作成日
:2020.05.27
2021.08.31 15:32
匿名通貨のジーキャッシュ(Zcash)は、今年11月中に104万6,400番目のブロックで初の半減期を迎える予定だが、それに伴って仮想通貨コミュニティでは同仮想通貨価格のインフレが緩和される可能性があるとの議論が展開されている。
ジーキャッシュは通貨発行上限数が2,100万ZECに定められており、希少性が担保されているはずだが、他の仮想通貨と比較しても極端に高いインフレ率に悩まされているという。現時点でジーキャッシュの年間インフレ率は28.19%を記録し、ビットコイン(Bitcoin)の1.44%を大幅に上回っている。特に2019年はその傾向が強く、ビットコイン価格が通年で90%以上増加したのに対して、ジーキャッシュ価格は同期間中に88%減少した。
しかしながらDigital Assets Dataの仮想通貨アナリストであるConnor Abendschein氏は、今年11月の半減期を境に、このインフレ率が緩和される可能性があると述べている。現在、ジーキャッシュ価格は対米ドルおよび対ビットコインで史上最低の水準にまで下降しているが、一般的に強気なイベントだと考えられる半減期が到来することで上昇に転じるとの期待が高まっているようだ。2019年8月に半減期を経験したライトコイン(Litecoin)は、ビットコイン価格の推移が低調だったにも関わらず、同年の第1四半期に価格を倍増させ、続く第2四半期には更に100%の高騰を見せた。また、先日、3回目の半減期を迎えたビットコインは、2カ月間で3,867ドルから1万ドルに価格を上昇させており、半減期が有効であることを示している。
加えて、MessariのWilson Withiam氏は、マイナーによる仮想通貨売却の圧力が最初の半減期では弱まりやすく、ジーキャッシュもその恩恵を受ける可能性があると主張している。実際に2012年におけるビットコインマイナーの潜在的な売り圧力は、最初の半減期後に出来高の割合にして135%から67%にまで急落したという。これに伴ってビットコイン価格も半減期前から6%増加し、翌年4月には過去最高となる260ドルにまで到達した。
これまでジーキャッシュのマイニング報酬は、その80%がマイナー、約15%が投資家や創立者グループ、約5%が開発やサポートを担うElectric Coin Co.【以下、Electric Coin】に割り当てられるようになっていた。しかしながら今回、ジーキャッシュコミュニティは、11月に投資家や創立者グループへの分配を廃止し、8%をサードパーティ企業の助成プログラム、7%をElectric Coin、5%をジーキャッシュ財団、引き続き80%をマイナーへの予算とすることを決定している。この変更は半減期と併せてジーキャッシュに大きな影響を与えると考えられるが、同仮想通貨価格はどのような推移を見せるのか、今後もその動向を見守っていきたい。
release date 2020.05.27
今月、ビットコイン価格は2カ月ぶりに1万ドル台を記録し、復調の兆しを見せていたが、半減期後にずるずると後退して9,000ドルを割る水準にまで下げてきている。ジーキャッシュ価格もこれに連動し、一度は70ドルを超えるところまで値を上げたものの、ビットコイン価格に引きずられる形で45ドルラインにまで急落した。現在、ジーキャッシュ価格は方向感なく、25ドル付近の支持線と50ドル付近の抵抗線の間をさまよっており、仮想通貨市場全体の動きをうかがっているようだ。価格上昇への期待感だけが先行しているが、先月、初の半減期を迎えたビットコインキャッシュが直前まで価格が上がらなかった事実を考慮すると、ジーキャッシュ価格も今年後半に突入するまで動かない可能性があると言えるだろう。いずれにせよジーキャッシュはポジティブな材料を抱えており、仮想通貨コミュニティでも注目の仮想通貨となっているだけに、今後もその値動きに注目していきたい。
作成日
:2020.05.27
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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