作成日
:2021.06.14
2021.06.18 12:20
米商品先物取引委員会(CFTC)は11日、8日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが約20%急増
円は対ドルで3万7,314枚の売り越し(ネットショート)であった。売り越し幅は縮小し、ネットポジションは先週比では9,801枚の大幅な増加となった。IMMポジション集計後の10日に、米国で重要な経済指標の発表を控えていることから、ポジション調整の動きが出た模様だ。また、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは13週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス7.5%、売り建玉(円ショート)はマイナス15.7%となった。円ショートが大きく減少したことが、ネットポジションの急増に繋がった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 29,462 | 27,248 | -7.5% |
---|---|---|---|
ショート | 76,577 | 64,562 | -15.7% |
ネット | -47,115 | -37,314 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
29,462 | 27,248 | -7.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
76,577 | 64,562 | -15.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-47,115 | -37,314 | - |
4日に発表された米雇用統計が冴えない結果となり、米国でテーパリング観測が後退したことを受け、週初は円買い・ドル売りが優勢となった。7日にドル円は、5月27日以来の安値水準となる109円18銭まで下落する場面が見られた。その後は、米5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る大幅な伸びを示した他、一時1.43%と3ヶ月ぶりの低水準で推移していた米10年債利回りが反発したことなどが材料視され、週末11日にかけてドル円は値を戻す展開となった。但し、来週15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催を控えていることから、円売り・ドル買いも限定的なものとなり、109円66銭台で取引を終えている。
ユーロ、8週ぶりにネットポジションが減少
ユーロは対ドルで10万7,213枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では2,109枚の減少となる。これまで、ネットポジションは増加基調にあったが、8週ぶりに減少に転じた。しかしながら、依然として主要7通貨の中で最大のネットロングポジションを形成している。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス2.2%、売り建玉(ショート)はマイナス2.5%となり、ロング・ショートポジション共に減少した。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 237,360 | 232,103 | -2.2% |
---|---|---|---|
ショート | 128,038 | 124,890 | -2.5% |
ネット | 109,322 | 107,213 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
237,360 | 232,103 | -2.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
128,038 | 124,890 | -2.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
109,322 | 107,213 | - |
新型コロナウイルス(COVID-19)対策の進展に伴う景気回復期待や、軟調な米雇用統計を受けたドル売りを背景に、ユーロは週半ばにかけて上昇する展開となった。9日にユーロドルは、週間高値となる1.2219ドルまで買われた。しかしながら、その後は欧州中央銀行(ECB)理事会で現行の金融政策を維持する決定が下された他、ECBのラガルド総裁がパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)終了議論は時期尚早と発言したことを受け、早期のテーパリング観測後退によるユーロ売りが強まった。週末11日に、ユーロドルは約1ヶ月ぶり安値水準となる1.2092ドルまで下落した。
ポンド、ネットポジションが約15%増
ポンドは対ドルで2万7,714枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では3,589枚の増加となる。尚、2020年12月初旬にネットロングに転じて以来、ポンドの買い越しは27週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がマイナス7.7%、売り建玉(ショート)はマイナス21.3%となった。ショートポジションが大幅に減少したことから、ネットポジションの増加に繋がった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 64,204 | 59,238 | -7.7% |
---|---|---|---|
ショート | 40,079 | 31,524 | -21.3% |
ネット | 24,125 | 27,714 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
64,204 | 59,238 | -7.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
40,079 | 31,524 | -21.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
24,125 | 27,714 | - |
7日の週のポンドドルは、方向感に乏しい展開となった。英イングランド銀行(中央銀行)の政策委員でチーフエコノミストを務めるハルデーン氏が9日、強い物価圧力を背景に大規模金融緩和策を縮小する時期に来ているかもしれないとの認識を示した。これを受け、一時ポンドは対ドルで買われる場面が見られた。しかしながら、その買いも長続きせず、英領北アイルランドの通商問題を巡って英国と欧州連合(EU)の対立が投資家心理の重しになった。また、英国で新型コロナウイルスの1日あたり新規感染者数が足元で再び増加傾向にあり、景気正常化への期待が後退している。これらのネガティブ材料を受け、10日にポンドドルは約1か月ぶりの安値水準となる1.4073ドルまで売られた。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となった。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 55,385 | 48,150 | -13.1% |
---|---|---|---|---|
ショート | 57,310 | 57,587 | 0.5% | |
ネット | -1,925 | -9,437 | - | |
CHF | ロング | 13,940 | 12,649 | -9.3% |
ショート | 13,616 | 11,573 | -15.0% | |
ネット | 324 | 1,076 | - | |
CAD | ロング | 89,467 | 80,989 | -9.5% |
ショート | 40,695 | 35,708 | -12.3% | |
ネット | 48,772 | 45,281 | - | |
NZD | ロング | 24,684 | 21,962 | -11.0% |
ショート | 18,757 | 16,456 | -12.3% | |
ネット | 5,927 | 5,506 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
55,385 | 48,150 | -13.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
57,310 | 57,587 | 0.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-1,925 | -9,437 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
13,940 | 12,649 | -9.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
13,616 | 11,573 | -15.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
324 | 1,076 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
89,467 | 80,989 | -9.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
40,695 | 35,708 | -12.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
48,772 | 45,281 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
24,684 | 21,962 | -11.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
18,757 | 16,456 | -12.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
5,927 | 5,506 | - |
release date 2021.06.14
新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れが、日本と欧米主要各国との景気回復の進展に差を生じさせている。ワクチン後進国である日本では、8日に発表された1~3月期実質国内総生産(GDP、改定値)は、前期比年率3.9%減となった。また、4~6月期もマイナス成長を見込む市場参加者が多く、日本経済は低迷が続く見通しだ。一方、ワクチン接種の普及が進む米国は、1~3月期が6.4%増、4-6月期は9.4%増と成長が加速する見込みである。また、当初ワクチン接種で出遅れていた欧州では、8日に発表された1~3月期GDPが1.3%減であったものの、市場予測に基づく4~6月期は6.1%増と、日本に先行して景気回復が進む見通しだ。欧米では既に、テーパリング議論の開始時期が話題となる一方、日本では早期に大規模金融緩和策を変更する見方は少ない。もっとも、東京2020オリンピックの開催を約1か月後に控え、足元で日本もワクチン接種を急いでいる状況だ。円は主要7通貨の中で唯一大幅なショートに傾いているが、ワクチン接種の進捗を踏まえ、投機筋の見方に変化が見られるか注目したい。
作成日
:2021.06.14
最終更新
:2021.06.18
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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