再開することにより、労働市場が更に改善する可能性がある。FRBのパウエル議長が国内の雇用は今秋に力強い回復が見られるとの見通しを示す中、今後も雇用関連の経済指標の良し悪しに市場の注目が集まりそうだ。
作成日
:2021.07.05
最終更新
:2021.07.05
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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