作成日
:2020.04.15
2022.06.06 16:25
米国最大のFXブローカーであるForex.comを運営するGAIN Capital Holdings Inc(本社:135 US Highway 202/206, Suite 11 Bedminster, NJ 07921INTLによるGAIN買収に関する見解を示した報告書を公表した。
)【以下、GAINと称す】は、直近の業績及びGAINは買収契約を締結した後の最初の取引日である2020年2月27日から2020年度第1四半期の最終日に当たる3月31日までの期間【以下、契約締結後期間と称す】におけるボラティリティが、2020年1月1日から同契約が締結された2月26日までの期間【以下、契約締結前期間と称す】及び2019年度第1四半期と比較して大きく拡大したという。また、契約締結後期間における異常なボラティリティの上昇により、同期間のリテール顧客の取引量が大幅に増加したとのことだ。
契約締結後期間の1日当たりの平均取引量(ADV)は1,728億ドルと、契約締結前期間の80億ドルから123%増、2019年度第1四半期の77億ドルから131%増となった。加えて、契約締結後期間におけるリテール顧客を対象としたインプレッション収益(RPM)は約281ドルと契約締結前期間の164ドル及び2019年度第1四半期の50ドルからそれぞれ71%増、462%増と大幅な拡大を示したとのことである。尚、GAINは契約締結後期間に計上した総営業収益、純利益、調整済み純利益が、2020年度第1四半期におけるそれぞれの業績項目の約67%、85%、83%を占めたという。
GAINの取締役会は、同社株式を保有する株主に対するINTLとの契約条項に関し、7対1の賛成多数で推奨を続けている。しかしながら、契約締結後の市場動向に鑑み、ポジティブ・ネガティブな要因を踏まえて株主への推奨を見直している状況だ。また同社の経営陣は財務・法務アドバイザーの助言の下、契約上の制限を遵守しつつ、買収契約締結後クロージングまでの間に経営状態に重要な悪影響を及ぼす事由の確認やGAINの経営陣の権限確保、臨時株主総会までに株主に対する買収契約の推奨意見を変更する可能性も含め、諸々の権利関係の見直しを行っているという。
GAINの経営陣はINTLによる買収契約に関して、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による影響に関係なく、INTLが全額現金を用いてGAINの株式を1株当たり6ドルで取得することや、経営状態に重要な悪影響を及ぼす事由が発生した場合には900万ドルの解約手数料を支払うことで買収契約を白紙に戻す権利条項が含まれていることを推奨理由に挙げている。また、2020年度第1四半期の業績が著しく改善したのは新型コロナウイルスのパンデミックを受けた異常な市場環境下によるものであり、同社を取り巻く競争環境は依然として厳しく、足元の業績の回復を維持できる保証はないという。更に、守秘義務契約を締結したINTLを含む8社からの戦略的代替案は買収以外に有力な提案がないほか、INTLによるGAIN株式の取得金額について同社株式の公正価値を表していないと見るのであれば、株式買取請求権を行使する権利があるとのことだ。新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場への影響を踏まえつつ、引き続きINTLとGAINの買収契約の行方を見守りたい。
release date 2020.04.15
新型コロナウイルス危機を受け、金融市場のボラティリティが大きく高まったことにより、GAIN以外にも複数の海外FXブローカーの顧客取引が大幅な伸びを示している状況だ。例えば、外為どっとコムは過去最高の取引高を記録したほか、CMC MarketsもCFD・株式取引量を通常の市場環境下の2倍以上に増加させている。海外FXブローカー各社にとっての問題は、GAINの経営陣が指摘しているように、この勢いを今後も維持できるか否かであろう。GAINとINTLの買収動向に目を転じると、手続きは2020年半ばに完了する見通しだ。両社の買収手続きが無事実行された後に、厳しい競争環境の中でも取引高の回復を継続させるべく、GAINが繰り出す次なる一手に注目が集まっている。他方で、コロナショックに対応する形で、CMEが金先物商品をリリースしたように、顧客基盤の維持・拡大に向けて商品ラインナップの拡充など顧客サービスの強化を実践する金融サービスプロバイダーも散見されている。海外FXブローカー各社が、より一層顧客取引を喚起するような革新的なソリューションを開発することを期待したい。
作成日
:2020.04.15
最終更新
:2022.06.06
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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