作成日
:2021.06.08
2022.04.20 12:27
中南米の小国であるエルサルバドル共和国【以下、エルサルバドルと称す】のナジブ・ブケレ大統領は、ビットコイン(Bitcoin)を国の法定通貨として定める法案が近日中に議会に提出される見通しであることを明らかにした。
6月5日、米マイアミで開催された「Bitcoin 2021 Conference」でブケレ大統領は、ビットコインを法定通貨として採用する方針だと発表し、それが金融包摂を拡大する可能性があるとの考えを示した。ブケレ大統領によると、エルサルバドルにおける人口の70%が銀行口座を持たず、非公式経済(Informal Economy)に組み込まれており、ビットコインを採用して金融包摂を拡大することが同国経済を成長させる手段になり得るという。また、ブケレ大統領はビットコインの活用が送金コストの削減につながると指摘し、具体的に100万人以上の低所得世帯が受け取る金額が年間数十億ドル増加すると言及している。
今年3月にエルサルバドルでモバイル決済アプリをローンチしたStrikeは、この法案を歓迎しており、ビットコイン活用に向けて引き続き協力していくと述べた。加えて、Strikeの創設者兼CEOであるジャック・マラーズ氏は、法定通貨としてネイティブな仮想通貨(暗号資産)を利用することで、エルサルバドルは世界で最も安全かつ効率的でグローバルに統合されたオープンな支払いネットワークを提供できるとコメントした。
これに関して仮想通貨関連企業Avantiの創設者兼CEOであるケイトリン・ロング氏は、米国会計基準(USGAAP)や国際会計基準(IFRS)の下で、ビットコインが現金として処理できるようになることで、会計上の問題が解消されると主張しているようだ。
一方、日本の仮想通貨関連企業であるbitFlyer Blockchainで代表取締役を務める加納裕三氏は、エルサルバドルがビットコインを法定通貨とすることで、同仮想通貨が外為法の外国通貨に該当する可能性が出てくるとの懸念を表明している。先月17日、ビットコイン価格は過去1ヶ月間で約30%減となる水準にまで下落するなど、ボラティリティが拡大してきているが、法定通貨としての役割を果たすことができるのか、今後もエルサルバドルでの展開に注目していきたい。
release date 2021.06.08
出典元:
ニュースコメント
インフレの深刻化で中南米地域の仮想通貨市場が拡大
中南米地域では法定通貨のインフレ問題が深刻化しており、仮想通貨の需要が高まっている状況だ。ハイパーインフレに見舞われるベネズエラでは独自仮想通貨のペトロ(Petro)が導入され、ニコラス・マドゥロ大統領がペトロでの国際線フライト燃料購入を義務化する方針を示している。一方で、国内資金はイーサリアム(Ethereum)やダッシュ(Dash)を始めとする主要な仮想通貨へと流れているようだ。同じくアルゼンチンやブラジル、メキシコ、コロンビアなどでもビットコインが米ドルや金に代わる資産として利用されており、同仮想通貨のトランザクションや取引量が増加しているという。デジタル人民元の発行に向けて中国人民銀行が規制強化を実施するなど、世界では中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)を受け入れるための準備が進められているが、これら国家はどのような対応を見せるのか、今後もその動向を見守っていきたい。
作成日
:2021.06.08
最終更新
:2022.04.20
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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