作成日
:2019.01.02
2021.08.31 15:27
大手クレジットカード会社のVISAは、英国・ロンドンを拠点にクロスボーダー決済サービスを提供するEarthport(本社:140 Aldersgate Street, London EC1A 4HY, United Kingdom
)を1億9,800万ポンド(2億5,060万ドル)で買収することを発表した。ロイター通信が報じたところによると、VISAは子会社のVisa International Service Associationを通じ、Earthportの2018年12月26日終値の、実に4倍に当たる金額を提示し、買収に合意した模様である。VISAはこの買収を通じ、2018年度に10%の取引増が確認され成長分野として位置づけられる、クロスボーダー決済サービス事業の更なる強化を図る見通しだ。
Earthportは、現在世界60か国超の国々において、銀行などの金融機関向けに、国際間の送金や決済を合理化すべく、共通APIを介した決済関連サービスを提供している。顧客にはブロックチェーン技術を基にした決済サービス会社である米国のリップル社(Ripple)や、バンクオブアメリカ(Bank of America)、ハイパーウォレット(Hyperwallet)、トランスファーワイズ(Transferwise)、ペイオニア(Payoneer)、そして日本のゆうちょ銀行など世界中の大手金融機関や決済サービス会社を抱えている。更に2014年には、リップル社とパートナーシップ契約を締結し、ゲートウェイ・プロトコル(経路制御プロトコル)への相互アクセスを可能とすることで、より低コストな国際送金サービスを提供している。
また、Earthportではクロスボーダー決済ネットワークの再構築を図るべく、ブロックチェーン技術の積極的な活用を図っている最中である。2016年には、Earthportの顧客が、シンプルな設計且つ低コストの共通APIを介して、分散台帳技術(Distributed Ledger Technology, インターネットなどオープンなネットワークで、高い信頼性が求められる金融取引を可能とする技術)を活用した決済サービスを利用できるようにすべく、分散台帳ハブサービスを開始している。加えて、リップル社とのパートナーシップ契約を受け、リップル社のパートナーである、国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication, SWIFT)に加盟する100を超える銀行による、ブロックチェーン技術を活用した決済サービスの利用促進も期待されている。
この度の買収について、仮想通貨業界では、リップル社が開発した仮想通貨リップル(XRP)の足元価格は低迷しているものの、いずれ市場を席巻すべく大きな一歩を踏み出したと捉え、楽観視しているようだ。そのリップル社は、2018年12月17日には、イスラエル最大のフィンテック企業の1つであるGMTとパートナーシップ契約を締結している他、東南アジア(ASEAN)で5番目の規模を誇る銀行であるCIMB Groupとも提携し、CIMB Groupの顧客向けにクロスボーダー決済サービスを提供していく方針である。更に、Earthportとパートナー契約を締結していることから、この度の買収により、今後のVISAとの関係性が注目されている。これらのことを踏まえると、リップル社が、ブロックチェーン技術を活用した国際決済システムの構築及び利用促進を積極的に図っていることが伺えよう。
VISAとしても、Earthportを買収したことで、ブロックチェーン技術を活用した、より低コストで透明性の高いクロスボーダー決済サービスを提供できるようになると期待されており、一層顧客サービスを拡充させることができよう。
release date 2019.1.2
英国に拠点を置き、ロンドン証券取引所に上場するEarthportは、英国金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority)の認可を受ける国際的な金融事業者である。海外送金をはじめとした国際決済サービスを、銀行などが提供する送金手数料よりもはるかに低いコストで提供しており、世界各国の銀行や両替商、海外FXブローカー、事業会社の給料支払い等に利用されている。Earthportの株価は、2018年に30%近くの下落に見舞われていたが、この度のVISAによる買収のニュースが発表されるやいなや4倍近くまで上昇しており、このことからも市場の期待の高さが伺える。Earthportは一部決済にリップルの分散台帳技術を利用しているが、今後、VISAがリップルを利用した決済を行うことになれば、リップルの価格や、クロスボーダー決済市場に大きな変化が起こることが予測され、この度の買収によりひとつの変革期を迎えることになりそうだ。なお、昨年10月にはVISAは無認可ブローカーの取締りを強化するなど、EUの新たな規制の枠組みのもと、顧客保護を目的とした安全対策を講じている。
作成日
:2019.01.02
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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