作成日
:2019.10.18
2021.08.31 15:29
カナダの中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)が、世界的に拡大する仮想通貨の脅威に対抗するために、独自仮想通貨の発行を検討していることが先日報道された。
カナダ銀行は最終的に流通コストの問題などによって仮想通貨を含むデジタル通貨が法定通貨に代わる存在になるとの見解を示しており、現在、独自仮想通貨の積極的な活用を見据えた研究を進めているという。同様に中国人民銀行も独自仮想通貨の開発に向けた取り組みを継続し、今年8月には追跡性能の向上を試みるなど、発行の準備が整いつつあることが公表された。今回の報道でカナダが国家主導の独自仮想通貨の発行を目指していることが公になったが、カナダ銀行の判断は自発的なものではなく、市場環境の変化に順応するための防衛策だと言えるだろう。
2013年に仮想通貨に関する調査を開始したカナダ銀行だが、最新の内部資料では仮想通貨が中央銀行の金融政策や金融機関に融資するLOLR(Lender of Last Resort)としての役割を阻害する直接的な脅威になる可能性があると結論付けているようだ。独自仮想通貨の発行を議論する際、中央銀行は金融規制の維持を強調すると同時に、取引の監視方法を重要視する傾向にある。現に英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority, FCA)も、ほんの数週間前に仮想通貨取引所やATM、ウォレットなどのオープンソースアプリケーションに既存のマネーロンダリング規制(AML)を適応する方向で動き始めたという。
カナダ銀行は仮想通貨が普及すれば取引のトレーサビリティが強化されると言及し、結果的に警察や税務当局の取り締まりを助ける可能性があると前向きな姿勢を示している。この仮想通貨プロジェクトの構想は未だ正式に承認されていないが、カナダ銀行および政府当局はどのような決定を下すのか、今後も同国での展開を見守っていきたい。
release date 2019.10.18
以前からカナダでは同国最大の仮想通貨取引所であるCoinsquare【以下、コインスクエアと称す】がカナダドルが裏付いたステーブルコインを販売開始するなど、実用的な仮想通貨に対する関心が高まっているようだ。コインスクエアが発行するステーブルコインはeCADと呼ばれ、安価でセキュアな透明性の高い送金手段としての利用が想定されており、テザー(Tether)やコインベースのUSDコイン(USD Coin)などの様に広く国内市場に流通することが期待されている。一方、政府の取り組みとしては、今回の報道とは別にシンガポールの金融当局であるMASとカナダ銀行がクロスボーダー決済の検証に成功したことが今年5月に発表された。この試みは国際送金の際に仲介役となっているコルレス銀行を介さないスキームを構築し、より効率的な送金ソリューションを確立することを目的にしているという。カナダでは仮想通貨分野での国際的な協力も拡大しつつあるが、国民はこの政府の方針をどのように見ているのか、今後もカナダ銀行の動きに注目していきたい。
作成日
:2019.10.18
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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