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MASとカナダ銀行、クロスボーダー決済の実証実験を成功

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update 2021.08.31 15:26
MASとカナダ銀行、クロスボーダー決済の実証実験を成功

update 2021.08.31 15:26

より割安で高速且つ安全な決済システムの構築を模索

国内の中央銀行として機能するシンガポールの金融管理局(Monetary Authority of Singapore)【以下、MASと称す】とカナダ銀行は、両国が共同で推進させている分散台帳技術(Distributed Ledger Technology)【以下、DLTと称す】を活用したクロスボーダー決済プロジェクトの実証実験に成功したことを明かした。[1]

両金融当局は既存のクロスボーダー決済システムは処理が遅く割高であることに加え、流動性管理が非効率で手続きも複雑であり、海外送金の際の仲介業者となるコルレス銀行を利用したカウンターパーティーリスクも生じるなど様々な問題を抱えているとの認識を示していた。そこで、これまでカナダ銀行とMASがそれぞれ別々に実証実験を行っていたプロジェクト・ジャスパー(Project Jasper[2])とプロジェクト・ウービン(Project Ubin[3])と呼ばれるDLTを基にした中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currencies, CBDCs)の送金プロジェクトを共同で推進させ、より安価で高速、且つ安全なクロスボーダー決済システムの構築を目指す運びとなった。

今回の実証実験では、Hashed Time-Locked Contractと呼ばれる安全な送金を行うためのテクノロジーを活用し、両金融当局の決済ネットワークの共有化を図ると共に、コルレス銀行などのサードパーティーを介さず多通貨同時決済(Payment Versus Payment, PVP)を実現させることが可能になった模様だ。なお、実証実験にはアクセンチュア及びJPモルガンとパートナーシップ契約を締結し、カナダとシンガポール両国はそれぞれカルダノ(Cardano)とクォーラム(Quorum)のブロックチェーン技術を基にした決済ネットワークを開発したと言う。

共同実証実験の成功に際し、カナダ銀行の金融テクノロジー部門シニアスペシャルディレクターを務めるScott Hendry氏とMASのチーフフィンテックオフィサーであるSopnendu Mohanty氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。

複雑で割高なクロスボーダー決済分野における我々の実証実験では、コストを削減し決済のトレーサビリティを高める多くの成果を得ることができました。

Scott Hendry, senior special director, financial technology, Bank of Canada - MASより引用

プロジェクト・ジャスパーとプロジェクト・ウービンを共同で推進させることにより、既存の決済システムの様々な技術的課題を解決する革新をもたらし、よりシンプルで効率的なクロスボーダー決済スキームを構築することができるようになります。今後はクロスボーダー決済分野の様々な規制課題に対応したテクノロジーの研究開発を推し進めることで、我々が主導するブロックチェーン技術を活用した決済プロジェクトを更に進捗させることができると考えます。そして消費者や企業、金融業界それぞれに利益をもたらすべく、世界中の他の中央銀行が同プロジェクトに参画されることを歓迎しております。

Sopnendu Mohanty, chief fintech officer of MAS - MASより引用

実証実験の成功を受け、両金融当局は新たなクロスボーダー決済システムの構築と今後注力する研究分野をまとめた報告書を公表している。[4]なお足元では、中国が新送金プラットフォームを開発しており、グローバルベースで決済分野の技術的進展が見られている状況だ。消費者や企業など多くの関係者に多大なメリットをもたらす効率的な決済システムがいち早く構築されることで、更なる市場の活性化に繋がることを期待したい。

release date 2019.05.03

出典元:

ニュースコメント

世界規模で進化するクロスボーダー決済

世界各国でクロスボーダー決済プロジェクトへの注目が高まっており、各所でクロスボーダー決済という成長産業の中でイニシアチブを取るべく奮闘している模様だ。ロンドンを拠点とする銀行Euro Exim Bankは、クロスボーダー決済にリップル(Ripple)を採用していることを公表した初の銀行だ。また、大手クレジットカード会社VISAがEarthportを買収したことが報道されたが、Earthportはクロスボーダー決済サービスを提供する英企業であり、VISAがこの分野のサービス強化に乗り出した様子が伺える。さらに、長年にわたって国際送金サービスを提供するSWIFTが、米フィンテック企業MonetaGoとのパートナーシップ契約を結んでおり、ブロックチェーン関連のアプリケーションソフトの開発に力を入れているようだ。国境を超えた取り組みが拡大し、日々進化する業界の動向に目が離せない。


Date

作成日

2019.05.03

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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