作成日
:2020.04.06
2021.08.31 15:33
金融情報会社Refinitiv(本社:5 Canada Square London E14 5AQ United Kingdom
)【以下、リフィニティブと称する】は、Open Data Institute【以下、ODIと称す】と共著で「A New Dimension of Data(データの新局面)- Building an Open and Trustworthy Alternative Data Ecosystem(オープン且つ信頼性あるオルタナティブデータエコシステムの構築)」と題したオルタナティブデータ関連のレポートを公表した。リフィニティブは、現在の経済社会が膨大な量のデータ・情報に対応する必要があり、投資マネージャーやトレーダー、投資家は適切なデータを抽出すると共に理解し、最終的に投資行動に結びつけなければならないという。また投資家には、信頼の置ける情報ソースから、非構造化データなどの膨大なオルタナティブデータを取扱う困難で複雑な任務が課せられているとのことだ。
同レポートによると、オルタナティブデータのソースは千種類を超えると言われているほか、ケーススタディは数百件に達し、世界中のデータ利用は数百万件に上っており、オルタナティブデータ市場は成長が加速している模様だ。また、多くの国々で伝統的に利用されてきた一般公開データの配信や、ライセンス関連のガバナンス及び標準化は十分確立されているものの、オルタナティブデータ市場は成長の初期段階であり、業界標準や行動規範、規制などが十分に確立されていないと指摘している。
リフィニティブは各種データセットなどを提供する業者に対し、主要なメタデータの標準化を含めた、オープンで信頼性のあるオルタナティブデータエコシステムの構築を求めている。また、同データを提供する業者に対し、データの種類や質、取扱い範囲、想定される利用上の限界、日付、共通フォーマットの利用などを求めているほか、組織や拠点、商品などの企業情報も明らかにしなければならないという。更に、ウェブスクレイピングなどのデータ取集に関する行動規範とテクニカル手法も確立する必要があるとのことだ。
同社のクオンツ・フィード部門グローバルヘッドであるAustin Burkett氏は、最高水準の倫理及び法的基準を遵守し、顧客により良いサービスを提供するために、オルタナティブデータは質や信頼性を高め、標準化を図るべきだという。一方で、ODIのCEOを務めるJeni Tennison氏は、オープンで信頼性あるオルタナティブデータエコシステムを構築するために、標準化や透明性の欠如、プライバシーや知的財産権を巡る問題、信頼性といった、倫理やテクニカル及び実務面の課題を解決しなければならないと指摘している。急成長するオルタナティブデータ市場において、リフィニティブが提唱するエコシステムの構築がなされるか、その動向を見守りたい。
release date 2020.04.06
オルタナティブデータとは、クオンツ系ファンドマネージャーなどの機関投資家が利用するデータのうち、企業が公表する財務諸表やマクロ経済統計などの伝統的な情報以外のデータの総称である。例として、SNS上の口コミ情報やアプリの利用ログデータ、POSデータなどが挙げられる。近年はテクノロジーの進化と共に、投資家が更なる運用パフォーマンスの改善を図るべく、有益な情報を求めてオルタナティブデータの利用を拡大している。ある調査会社によると、2020年の同市場規模は2017年比で4倍に膨れ上がると試算しており、今まさに成長著しい業界といえるであろう。また、投資家からの積極的な需要を背景に、各国の証券取引所グループなどがオルタナティブデータ関連サービスの強化を図っている状況だ。他方で、テクノロジーの革新に伴い、各金融サービスプロバイダーが同データ関連サービス以外にも、カスタマーエクスペリエンスの向上に寄与する様々なソリューションを提供している。例えば、FXStreetがリアルタイム取引シグナルをリリースしたほか、ATFXが生体認証を活用した口座開設サービスを開始した。また、Gold-iがconv.rsと提携し、メッセージアプリを活用した顧客コミュニケーションを実践している。自然言語処理や機械学習などの最先端テクノロジーを活用したオルタナティブデータ関連サービスなど、今後も投資家の運用成績向上に繋がる画期的なソリューションが開発されることを期待したい。
作成日
:2020.04.06
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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