Select Language

海外FXブローカーのソーシャルトレーディングサービスを考察

海外FXブローカーのソーシャルトレーディングサービスを考察

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.04.12 16:38
海外FXブローカーのソーシャルトレーディングサービスを考察

update 2022.04.12 16:38

規制整備やコンプライアンス遵守の必要性

ソーシャルトレーディング及びコピートレーディングは、一部の海外FXブローカーが戦略の見直しを図っている他、投資詐欺も発生していることから、より透明性の高い市場形成に向けた規制整備に加え、各企業によるコンプライアンスの徹底が求められている状況だ。[1]

過去10年にわたり人気を博したソーシャルトレーディングは、コピートレード提供者が運用益に応じた手数料を徴収できる他、多くのリテールFXブローカーにとって、投資初心者を惹きつけるためのツールとして見なされてきた。しかしながら、今日では個人投資家は自己啓発し、投資の世界に対する理解を深めており、ソーシャルトレーディングは過去の産物になりつつあるという。

2000年代初頭のFX市場において、コピートレーディングは機関投資家を対象に、優れた投資戦略をコピーするためのサービスであったが、ここ数年で個人投資家向けのソリューションとして市場が拡大してきたという。同サービスは、コピートレード提供者が経験豊富なトレーダーであるか否かに関わらず、取引で利益を上げることで報酬を得られる仕組みとなっていることから、SNSのようにフォロワー数を増やして収益を拡大させようとするインセンティブが働く。ある経営幹部は、非常にシンプルな仕組みを採用するコピートレーディングは、コピートレード提供者のスキルや投資姿勢、投資戦略の立案プロセスなどを把握することができず、低リスクの取引サービスとは言えないとして警鐘を鳴らしている。

ソーシャルトレーディング分野における海外FXブローカー動向に目を転じると、米国の大手海外FXブローカーであるOANDAは、独自開発したソーシャルトレーディングプラットフォームであるfxUnityを5年以上前にリリースしたが、広く普及させることに失敗している。その後、ソーシャルトレーディングサービスを提供するCurrenseeを買収したものの、すぐにサービスを停止している。一方、OANDAはTradeStation傘下であるIBFXのFX事業を取得し、OANDAの独自プラットフォームであるfxTradeにIBFXの顧客を引き継いでいる。OANDAはソーシャルトレーディングプラットフォーム上において顧客獲得は進まなかったが、高スペックの取引環境と独自プラットフォームの利用を好み、自分自身で投資意思決定を下すトレーダーのオンボーディングは成功している模様だ。多くのソーシャルトレーディングプラットフォームは過去の産物となる中、複数の企業が商品ラインナップから同商品を削除している。例えば、英国・ロンドンを拠点とする海外FXブローカーであるFxPro(エフエックスプロ)が、2017年にコピートレードシステムのSuperTraderの提供を停止している。また、シンガポールを拠点とするフィンテック企業のTradesocioは、ソーシャルネットワーク上で様々なサービスを展開していたが、3年の間にCEOと創業者、及び主要スタッフが社を去っている。

最も権威のあるノンバンクの金融市場規制当局として知られる英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】は、取引情報を公開してコピートレードを促すことで報酬を得るトレーダーに対し、アセットマネジメントライセンスの取得と投資マネージャーとして規制されることを求めている。ポストソーシャルトレーディング時代の今日、厳格な規制を敷く英国は、世界最高クラスのビジネス環境を整備しており、30年以上の歴史を誇るFX・CFDブローカーの多くが、自社で取引システムを開発すると共に、ロイヤルティの高い顧客基盤を構築しているという。

一方、プロトレーダーもしくはウェルスマネージャーでもなく、発展途上国を拠点とする多くのアマチュアトレーダーが、Bブック取引(顧客の注文を市場へ流すのではなく、FXブローカー内で取引を相殺する方式)を採用する海外FXブローカーが提供するソーシャルトレーディングプラットフォーム上で、運用益に応じた手数料を徴収している。ソーシャルトレーディングやコピートレーディングを提供するこれら個人投資家が、顧客やブローカーと利害相反となるばかりか、ブローカーとソーシャルトレーディングプロバイダー、及びこれらのサービスを金融アドバイスと見なして規制するか否かによって、規制当局間の利害も対立しているという。欧州を拠点とする法律事務所と監査役は、規制関連の討論会において、ソーシャルトレーディングやコピートレーディングを提供する個人の内、約80%はトレーダーではなく、他の一般投資家がコピートレードすることにより収益を上げていると結論付けている。但し、第二次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive Ⅱ, MiFIDⅡ)において、ソーシャルトレーディングに関連した規定は設けられていない他、新興国では同サービスに関連した金融アドバイザリーライセンスも存在しないため、無資格のトレーダーも規制の網をくぐり抜けられる状況だ。

