作成日
:2020.03.12
2021.08.31 15:28
イタリア・ベネチアを拠点とする金融テクノロジープロバイダーのFinantix(本社:Via della Pila 13, 30175 Venezia Italy
)は3月10日、スイス・チューリッヒを拠点にAIとデータサイエンスを基にしたソリューションを提供するInCube Group AG(本社:Brandschenkestrasse 41 8002 Zurich Switzerland )【以下、InCubeと称す】を買収したことを発表した。今回の買収により、FinantixはInCubeのソリューションを活用して、ウェルスマネジメントや保険、銀行業界向けのテクノロジーサービスを拡充するほか、特にスイス及び世界のウェルスマネジメントや保険業界への市場アクセスを向上させる意向であるとのことだ。InCubeのチームスタッフはFinantixの傘下にて、AIを基にしたソリューションの開発を続けるという。尚、Finantixは米国・ニューヨークを拠点とする投資会社のMotive Partnersのサポートを受けており、欧州やアジアパシフィック地域、北米などで業容拡大を図るなか、InCubeの買収を決断したことになる。
買収に際し、Finantixのチーフコマーシャルオフィサーを務めるChristine Ciriani氏とInCubeの共同創業者兼パートナーであるBoris Rankov氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
両社は多くの価値観を共有し、共通のビジョンを有していることから、今回の買収は適切であったと考えております。我が社は何よりもまず、取引データの利活用を望むお客様のニーズに応えると共に、投資行動に直結する情報の提供を行う意向であります。データドリブン(Data Driven)時代において、AIを基にした製品やデータサイエンス分野における豊富な経験、高い専門性を有するInCubeと我が社の包括的なサービスが融合することで、お客様は革新性を発揮する高機能なプラットフォームを利用することができるでしょう。
Christine Ciriani, the chief commercial officer for Finantix - Finantixより引用
従来と比較して、金融機関がより多くのデータを取扱うようになっています。投資に活かせる情報とパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを創出すべく、タイムリー且つ効率的な手法を用いてデータを処理することが最も重要なことであります。我々はFinantixと協働することで、この課題を効果的に解決できるでしょう。同社が優れたテクノロジーを有しR&D投資を続け、アジアパシフィック地域や欧州で顧客基盤を拡大させていることは、我が社の既存製品・サービス及び専門性を完全に補完するものであります。
Boris Rankov, co-founder and partner of InCube Group - Finantixより引用
FinantixはInCubeを買収し、AIやデータサイエンス分野における高付加価値ソリューションを提供することで、更なる顧客基盤の拡大が期待できそうだ。
release date 2020.03.12
今回は、フィンテック企業のFinantixが、金融サービス機能の強化と市場拡大を図るべくInCubeを買収した形だ。これ以外にも、足元では多くの伝統的な金融機関がフィンテック企業との提携を通じた高付加価値テクノロジーの効率的な活用を図っている。また、出資や買収といった形で、有力ベンチャー企業が有する金融サービス機能をダイレクトに取込み、より快適なカスタマーエクスペリエンスの提供に繋げるケースも散見されている。例えば、スタンダードチャータード銀行が24 Exchange株を取得し、NDF(為替先渡取引)関連の市場データコストを削減した効率的なソリューションを提供する意向だ。また、OANDAがChasing Returnsとの提携を強化したほか、SBI主導のシリーズBの投資ラウンドでCoolBitFXが資金調達に成功している。今後も、伝統的な金融機関とフィンテック企業が協働して、投資家の利便性の向上に寄与する画期的なソリューションが開発されることを期待したい。
作成日
:2020.03.12
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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