作成日
:2021.05.17
2022.04.20 12:27
大手SNSのFacebook, Inc.【以下、Facebookと称す】が主導する仮想通貨(暗号資産)ディエム(Diem)の運営団体であるDiem Association【以下、ディエム協会と称す】は今月12日、米国にて米ドルに連動するステーブルコインを発行すべく、米国カリフォルニア州の公認銀行であるSilvergate Bank【以下、シルバーゲートと称す】と提携したことを発表した。
ディエム協会傘下のディエム・ネットワーク(Diem Networks) USが、米金融犯罪捜査網(US Financial Crimes Enforcement Network, FinCEN)にマネーサービス事業者として登録を行い、ブロックチェーン技術を基にした即時決済システムであるディエム・ペイメント・ネットワーク(Diem Payment Network, DPN)を運営していく方針だ。一方、シルバーゲート銀行は米ドルに連動するディエムドル(Diem Dollar)の発行、及び裏付けとなる準備金の管理を行うという。同行のCEOを務めるAlan Lane氏は、米ドルを裏付けとするステーブルコインが既存の決済システムを変革することを確信していると言及している。また、安心・安全な送金手法を提供すべく、ディエムのテクノロジーを活用し、規制を遵守した決済システムの構築にコミットしているという。
但し、ディエム協会はディエムドルをパイロット版としてローンチするのか、もしくはすぐに公共の場で利用できるようにするのかといった具体的な発行計画を明らかにしていない。また、スイスに拠点を置くディエム協会は、主な活動拠点を米国へ移した他、スイス金融市場監督局(Financial Market Supervisory Authority, FINMA)に行っていた決済システムライセンスの申請を取り下げたという。
ディエムドルの発行時期が明らかになっていないが、引き続きディエム協会とシルバーゲート銀行の動向を見守りたい。
release date 2021.05.17
出典元:
ニュースコメント
ディエムの前に立ちはだかる規制当局
ディエム協会による今回の発表は、Facebookがリブラをディエムに変更した他、通貨バスケットを裏付けとするステーブルコインから、米ドルに連動するディエムドル発行へ修正したことに続く大幅なスキーム変更となる。グローバル各国当局からの強い批判を受け、Facebookは繰り返しプロジェクトの修正を余儀なくされていた。今回、米国でのディエムドルの発行、及びディエム協会の本部機能を米国へ移転したことで、実体に即した運営体制を構築する意図がうかがえる。しかしながら、米国では4月に米証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission, SEC)の委員長に就任したGary Gensler氏が、仮想通貨市場の規制強化に意欲を示しており、仮想通貨を取り巻く市場環境が大きく変化する可能性がある。他方で、かつてリブラ協会に加盟していた企業は、独自に仮想通貨関連ソリューションの提供を試みている。例えば、VISAがUSDコインによる決済を試験的に導入する他、直近では、ペイパルが独自ステーブルコインの発行を検討していることが明らかになっている。ディエム協会が米国でディエムドルの発行を目指す中、米当局の対応に注目したい。
作成日
:2021.05.17
最終更新
:2022.04.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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