作成日
:2021.04.22
2022.04.20 12:27
英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】の長官を務めるNikhil Rathi氏は、フィンテックカンファレンスであるFinTech Weekでの公演にて、認可間もない金融サービス会社を注意深く監督すると共に、規制サポートサービスを提供するレギュラトリーナーサリー(Regulatory Nursery)を設置する意向を明らかにした。
Rathi氏は、当局よりステータスを承認された企業が、長期間のトラックレコードを有する企業と同様に取り扱われている現状を踏まえ、レギュラトリーナーサリーの設置を決定したという。これにより、認可間もない企業と当局が緊密にコンタクトを図り、正しい方向へ企業経営の舵を切るために指導・サポートできるようになると言及している。また、レギュラトリーサンドボックス(Regulatory Sandbox)に関し、現在の四半期ベースの申請スキームを通年対応できる体制を整えると共に、革新的な製品の開発を試みる企業をサポートする広告サービスの改善も図る方針だという。更に、消費者に資する金融イノベーションのサポートを目的に現在60以上の組織が参加しているグローバル金融イノベーションネットワーク(Global Financial Innovation Network, GFIN)を通じ、FCAは複数国で革新的な製品の実証実験を行う場を提供し、スタートアップ企業の市場参入及び成長拡大を支援するとのことだ。
その他、FCAはシティ・オブ・ロンドン自治体(City of London Corporation)と提携し、サステナビリティに重点を置いたデジタルサンドボックス(Digital Sandbox)プログラムの拡充も図っている。FCAは同プログラムを推進すべく、サステナブルファイナンス分野の政策立案担当として、英資産運用会社であるLegal and General Investment Managementでスチュワードシップ部門のディレクターを務めていたSacha Sadan氏を任命した。
一方、Rathi氏はフィンテック業界で高まっているリスクを注視しており、消費者と投資会社を結び付けるオンライン検索会社やソーシャルメディア企業には、大きな責任があると指摘している。FCAが認可間もない企業の監督及びサポートを強化するレギュラトリーナーサリーを設置することで、数多くの画期的なフィンテックソリューションが生み出されることに期待したい。
release date 2021.04.22
出典元:
ニュースコメント
フィンテックを成長の柱に据える英国
英国は金融市場の寡占化が進んでいたことを憂慮し、金融立国としての競争力強化や新たなイノベーションの創出を促進すべく、国策としてフィンテック企業の成長拡大を後押ししている。具体的な取り組みとしては、最低資本金の引き下げや条件付き仮認可制度などを通じて金融市場への新規参入を奨励している他、銀行の顧客データにアクセスできるオープンAPIの活用などを推進している。足元ではこれらの取り組みが奏功しており、英国発のフィンテック企業やチャレンジャーバンク(銀行業務ライセンスを取得し、既存銀行と同様のサービスを全てモバイルアプリ上で提供する企業)が、同国のみならずグローバル市場でプレゼンスを大きく拡大している状況だ。例えば、欧州でサービスを拡充するレボリュートは、英国で最も価値の高いフィンテック企業と評されるまでに急成長を遂げている。また、ソーシャルトレーディング・プロバイダーのeToroは上場計画が浮上しており、その企業価値は100億ドルと見積もられている。その他、三井住友銀行がOakNorthの株式取得を発表したように、既存の金融機関がフィンテックソリューションの取り込みを図る事例も散見されている。英国が国策としてフィンテック企業をサポートする中、同国発のスタートアップ企業が如何なるソリューションを講じるか今後も注目したい。
作成日
:2021.04.22
最終更新
:2022.04.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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