作成日
:2021.06.28
2021.06.28 15:07
米商品先物取引委員会(CFTC)は25日、22日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが約15%減
円は対ドルで5万3,862枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比ではネットポジションが7,012枚の減少となる。先週に続き、ネットポジションが減少する展開となっており、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ時期の前倒しが示唆されたことを受け、投機筋はショートポジションを再び積み増し始めた模様だ。また、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは15週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比プラス48.5%、売り建玉(円ショート)はプラス26.0%となった。円ロング・ショート共に大きく増加したが、円ショートの方がポジション数が多いことから、ネットポジションは減少した。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 22,974 | 34,118 | 48.5% |
---|---|---|---|
ショート | 69,824 | 87,980 | 26.0% |
ネット | -46,850 | -53,862 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
22,974 | 34,118 | 48.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
69,824 | 87,980 | 26.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-46,850 | -53,862 | - |
米利上げ前倒し観測を受け、21日の日経平均株価が大幅下落したことによるリスク回避の円買いに加え、米10年債利回りが急低下したことなどにより、週初早々にドル円は週間安値となる109円71銭まで下落した。その後は、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長による議会証言を受け、早期利上げに対する過度な警戒感が和らいだことなどにより、株式市場が持ち直した。また、2021年のFOMCで投票権を持つデイリーサンフランシスコ地区連銀総裁を始め、多くの米当局者がタカ派的な発言をした他、複数の米経済指標が堅調なものとなった。これらがドル買い要因となり、24日にドル円は約1年3か月ぶりの高値水準となる111円12銭まで急伸した。週末に25日には、注目度の高い米5月個人消費支出(PCEコア・デフレーター)が市場予想を下回ったものの、ドル円は底堅い展開となり、110円80銭近辺で取引を終えている。
ユーロ、ネットポジションは約25%急減
ユーロは対ドルで8万9,057枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比ではネットポジションは29,129枚の大幅な減少となる。しかしながら、依然として主要7通貨の中で最大のネットロングポジションを形成している。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス1.4%、売り建玉(ショート)はプラス28.3%となり、ショートポジションの大幅増がネットポジションの急減に繋がった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 210,816 | 207,863 | -1.4% |
---|---|---|---|
ショート | 92,630 | 118,806 | 28.3% |
ネット | 118,186 | 89,057 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
210,816 | 207,863 | -1.4% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
92,630 | 118,806 | 28.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
118,186 | 89,057 | - |
米国の早期利上げ観測を受け、21日の週初にユーロドルは週間安値となる1.1847ドルまで下落した。しかしながら、その後は、FRBのパウエル議長によるハト派的な発言を受けたドル売り圧力に加え、良好な欧州経済指標や、ハンガリー中銀とチェコ中銀が利上げサイクル入りしたことなどを手掛かりに、ユーロ買いドル売りが優勢の展開となった。週末25日に、ユーロドルは約1週間ぶりの高値水準となる1.1975ドルまで上昇する場面が見られた。
ポンド、ネットポジションが約44%急減
ポンドは対ドルで1万7,927枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比ではネットポジションは14,243枚の大幅な減少となる。但し、2020年12月初旬にネットロングに転じて以来、ポンドの買い越しは29週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がマイナス6.8%、売り建玉(ショート)はプラス45.5%となった。ショートポジションが大幅に増加したことが、ネットポジションの急減に繋がった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 55,203 | 51,445 | -6.8% |
---|---|---|---|
ショート | 23,033 | 33,518 | 45.5% |
ネット | 32,170 | 17,927 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
55,203 | 51,445 | -6.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
23,033 | 33,518 | 45.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
32,170 | 17,927 | - |
FRBのパウエル議長によるハト派的な発言を受け、早期の米利上げ観測が後退した他、6月英製造業購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を上回ったことなどを受け、週初21日から3日続伸し、23日には節目の1.4000ドルを突破する場面が見られた。しかしながら、23、24日の2日間の日程で開催された英中銀の金融政策委員会(MPC)にて、早期の金融緩和縮小に対する慎重な立場が確認されたことにより、ポンド売り圧力が高まった。また、英国では新型コロナウイルス(COVID-19)のデルタ変異株が蔓延しており、行動制限の追加緩和が延期されたことも、ポンドの重しとなっている模様だ。週末25日にかけて、ポンドドルは売り優勢の展開となり、1.3884ドルで取引を終えている。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となっているが、円と豪ドルのみ、引き続きネットショートポジションに傾いている。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 40,139 | 56,133 | 39.8% |
---|---|---|---|---|
ショート | 58,019 | 73,708 | 27.0% | |
ネット | -17,880 | -17,575 | - | |
CHF | ロング | 14,875 | 20,980 | 41.0% |
ショート | 5,488 | 7,428 | 35.3% | |
ネット | 9,387 | 13,552 | - | |
CAD | ロング | 73,071 | 69,074 | -5.5% |
ショート | 28,817 | 25,849 | -10.3% | |
ネット | 44,254 | 43,225 | - | |
NZD | ロング | 18,466 | 19,171 | 3.8% |
ショート | 15,201 | 15,885 | 4.5% | |
ネット | 3,265 | 3,286 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
40,139 | 56,133 | 39.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
58,019 | 73,708 | 27.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-17,880 | -17,575 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
14,875 | 20,980 | 41.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
5,488 | 7,428 | 35.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
9,387 | 13,552 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
73,071 | 69,074 | -5.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
28,817 | 25,849 | -10.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
44,254 | 43,225 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
18,466 | 19,171 | 3.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
15,201 | 15,885 | 4.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
3,265 | 3,286 | - |
release date 2021.06.28
英イングランド銀行(中央銀行)はMPCにて、現行の大規模金融緩和政策を維持する決定を下した。足元では新型コロナウイルスの変異株であるデルタが猛威を振るい、新規感染者数が再拡大している他、ブレグジットを巡る英国と欧州の対立が解消されていないため、早期の金融緩和縮小に対して慎重な姿勢を維持している。また、英5月消費者物価指数(CPI)が前年同期比2.1%上昇し、政策目標とする2%を上回る中、イングランド銀行はCPIの伸び率予測を5月時点の予測から上方修正し、3%を上回る可能性があるとした。しかしながら、インフレ圧力は一時的とのスタンスを堅持している。他方で、米国ではFRBのパウエル議長が16日、テーパリング議論の開始を宣言すると共に、利上げの前倒しを示唆した。これにより、米国と英国の金融政策スタンスに格差が生じ始めている状況だ。IMMポジションに関しては、22日集計時点で既にポンドのネットポジションが急減しているが、今後もこの流れが続くのか注目したい。
作成日
:2021.06.28
最終更新
:2021.06.28
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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