作成日
:2020.08.10
2022.05.30 17:17
オーストラリア最大のリテールFXブローカーであるPepperstone Group Limited(本社:Level16, Tower One, 727 Collins Street, Melbourne, VIC 3008, Australia
)【以下、Pepperstoneと称す】は、7月22日に発生した顧客情報流出に関する最新の調査結果を公表した。Pepperstoneは、データ保護当局及び犯罪捜査に関する独立した外部専門家と協力して調査を行ってきたとのことだ。同社のスポークスパーソンによると、今回のサイバー攻撃に関する犯罪捜査の結果、犯人はマルウェアを利用して、サードパーティーであるベンダーのコンピューターに侵入し、クレデンシャル情報を取得したという。その後、同情報を用いてPepperstoneの顧客関係管理(Customer Relationship Management)【以下、CRMと称す】システムにアクセスし、一部の顧客名や連絡先、誕生日といった顧客情報を盗み取ったとのことである。一方で、CRMシステムと分別管理していた取引システムや顧客口座、本人確認書類、パスワード、銀行口座は流出していない模様だ。
Pepperstoneは、情報が流出した各顧客に対して即座に通知すると共に、2要素認証の活用やパスワードの変更を通じてセキュリティの確保を促している。また個人情報が流出した恐れがある場合には、顧客自身がサイバー犯罪当局に連絡し、詐欺師と思われる人物に送金もしくは銀行関連の機密情報を提供した際には、該当の銀行へ即座に相談することを求めている。加えて、同社は今回のセキュリティインシデントが生じたことに対して遺憾の意を示すと共に、安心・安全な取引環境の構築に向けた全ての取り組みを続けるという。
顧客情報の流出に際し、PepperstoneのCEOであるTamas Szabo氏は以下のようにコメントしている。
サイバー犯罪はグローバル規模でより高度化、巧妙化しており、世界中全ての企業や政府、個人にとって脅威となっております。我が社は過去数年にわたり、堅牢なITセキュリティの環境構築に向けた投資を行ってきた結果、即座にサイバー犯罪を特定し、被害を食い止めることができたと考えております。
Tamas Szabo, Chief Executive Officer, Pepperstone Group - FinanceMagnatesより引用
Pepperstoneが今回のセキュリティインシデントを受け、より安心・安全な取引環境の構築に向けた取り組みを積極化することに期待したい。
release date 2020.08.10
足元では、サイバー犯罪が世界中で多発しており、投資家や海外FXブローカーなどが大きな脅威に晒されている。例えば、ゲインキャピタル・ジャパンで不正アクセス事案が発生した。また、北朝鮮がテレグラムを利用したハッキングを試みている他、FCAがビットコイン関連のなりすましメールに注意喚起するなど、仮想通貨分野のセキュリティインシデントも頻発している状況だ。更に、米国とイランの両国間に緊張が高まった際には、米当局がウォール街へイランのサイバー攻撃に備えるように警戒を呼び掛けていた。一方で、欧州連合(EU)は7月末、度重なるセキュリティインシデントを受け、中国とロシア、北朝鮮の組織や個人に対して初の制裁措置を発動している。また、英国投資家協会(Investment Association, IA)は脅威インテリジェンスプラットフォームをリリースし、加盟企業をサイバー犯罪から保護する取り組みを強化している。加えて、各企業レベルにおいてもサイバー攻撃に対する独自の対策が求められている状況だ。今回、Pepperstoneが顧客情報を流出したが、投資家からの信頼回復に向け、如何なるソリューションを講じるか注目したい。
作成日
:2020.08.10
最終更新
:2022.05.30
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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