作成日
:2020.08.17
2021.08.31 15:32
世界最大のデリバティブ取引所を運営するCME Group Inc.(本社:20 South Wacker Drive Chicago, Illinois 60606 USA
)【以下、CMEと称す】は8月13日、米証券取引所を運営するNasdaq, Inc.【以下、ナスダックと称す】と、ナスダック100指数【以下、NDXと称す】のボラティリティ・インデックス(Volatility Index)【以下、VOLQと称す】を取引対象とする先物商品をリリースする計画であることを発表した。CMEは規制当局による承認後、2020年10月5日に同先物商品をリリースする計画だ。ナスダックが2019年初頭に開発したVOLQは、NDXを対象とするアット・ザ・マネー(At The Money)【以下、ATMと称す】のオプション価格を基にしたインプライドボラティリティ指数を用いて算出される。VOLQは市場参加者にとって、ポートフォリオにおけるボラティリティの適切な把握及び管理に寄与するという。新商品は現金決済先物取引であり、取引単位は1万米ドル×VOLQとなる他、CMEの規則に従って上場されるとのことだ。
新商品のリリースに際し、CMEの株価指数・オルタナティブ投資商品部門グローバルヘッドを務めるTim McCourt氏とナスダックのエグゼクティブバイスプレジデント兼グローバル情報サービス部門ヘッドであるLauren Dillard氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
我々はVOLQを取引対象とする新たな先物商品を提供すべく、ナスダックと長期的に強固な関係性を構築することを喜ばしく思っております。同先物商品は、ボラティリティ・エクスポージャーのヘッジと、ATMのオプション価格を基に算出されるボラティリティを対象にした取引への強い需要に対応しております。また、VOLQはEミニ及びマイクロEミニNDXなど、ナスダックが提供する先物・オプション商品ラインナップを補完するものになるでしょう。
Tim McCourt, CME Group Global Head of Equity Index and Alternative Investment Products - CME Group Inc.より引用
NDXは世界で最も革新的な企業群で構成されており、信じられないほど突出したパフォーマンスを示しております。VOLQは同指数のボラティリティを対象にした取引を可能とし、CMEが同ボラティリティ指数を取引対象とする先物商品をリリースすることにより、ボラティリティ関連の革新的な商品を提供する上で大きく前進できるでしょう。
Lauren Dillard, EVP and Head of Nasdaq's Global Information Services - CME Group Inc.より引用
尚、足元でCMEは積極的に商品・サービスの拡充を図っている。例えばCME傘下のBrokerTecとTriOptimaが提携し、レポ取引ワークフロー関連のエンドツーエンドソリューションを開発する方針を示している。またCMEはビットコイン先物オプションをローンチした他、CMEはグーグルクラウド上で市場取引データの提供を開始している。そして今回、同社がナスダックと手を組み、需要高まるボラティリティ関連の先物商品をリリースすることで、更なる顧客取引の拡大が期待できそうだ。
release date 2020.08.17
米国を代表する株価指数として、ダウ工業株30種平均とS&P500指数、ナスダック総合指数が挙げられる。そして、昨今の米国市場において、好調な値動きを見せているのがNDXだ。同指数はナスダック総合指数を構成する銘柄の内から金融銘柄を除き、時価総額が大きい上位100銘柄を抽出した株価指数となる。中には時価総額で世界最大の上場企業に返り咲いたアップル(Apple)を始め、GAFAMを構成する巨大IT企業のマイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon)、グーグル(Google)の親会社であるアルファベット(Alphabet)、フェイスブック(Facebook)を含んでいる。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを受け、グローバルに様々な業界でデジタルトランスフォーメーションが推進される中、GAFAMが確立するビジネスモデルの優位性が高まっている状況だ。2020年5月初頭には、NDXを牽引するこれらのIT大手5銘柄の時価総額合計が、東証株価指数(TOPIX)を構成する約2,170社の合計を上回ったという。NDXには、GAFAM以外にもテスラ(Tesla)やズーム(Zoom)などに加え、新型コロナウイルス向けのワクチン開発を進めるモデルナ(Moderna)なども採用されている。年間騰落率が過去20年で最高水準に達する同指数は、引き続きグローバル投資家から大きな注目を集めることが期待できそうだ。
作成日
:2020.08.17
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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