作成日
:2020.08.11
2021.08.31 15:33
米カリフォルニア州ロサンゼルス郡の地域コミュニティであるBassettにおいて、ソーラーパネルや蓄電システム、電気自動車、充電インフラ関連のデータを収集するプロジェクトの一環として、パブリックブロックチェーン上で炭素クレジット取引の試験市場が構築されることが明らかになった。
このプロジェクトには2,000万ドル規模の予算が割り当てられており、州のエネルギー政策および計画機関であるカリフォルニア州エネルギー委員会(California Energy Commission)が900万ドル、Google(グーグル)やカリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los Angeles)などが残りの1,100万ドルの費用を捻出することが決定している。これに参加するEVShareのCEOであるEduardo Javier Muñoz氏によると、企業は共有の電気自動車に電力を供給して二酸化炭素排出量を削減することでトークンを獲得し、将来的にそれを電力消費や交通、その他サービスの支払いに利用できるようになるという。また、Muñoz氏はこのプロジェクトを通じて炭素クレジット取引がデジタル化されると同時に、Bassettの住人が共有の電気自動車を安価に利用可能になると説明した。
モビリティ関連のトランザクションはビットコイン(Bitcoin)ネットワーク上に構築されたRSKブロックチェーンに記録される。RSKブロックチェーンはRSK Labsが開発したRIF(RSK Infrastructure Framework)を介して車両とソーラーパネル、バッテリー、充電器のトランザクションなども管理し、Green Commuterが運用する電気自動車の共有システムをサポートする。このプロジェクトのフェーズ1では研究開発やビジネスコラボレーション、Bassettの協力を得ることが目的とされているが、続くフェーズ2では2年間で50戸の住宅を太陽光発電網に接続するなど、更なる広がりを見せることが予想されている。
炭素クレジットを保有する企業は一定量の二酸化炭素やその他温室効果ガスを排出することが認められている。炭素クレジットが不要な企業はそれを他の企業に売却し、収益を得ることが可能だが、これらのプロセスがブロックチェーン上でデジタル化されれば、自然環境の改善に大きく貢献する可能性があると言えるだろう。
release date 2020.08.11
年々、企業は環境への配慮が求められるようになっており、その影響は金融業界でも顕著になり始めている。例えば、仮想通貨規制に向けて国際コンソーシアムを結成したWEFでは、スウェーデンの高校生環境活動家であるグレタ・トゥンベリ氏が登壇したことでこの問題への関心が高まっているようだ。また、英国の金融情報会社であるリフィニティブがグローバルサステナブル戦略として、ESG(環境、社会、ガバナンス)データを活用し、気候変動問題に取り組むことを公表するなど、明確なアプローチを示す企業も散見されるようになった。しかしながら仮想通貨市場では、マイナーへの影響が懸念されたビットコイン半減期を迎えマイニング難易度が上昇し、消費電力の増加を招いている状況だ。今回、カリフォルニア州でパブリックブロックチェーンを活用したスマートグリッドプロジェクトが立ち上げられたことはポジティブな出来事だと言えるが、仮想通貨コミュニティの環境に対する意識はどのように変化するのか、今後もその展開を見守っていきたい。
作成日
:2020.08.11
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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