2017年5月、米国では2waytradingを運営していたソーシャルトレーディング関連の詐欺師であるMohamud Abdi Ahmed氏が処罰されている。あるメディアの調査によると、Bブック取引を採用する中小規模のリテールブローカーの多くは、マレーシアやベトナム、インドネシアといった東南アジアやインドより、ソーシャルトレーディングを提供する人材を集めているという。インドでは、Anubhav Mittal氏と同氏が運営していた詐欺会社のCEOを務めていたSridhar氏、テクニカルヘッドのMahesh氏が共謀し、socialtrade.bizというポータルサイトを通じ、70万人ほどの投資家に370億インド・ルピー(約57万ドル)規模のコピートレードを行わせていた。投資家は付与されたウェブリンクをクリックすることで、6ルピーの収益が発生し、その内5ルピーが投資家に分配され、投資額を増やすことでより多くのリンクが付与される他、新たな投資家を呼び込むことでボーナスが支給されるポンジ・スキーム(ネズミ講に該当する詐欺)に加担していたことになる。同社が収益を上げていないことが判明したことを受け、地元警察はMittal氏らを逮捕したが、同スキームは償還請求がないものだ。また、規制市場の信頼の置けるブローカーであったとしても、ソーシャルトレーディングを提供するトレーダーが同様の手法を用いることもあるという。

ソーシャルトレーディング分野においては、一部の海外FXブローカーが戦略の見直しを図る中、投資詐欺も発生していることから、グローバルベースで規制が強化され、より安心・安全な取引環境が構築されることに期待したい。

release date 2021.02.22

出典元:

ニュースコメント

ソーシャルトレーディングサービスを強化する海外FXブローカーも散見

一部の海外FXブローカーが、ソーシャルトレーディングサービスの提供に向けた戦略の練り直しを図っている。一方、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックをきっかけに新規投資家が急増する中、これら投資家を囲い込むべく、同サービスを強化するブローカーも散見されている状況だ。例えば、最大レバレッジ3,000倍の取引が可能なFBSは、非常に使い勝手の良いコピートレーディングアプリとして定評のあるFBS CopyTradeにカードスキャナー機能を搭載し、利便性の向上に向けた取り組みを推進している。また、AvaTradeが昨年11月に新たなソーシャルトレーディングプラットフォームをリリースした。更に、ATFXがATFX TeamUpと呼ばれるソーシャルトレーディングアプリをリリースした他、ETX CapitalがPelicanと提携し、ホワイトレーベル形式のソーシャルトレーディングサービスの提供を試みている。海外FXブローカー間でソーシャルトレーディング分野における戦略の違いが見られる中、各企業の業績及び顧客獲得動向において明暗が現れるか注目したい。


Date

作成日

2021.02.22

Update

最終更新

2022.04.12

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

Bybit P2P利用で銀行口座凍結・詐欺容疑者に?海外FXユーザーが知るべき巻き込まれリスクとは

Bybit P2Pを利用したユーザーが銀行口座凍結されたことに加え、詐欺容疑者として取り調べを受けたというSNS投稿が話題になっています。本記事では、話題となった投稿の内容や、海外FXユーザーがP2P取引の利用を避けるべき理由などを解説します。
update2025.11.12 19:00

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30

Funded7で出金が認められない事例が増加?ルールの不透明さが原因か

Funded7で出金拒否に関する投稿がSNS上で増加しており、利用者の間で不安が広がっています。「利益が取り消された」「短時間取引が理由で無効になった」などの報告が投稿されています。当記事では出金拒否の原因を整理し、他のプロップファームとFunded7のルールを比較します。
update2025.11.21 19:00

Exnessの乗り換え先としてXSはアリ?スペックを比較

取引環境の良さから玄人にも人気のExnessですが、最近は出金トラブルなどが発生しており、今後の取引環境に不安を抱くユーザーも増えています。本記事では、有力な乗り換え先であるXS.comと取引環境・条件を比較し、乗り換え先として相応しいかどうかを検討します。
update2025.11.20 19:00

Peska(ペスカ)は本当に安全?評判は悪くないが入出金リスクに注意

PeskaはFX業者とのコラボキャンペーンなどをきっかけに、急速にユーザーを増やしているオンラインウォレットです。しかし、新興サービスのため利用すべきか迷うという人も少なくありません。この記事ではPeskaの安全性や評判、オンラインウォレット業界が抱えるリスクなどを説明します。
update2025.09.29 19:30

XMTradingの入出金で銀行口座凍結?海外FX禁止の銀行に注意

SNS上では「XMTradingの出金で銀行口座が凍結された」とする投稿が一部で見受けられます。銀行によっては海外FXとの取引を禁止しているため注意が必要です。本記事では凍結リスクが高い銀行や仮想通貨送金の注意点を説明します。
update2025.09.03 19:00

Money Charger(マネチャ)情報流出で問われるキャッシュバックサイトの運営体制と安全性

Money Chargerは2025年10月25日、ユーザーの個人情報が外部に流出したことを公表しました。キャッシュバックサイトはうまく活用すれば取引コストを抑えられる一方で、個人情報を扱う性質上、安全管理体制が極めて重要です。本記事では、安全性や透明性の観点から主要なキャッシュバックサイトを比較します。
update2025.11.17 19:00

Vantage Tradingが入出金額の上限を変更、100万円以上の出金は自動分割

海外FX業者のVantage Tradingが、銀行振込の入出金額の上限を変更しました。今後は銀行振込で一度に出金できる額が100万円に制限されます。本記事では、変更された条件や高額送金時の注意点などを説明します。
update2025.11.11 19:00

Bitgetが代替手段に?Bybitが日本撤退で日本ユーザーの新規登録禁止

Bybitが日本ユーザーの新規登録停止を発表しました。Bybitの代替取引所としてはBitgetが挙げられ、Bybitと遜色ないサービスを利用できます。本記事では、Bitgetの特徴や海外取引所への規制動向などを解説します。
update2025.11.25 19:00
promotion promotion

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル
close
promotion
今すぐ参加する

次回から表示しない