作成日
:2021.01.25
2021.08.31 15:31
欧州委員会(European Commission)【以下、ECと称す】は、市場参加者のロビー活動を受け、欧州債券市場における統合テープ(Consolidated Tape)を構築する計画を推進する方針だ。
ECは第二次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive Ⅱ)【以下、MiFIDⅡと称す】と、金融商品市場規則(Markets in Financial Instruments Regulation, MiFIR)のレビューを実施した後、債券のプライマリー及びセカンダリー市場の統合テープを構築する計画だ。
統合テープは大陸欧州の債券取引に関する詳細な情報を含み、より効率的なプライシングの活用を通じてビジネスの活性化に寄与するという。しかしながら、現状では統合テープの構築を求めるMiFIDⅡが適切に運用されていない状況だ。ECは当初、社債市場における統合テープの構築を目指すと共に、多岐にわたるポストトレードシステムや、データソースから提供される取引情報を一元化する集中型データベースの構築を模索している。同委員会によると、統合テープの構築を通じ、透明性の高い規制プラットフォーム上で取引を行うことで、板情報の機能改善やユーロ建て証券取引市場の魅力向上に繋げることができるという。
欧州市場の分断は、数多くの取引施設やレポーティング、決済、清算システムを生み出している。また限定的な規制環境下においては、統合テープの構築はコストがかかる一方で、商業ベースの多大なベネフィットを見込めないという。しかしながら、債券市場では電子プラットフォームを活用した取引へ移行しつつある他、トレーディング及びポストトレード関連データの価値が大きく高まっている。欧州投信投資顧問業協会(European Fund and Asset Management Association, EFAMA)は以前、規制当局に対して統合テープ構築の法制化を要請している。その際、妥当なコストに基づきデータの公表を求めるエンフォースメント(法執行)の欠如は、データ取得にかかるコストに鑑みて一部の金融商品のプライシングを求めない行動に繋がりかねないと言及していた。
統合テープの構築は、非エクイティ性商品である債券のみならず、エクイティ性商品にもベネフィットをもたらし得る。特にETFに関しては、取引情報を単一システムに集約することで効率性が大きく向上すると見られており、2019年12月にはESMAがエクイティ性商品の統合テープ導入を推奨している。その際、同局の局長を務めるSteven Maijoor氏は、MiFIDⅡが導入されてから約2年が経過したが、EU全域で信頼性の高いプライシング・流動性関連モニタリングシステムを構築できていないと言及していた。
FX取引に関する非常に限定的な監督が行われる中、エンドユーザーにコストを転嫁することができれば、CLS Bankによるマッチングされた取引データを活用できるかもしれない。また、IMM(International Monetary Market)通貨先物市場を運営するCME Groupと、同社傘下の多目的取引施設(Multilateral Trading Facilities, MTF)であるEBSは、両取引施設においてプライシングや流動性を求めたり、比較することができるプラットフォームを構築した。更に、欧州市場ではFX取引を中央清算する方向にシフトしており、これらの取り組みは統制の取れた市場の形成に向けて歓迎されるものかもしれない。
ECやESMAを始めとする欧州当局が、透明性と効率的の高い単一市場の構築に向けて如何なる規制策を講じるか今後も注目したい。
release date 2021.01.25
2020年12月末に英国がEUから完全離脱したことを受け、EU当局は欧州全域で統制の取れた単一資本市場の形成を急ぐべく、資本市場同盟【以下、CMUと称す】の構築を推進していく方針だ。エクイティ性商品及び非エクイティ性商品に係る統合テープの構築も、CMUの構築に向けた取り組みの一環と言える。また、CMU構築に向けて権限が強化されているESMAは、多岐にわたる分野において均整の取れた規制策の導入・適用を試みている状況だ。直近では、ESMAはリバース・ソリシテーションに係るガイドラインを公表し、金融機関に対してMiFIDⅡの遵守を要請している。更に、ESMAはSCSCの委員長を任命した他、タクソノミー規則に係る諮問書や財務情報に係る共通エンフォースメントの優先事項などを公表している。金融の安定化や投資家保護、欧州金融市場の競争力強化などを基本原則とするCMUの構築に向け、欧州各国当局が連携し、より効果的な規制スキームを策定することに期待したい。
作成日
:2021.01.25
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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