作成日
:2020.12.02
2021.08.31 15:31
欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】のChristine Lagarde総裁は、先月30日に掲載された雑誌のインタビュー記事で、ステーブルコインが金融システムの安全を脅かす可能性があるとの見解を示した。
この記事の中でLagarde総裁は、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)であるデジタルユーロの有効性を強調すると同時に、その他仮想通貨やステーブルコインの利用に危険が潜んでいると主張した。また、Lagarde総裁はこれらの仮想通貨がテクノロジーに依存しており、識別可能な発行者の情報などが存在せずに流動性や安定性、信頼性が欠けているため、通貨としての機能を果たしていないと述べている。ステーブルコインはこれらの課題を解決しつつあり、決済システムにイノベーションをもたらす可能性があるが、Lagarde総裁は依然として深刻なリスクがあると警告した。
これに加え、Lagarde総裁はFacebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)などの世界的なステーブルコインに関して次のようにコメントしている。
特にグローバルテクノロジー企業によって発行されるステーブルコインは、欧州の競争力と技術的な自立性にリスクをもたらす可能性があります。これら企業の支配的な立場は、競争と消費者の選択を阻害し、プライバシーと個人情報に関する懸念を拡大することになると言えるでしょう。
Christine Lagarde, President of European Central Bank - European Central Bankより引用
その他にもLagarde総裁は、大量の銀行預金がステーブルコインに移行した場合、銀行業務や金融政策に影響があると言及している。先日、Facebookが2021年1月のリブラ発行を計画していることが明らかになり、世界的なステーブルコインの登場が現実味を帯びてきているが、ECBを始めとする各国の規制当局はどのような対応を見せるのか、今後も仮想通貨市場での展開を見守っていきたい。
release date 2020.12.02
近年、仮想通貨取引やDeFi(分散型金融)関連サービスの登場によりステーブルコインに対する需要が拡大しており、最大のシェアを誇るテザー(Tether)に至ってはその時価総額が160億ドル規模に達しているようだ。この現状を受け、今年9月にはフランス、ドイツ、スペイン、オランダ、イタリアの欧州主要国がECにステーブルコインへの対策強化を要請するなど、欧州では仮想通貨の実用化に備える動きが活発になってきている。報道によると、既にECはステーブルコイン規制の草案を作成しており、法的確実性や消費者の安全、金融市場の安定性を確保することを目的としたフレームワークの構築を検討しているという。これに同調する形で英国財務省もステーブルコインを規制する草案作成を進行し、各国と連携して欧州市場を保護する動きに出ているが、仮想通貨市場を取り巻く環境はどのように変化していくのか、今後もその動向に注目していきたい。
作成日
:2020.12.02
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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