作成日
:2020.12.24
2021.08.31 15:31
アルゼンチンではインフレが進行していることを背景に、米ドルの代わりにMakerDAOが発行するステーブルコインであるDAIの需要が高まっており、今年に入ってからその取引量が少なくとも6倍以上に増加している。
過去18ヶ月間でアルゼンチンペソは1通貨あたり0.02ドルから0.006ドルに切り下げられ、年間インフレ率が30%を超える水準に達したという。これまでアルゼンチン国民は米ドルでインフレリスクをヘッジしてきたが、その購入が1ヶ月最大200ドルに制限されていることや、65%の税が課せられることから、DAIのようなステーブルコインを買い求めているようだ。アルゼンチンでは数多くのステーブルコインが取引されているが、2018年にラテンアメリカ向けの仮想通貨エコシステムとしてローンチされたDAIは同地域で主要な仮想通貨となっている。
イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンを基盤とするDAIは、同仮想通貨を裏付けに間接的に米ドルと1対1の価値を保てるよう設計されている。アルゼンチン国内ではBuenbitやRipio、SatoshiTangoなどの仮想通貨取引所がDAIを取り扱っており、国民は同仮想通貨を用いて政府の資本規制を回避しながら給与を米ドルに両替しているという。この現状に対してMaker FoundationのMariano Di Pietrantonio氏は、DAIが現実的な預金手段として認識されていると言及した。
これに加え、国内企業もDAIへの興味を示しており、そのエコシステムに参加することを模索しているようだ。機関投資家や投資ファンドはUSDコイン(USD Coin)を好む傾向があるものの、特に国外への支払いが必要な中小企業はテザー(Tether)と併せてDAIを利用し始めている。このような環境下で、アルゼンチンにおけるステーブルコインの取引量は昨年の20倍に増加しており、DAIに至っては現地の闇相場などの非公式な米ドルレートに近いプレミアム価格で取引されているという。
2001年にアルゼンチン政府がCorralitoと呼ばれる経済政策で米ドル建ての預金口座を凍結して以降、国民は既存の通貨システムに不信感を抱いている。MakerDAOの元プログラマーであるMariano Conti氏はDAIが法定通貨にない優れた特性を持ち合わせていると主張しているが、このステーブルコインに対する強い需要はいつ頃まで継続するのか、今後もアルゼンチンの仮想通貨市場における動きを見守っていきたい。
release date 2020.12.24
2017年にビットコイン(Bitcoin)が台頭してきて以来、通貨危機に晒されるアルゼンチン国民は仮想通貨に強い関心を示している。その影響もあってか国内の仮想通貨市場は急速に拡大しており、Athena Bitcoinを始めとする企業がアルゼンチンでビットコインATM設置の動きに出るなど、仮想通貨の流通インフラが整備されているという。その他にも急増する仮想通貨需要に対応すべく、バイナンスやHuobiがアルゼンチンで仮想通貨取引サービスを展開しているようだ。このオフショア取引所を追従するように、中南米地域向け仮想通貨取引所のMexoもアルゼンチンペソをサポートし、フィアットゲートウェイとして仮想通貨市場へのアクセスを提供している。アルゼンチンではインフレが構造的な問題となっており、リスクヘッジ資産として仮想通貨の役割が大きくなっているだけに、同国市場の拡大は加速していく可能性があると言えるだろう。
作成日
:2020.12.24
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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