作成日
:2020.12.23
2021.08.31 15:31
ロシア連邦中央銀行(Central Bank of Russia)総裁のElvira Nabiullina氏は、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタルルーブルが市中銀行からの預金流出などの重大な変化を招くことはないとの見解を示した。
今月初めに国内の金融機関は、デジタルルーブル発行が既存の金融システムを弱体化させるとロシア連邦中央銀行に警告した。ロシア中銀がCBDC発行に向けて協議を開始した際に、ロシア最大の商業銀行であるSberbankは、結果的にデジタルルーブルの導入が最大250億ルーブル(約3,400万ドル)のコストを強いることになると言及している。また、Sberbankは同仮想通貨の発行が実現した場合、最初の3年間で市中銀行が最大4兆ルーブル(約540億ドル)の流動性を失い、金利を約0.5%引き上げる必要に迫られて小売業や中小企業への融資を制限する可能性があると主張した。これに対してNabiullina氏は長期金利がインフレ率と金融政策の影響で変動すると前置きした上で、デジタルルーブル発行と市中銀行の流動性が別問題であるとコメントしたという。
ロシアの銀行グループであるNCFM(National Council of Financial Market)は、Sberbankの考えを汲んで中国のデジタル人民元に倣って市中銀行がデジタルルーブルを管理するモデルを採用するようロシア連邦中央銀行に進言している。しかしながら同行はこれに否定的な姿勢を取っており、より中央集権型のCBDCモデルを構築することを望んでいるようだ。加えて、ロシア中銀は民間企業発行のステーブルコインを禁止する方針を示すなど、デジタルルーブルが国内で決済に利用可能な唯一の仮想通貨となることを画策している。
ロシア仮想通貨ブロックチェーン協会(RACIB)のアドバイザーであるVladislav Martynov氏は、ロシア連邦中央銀行の方針に対して次のように述べた。
ロシア連邦中央銀行はデジタルルーブルについてあまり問題にして欲しくないと考えていますが、世界中でCBDCの動きがあり各国の中央銀行がそのコンセプトを検討しているため、同行が何もアクションを取らないことは許されないと言えるでしょう。公開された報告書で同行が非常に保守的な考えを持っていることがわかりました。市中銀行の役割が減少する一方で同行は支配を強め、新しい独占市場を構築しようと考えています。我々はミールカード(ロシア国策のクレジットカード)がどのように強制的に展開されるかを見ていました。デジタルルーブルを展開するという目標を設定した場合、それは達成されるでしょう。
Vladislav Martynov, Adviser to the Russian Cryptocurrency and Blockchain Association - CoinDeskより引用
現在、ロシア連邦中央銀行はデジタルルーブル発行を精査しており、12月31日までパブリックコメントを募集しているが、最終的にどのような判断を下すのか、今後も同国での動きを見守っていきたい。
release date 2020.12.23
現在、世界の主要国がCBDC発行に向かっており、中国のデジタル人民元や米国のデジタルドル、欧州のデジタルユーロ、日本のデジタル円などの開発が進行していると報じられている。その中でも欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】は、中国人民銀行(People's Bank of China)の動きに続く形で、今後2年から4年以内のCBDC発行を目指してパイロットテストの実施を計画しているようだ。しかしながらロシア連邦中央銀行と同じく、ECBは依然としてCBDCと既存の金融システムの関係性に課題を抱えており、Christine Lagarde総裁はデジタルユーロ発行に伴うリスクを懸念しているという。実際に米大手銀行のBofAはデジタルユーロ発行の危険性を警告しているが、主要国によるCBDC発行は実現するのか、今後も各国政府の動向に注目していきたい。
作成日
:2020.12.23
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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