作成日
:2020.03.02
2021.08.31 15:28
中国の大手マイニング機器メーカーであるBitmain Technologies Ltd(本社:Building 25, North Olympic Science & Technology Park, Baosheng South Road, Haidian District, Beijing, China 100029
)【以下、Bitmainと称す】およびMicroBT Electronics Technology Co., Ltd【以下、MicroBTと称す】の両社は、ビットコイン(Bitcoin)の半減期を前に、新しいハイエンドモデルの製品を市場に投入した。2月27日、BitmainはAntMiner S19とAntMiner S19 Proと呼ばれるモデルを発表し、同製品が110TH/s(テラハッシュ/秒)且つ29.5Watt/TH(ワット/テラハッシュ)の高効率な情報処理を可能にすることをアピールしている。これらのモデルは現時点で最も収益性のあるマイニング機器だが、Bitmainの動きを受けてMicroBTは、それに対抗するWhatsMiner M30Sをリリースした。MicroBTの主要なディストリビューターであるPangolin Minerによると、WhatsMiner M30Sは、サムスンのマイクロチップを採用しており、86TH/s(テラハッシュ/秒)且つ38Watt/TH(ワット/テラハッシュ)のスペックを実現したという。
これまでマイニング機器市場はBitmainによって独占されていたものの、MicroBTが昨年だけでM20シリーズの製品を60万台売り上げたことでその競争が激化している状況だ。昨年末にM30シリーズを立ち上げたMicroBTは、既に事前注文に対応しており、早ければ来月までにサンプル機の配送を開始するという。一部の製品は3月から5月の間に出荷される見通しだが、事前注文の数次第ではその配送が6月にずれ込む可能性もある。一方Bitmainの新製品は、台湾のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)からマイクロチップの供給を受けており、サプライチェーンの問題で大規模生産の時期が不確定になっているため、事前注文の開始時期や配送日などは公表されていない。
現在、BitmainのAntMiner S9は仮想通貨市場で最も広く利用されている製品であり、ビットコインマイニングにおいて依然として、30%前後の粗利益を生み出す力を有しているという。しかしながら、今年5月にビットコインが半減期を迎えると、そのマイニング報酬が12.5BTCから6.25BTCまで減少するため、このような旧型のマイニング機器では収益性を確保することが難しくなるようだ。このタイミングで多くの事業者がマイニング機器のアップグレードを検討しているが、新型コロナウイルスの影響で中国内の製造および物流に滞りが生じ、思い通りに事が進まない状況が続いている。今年1月までは、ハッシュレートの急増によりビットコイン価格が乱高下するなど、業界全体が安定性を欠いていたが、これらの要因がどのように作用するのか、今後も仮想通貨市場の動向を見守って行きたい。
release date 2020.03.02
2018年にビットコインをはじめとする仮想通貨価格が低迷し、収益性が低下したことを背景に、当時多くのマイニング事業者が撤退を余儀なくされた。日本ではDMMがマイニング事業から撤退した例からも分かるように、特に電力コストが割高な先進国の企業が仮想通貨価格変動の悪影響を全面に受ける形となった。これに伴い、マイニング機器メーカーも事業規模の縮小を迫られており、業界トップの業績を誇るBitmainもイスラエルの研究開発センターを閉鎖せざるを得ない状況に陥ったという。しかしながら、2019年にビットコイン価格が盛り返したことをきっかけに、ランニングコストが安い中国や中東、東欧などでマイニング事業が再び活況になっているようだ。ビットコインが半減期を迎えれば、更なる効率化が求められると考えられるが、マイニング事業者はどのように対処するのか、今後も同業界での展開に注目して行きたい。
作成日
:2020.03.02
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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