作成日
:2020.10.21
2021.08.31 15:31
中国政府が中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるデジタル人民元を普及させるために、ユーザーエクスペリエンスの改善やインセンティブの付与などの施策が必要になる可能性がロイターの報道で浮き彫りになった。
先日、CBDC開発の一環として中国深セン市政府がデジタル人民元を抽選で配布し、合計1,000万元(約147万ドル)規模のプロモーションを実施した。当選した市民には深セン市のショッピングエリアである羅湖区で利用可能な200元(約30ドル)相当のデジタル人民元が付与されたが、同仮想通貨に対するユーザーの評価は低調なものだったという。
ロイターが羅湖区で実施した調査で、あるユーザーはデジタル人民元のユーザーエクスペリエンスに不満を抱いており、プロモーションでもない限り再び利用することはないと回答している。また、別のユーザーはデジタル人民元がアリペイ(Alipay)やWeChatなどの決済アプリと類似していることを指摘し、同仮想通貨の安全性が担保されるのであれば利用を継続する可能性があるとコメントした。加えて、PwC Chinaのあるエコノミストは、デジタル人民元の利用促進には利便性やインセンティブなどのメリットを提供することが重要だと説明している。
既に中国政府はデジタル人民元のテストプログラムを複数都市に拡大するなど、他国に先駆けてCBDCの導入を実現しようと試みているが、この深セン市での結果をどのように受け止めるのか、今後も同国での動きに注目していきたい。
release date 2020.10.21
最近、仮想通貨市場ではCBDCばかりに注目が集まっているが、テザー(Tether)やUSDコイン(USD Coin)など、既存のステーブルコインを用いた決済ソリューションの利用も活発になってきている。既に企業間での決済ではこれらのステーブルコインが活用されており、ここ数カ月でその取引量が急速に拡大してきているようだ。決済サービスを提供するGildedでCOO(Chief Operating Officer)を務めるNeal Roche氏によると、ステーブルコインを利用するハードルが低くなっており、多くの企業が手数料やトランザクションスピードなどの点で恩恵を享受し始めているという。このような状況を受け、欧州主要国がECにステーブルコインへの対策強化を要請するなど、現実的に仮想通貨の実用化に対応するような動きが生じているが、仮想通貨市場はどのように偏移していくのか、今後もその展開を見守っていきたい。
作成日
:2020.10.21
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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