作成日
:2020.12.11
2021.08.31 15:31
米大手銀行のBank of America(本社:Bank of America Corporate Center, 100 North Tryon Street, Charlotte, NC 28255
)【以下、BofAと称す】は、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタルユーロ発行が欧州地域に悪影響を及ぼす可能性があると警告を促した。BofAのアナリストによると、デジタルユーロが個人に普及した場合、商業銀行の預金が流出することで同分野の企業に損害を与える可能性があるという。また、このアナリストはデジタルユーロが個人の決済チェーンのコストと煩雑さを軽減すると同時に、サードバーティ企業である商業銀行の必要性を低減することに触れ、それが欧州の金融業界にとって下振れリスクにしかならないと言及している。欧州の商業銀行は、既存の金融システムの下で準備預金制度に縛られているため、デジタルユーロが預金口座の代替と見なされることもあり得るようだ。
貨幣システムはインターネット市場と同様に、独占的な体系を形成する傾向が強く、欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】はFacebook(フェイスブック)のディエム(Diem)や、中国人民銀行(People's Bank of China)【以下、PBoCと称す】のCBDCであるデジタル人民元などの代替手段が普及することを懸念している。実際にECB総裁はステーブルコインが金融システムの安全を脅かす可能性があると発言しているという。
BofAのアナリストは、ECBが早急にデジタルユーロ発行に向けて方針を確認すべきだと述べ、アクションを取ることを促しているが、同行はどのような判断を下すのか、今後も欧州での動きに注目していきたい。
release date 2020.12.11
CBDC開発で各国をリードする中国政府は、12月12日に蘇州市でデジタル人民元を配布することを決定するなど、同仮想通貨の発行に向けてトライアルテストを着々と進めている。これに併せて、PBoCは国内の大手銀行や決済アプリなどと連携し、仮想通貨ウォレットの開発に着手してデジタル人民元の発行に備えているという。一方、世界的なステーブルコイン発行を目論むFacebookは、技術的な課題をクリアしてスイス金融市場監督局(Financial Market Supervisory Authority, FINMA)の承認を待つ段階にまで来ているようだ。Facebookはリブラをディエムに名称変更することでイメージを刷新し、方針を変えてまずは米ドルに連動するディエムドルのローンチを目指している。デジタル人民元やディエムの発行が実現すれば、世界の金融システムにも影響が生じると考えられるが、各国政府はどのような対応を示すのか、今後もその動向を見守っていきたい。
作成日
:2020.12.11
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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