作成日
:2020.03.09
2021.08.31 15:28
英国・ロンドンを拠点とする大手金融機関のStandard Chartered Bank(本社:1 Basinghall Avenue, London, EC2V 5DD
)【以下、スタンダードチャータード銀行と称す】が、マルチアセットクラスに対応した成長の核になる事業の構築のため、ファストマッチ(FastMatch)の創業者であるDmitri Galinov氏が立ち上げた新興テクノロジープロバイダーである24 Exchange Bermuda Limited(本社:5th Floor Andrew's Place 51 Church Street HAMILTON, Pembroke, HM 12 Bermuda )【以下、24 Exchangeと称す】の未公開株を取得したことが明らかになった。24 Exchange株の取得により、スタンダードチャータード銀行は機関投資家を対象に、NDF(為替先渡取引)関連の市場データコストを削減した効率的なソリューションを提供する意向だ。一方で24 Exchangeは、調達した資金を顧客リーチの拡大や機関投資家向けサービスの強化に活用する計画であるという。同社はNDFに加え、スワップや原資産通貨を含むその他のFXデリバティブ取引サービスをオフショア店頭(OTC)取引施設にて即座に開始するほか、できる限り早く株式や債券取引サービスも拡充する模様だ。また、マルチアセットクラスのOTCデリバティブに関連したエンドツーエンドのプロセシングやワークフローサービスも提供する計画であるという。
今回の戦略的投資の一環として、スタンダードチャータード銀行FXトレーディング部門のグローバルヘッドを務めるGeoff Kot氏が、24 Exchangeの取締役会メンバーとして加わる見込みとのことだ。また、Galinov氏が24 ExchangeのCEOとしての役割を遂行し、元Bridgewater AssociateのエグゼクティブであったJason Woerz氏が社長に就くほか、元Cboe Global Markets FX部門ヘッドであるPaul Millward氏も参画することが決まっている模様である。尚、従来からFXプライムブローカーは顧客に対し当初証拠金を課す一方で、執行ブローカーに対しては証拠金を課さない仕組みを採用していた。そこでスタンダードチャータード銀行と24 Exchangeは、証拠金の軽減に寄与するプライムブローカー向けの中央清算システムを提供するため、既にパートナー契約を締結している。
株式取得に際し、Geoff氏とDmitri氏はそれぞれ以下のようにコメントしている。
我々は24 Exchangeと協働して、イノベーションの活用とFX業界に革命を起こすべく、戦略的パートナーシップを締結したことを喜ばしく思っております。Dmitri氏とそのチームは、異なる資産クラスにおいて効果的にテクノロジーを活用する豊富な経験を有しており、我が社の戦略と結びつくことで、お客様やカウンターパーティーに競争力のあるプライシングや流動性を供給できるでしょう。私は24 Exchangeと協働し、新興市場に特化したFX商品を開発することを楽しみにしております。
Geoff Kot, Global Head FX trading for Standard Chartered - PR Newswireより引用
我々は新興市場における高い専門性と強固なネットワークを誇るスタンダードチャータード銀行から投資を受けることを大変喜ばしく思っております。同行は既に有力な戦略的パートナーであり、我が社にとっての中央清算機関及び取引参加者でもあります。我々は両社の提携関係を強化し、取締役会メンバーに加わるGenoff氏の豊富な経験や深い洞察力をもとにしたサポートに期待しております。
Dmitri Galinov, founder of 24 Exchange - PR Newswireより引用
尚、24 Exchangeは満期に関係なく全ての通貨ペアのNDFに関連した複数のリクイディティプロバイダー(流動性供給業者)と提携している状況だ。InRush Ticker PlantやOrder Execution Gatewayなどを開発し、自動売買向けの市場データと注文執行システムを提供するRedline Trading Solutionsも同社をサポートしている。そして今回、スタンダードチャータード銀行は24 Exchangeとの提携関係を強化し、市場参加者のコスト削減などに寄与するソリューションを提供することで、更なる顧客満足度の向上が期待できそうだ。
release date 2020.03.09
多くの金融サービスプロバイダーが、欧米を中心とした先進国のみならず、新興市場においてもFX関連サービスを強化している状況だ。新興市場に注力する世界的な金融機関に位置づけられるスタンダードチャータード銀行がCobaltのインフラを採用したことにより、同行と取引する新興市場の顧客は需要高まるFXポストトレードインフラへアクセスすることができるようになった。また、経済成長が著しいカンボジアを拠点とするB.I.C MarketsがMT5を導入し、同国を始めとするアジアのFX市場開拓を目論んでいる。更にはScope Marketsがケニアに新オフィスを開設するなど、ラストフロンティアとされるアフリカ市場においても、FX取引ニーズの高まりに伴い、海外FXブローカーが各種サービスの強化を図っている。アジアやアフリカ、中南米などの新興国における経済成長に連れてFXなどの資産運用ニーズが拡大するなか、ブローカー各社が顧客基盤の拡大に向け如何なるソリューションを提供するか注目したい。
作成日
:2020.03.09
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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