作成日
:2020.02.14
2021.08.31 15:28
ファンド管理会社の3iQおよびブロックチェーンスタートアップ企業のMavennetが結成した合弁会社であるCanada Stablecorp Inc.【以下、Stablecorpと称す】は、カナダドルに連動したステーブルコインを発行することを発表した。
今月11日の発表によると、QCADと名付けられたこのステーブルコインは、イーサリアム(Ethereum)のトークン規格であるERC-20に基づいて開発されたという。Stablecorpは、カナダのFinTRAC(Financial Transactions and Reports Analysis Centre of Canada)が定めるフレームワークに準拠してQCADを発行しており、今年6月からは当局のAML(マネーロンダリング防止)規制にも対応するようだ。既にStablecorpはDVeXおよびNewton、Bitvo、Netcoins、Coinsmartの5つの仮想通貨取引所にQCADを上場することを決定し、現時点で15万カナダドル(米ドル換算で約13万ドル)相当の仮想通貨を発行している。
StablecorpのCEOであるJean Desgagne氏は、QCADに関して次のようにコメントした。
カナダの金融インフラにとって重要な要素となる技術を開発し、資本市場のデジタル化や強力な決済ソリューションの誕生に貢献できることを嬉しく思っています。QCADが仮想通貨の新しい運用基準を設けて透明性を確保することで、一般大衆への本格的なステーブルコインの普及が加速するでしょう。
Jean Desgagne, CEO of Canada Stablecorp Inc. - Mediumより引用
一方、3iQのCEOであるFred Pye氏は、カナダの株式および債券市場が将来的に完全にデジタル化する方向に進んでいると言及し、その上でQCADが次世代の決済ソリューションになる可能性があると述べた。3iQは仮想通貨を対象とした複数の投資ファンドを管理しており、昨年トロント証券取引所(Toronto Stock Exchange, TSX)で初となるビットコイン(Bitcoin)ファンドの上場に向けて目論見書を提出したという。
カナダでは同国最大の仮想通貨取引所であるCoinsquareが、カナダドルが裏付いたステーブルコインのeCADを昨年4月にローンチしている。Stablecorpは、BitGoやBalanceなどのカストディアンプラットフォームでのサポートに対応しただけでなく、BidaliやGilded Financeなどの決済サービスでもQCADの利用を可能にしているが、カナダ国内での普及は実現するのか、今後も同ステーブルコインの動向に注目していきたい。
release date 2020.02.14
詐欺やハッキング被害が頻発したこともあり、過去にカナダと米国が仮想通貨一掃作戦に踏み切るなど、仮想通貨に対して厳しい姿勢を示していたが、ここにきてその状況が変化しつつある。特にFacebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)や中国人民銀行(People's Bank of China)のデジタル人民元を始めとする世界的なステーブルコインの実現可能性が高まっていることに危機感を覚えているようだ。この流れを受けてカナダでは、昨年末ごろから中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)に関する議論が活発になっており、カナダ銀行が独自仮想通貨の発行を検討していることが報道されている。Stablecorpは、民間でのステーブルコインの利用を拡大しようと試みているが、このカナダ政府の動きが同社の事業にどのような影響を及ぼすのか、今後も国内市場の展開を見守っていきたい。
作成日
:2020.02.14
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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