作成日
:2021.01.13
2021.08.31 15:31
サウジアラビアのジェッダを拠点とするInternational Islamic Trade Finance Corporation(本社:P.O. Box 55335, Jeddah 21534, Kingdom of Saudi Arabia
)【以下、ITFCと称す】およびバングラデシュのCity Bank(本社:136, Gulshan Avenue, Gulshan-2 Dhaka-1212, Bangladesh )が、シャリーアに準拠するイスラム法国において初めてブロックチェーン上での信用状(Letter of Credit)取引を成立させたことが明らかになった。発表によると、この信用状はバングラデシュの輸入業者であるDebonair Groupが香港のApparel Linkから商品を購入する際にCity Bankが発行し、R3のコーダ(Corda)ブロックチェーンによって構築されたネットワークであるContour上でトランザクションが処理されたという。これに関してCity BankのSheikh Mohammad Maroof氏は、同行が顧客に効率的で満足のいくサービスを提供することに取り組んでおり、今回の経験がブロックチェーン技術を用いたデジタル取引を改善していくための足がかりになると言及した。
一方、ContourのCEOであるCarl Wegner氏は、次のようにコメントしている。
遂に貿易金融業界がデジタル化を採用し、接続性と効率性の向上という信用状のメリットを享受できるようになりました。世界貿易のために信頼できるネットワーク構築を継続する中、我が社は銀行や企業、テクノロジープロバイダーに向けたこのエコシステムが全ての人にとって包括的でアクセスしやすいものであり続けることを保証したいと考えています。ネットワーク上で初めてシャリーアに則ったトランザクションを完結させたことは、我が社の目標に向けた重要なマイルストーンになると言えるでしょう。
Carl Wegner, CEO of Contour - City Bankより引用
昨年末、HSBCがContourと提携して国際貿易取引をデジタル化したのに加え、オーストラリアとシンガポールの貿易当局がブロックチェーン技術を用いて両国間の取引を簡素化することを試みるなど、貿易業界は変革の時を迎えているようだ。これがどのような効果を発揮するのか、今後も同分野での展開を見守っていきたい。
release date 2021.01.13
これまでブロックチェーン関連企業は同技術のユースケースを模索してきたが、貿易業界ではその不可逆的な性質やトランザクションスピードを活かしたソリューションが確立され始めている。特に信用状取引はトークン化して効率的にやり取りすることが可能となっており、マイクロソフトのAzure Blockchain Tokenと呼ばれる企業向けブロックチェーンプラットフォームでも同様の機能実装が実現されているという。また、ロシア最大の商業銀行であるSberbankはロシアルーブル連動のステーブルコイン発行を計画するなど、ブロックチェーン上で信用状取引から決済まで実行できるエコシステムの構築を目指しているようだ。イスラム法国でもサウジアラビアとUAEがデジタル通貨発行に合意しており、これら新興テクノロジーの取り込みが加速しているだけに、今回、ITFCおよびCity Bankがブロックチェーン上で信用状取引を成功させたことはこの流れを象徴する出来事になったと言えるだろう。
作成日
:2021.01.13
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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